「御書印」とは!? 町の書店で押してくれる印と一筆が心にしみる「お客さんとの交流にも」

宮前 晶子 宮前 晶子

神社や寺で拝受する「御朱印」はおなじみですが、お城を巡る「御城印」、酒蔵などを巡る「御酒印」、電車好きに向けた「鉄印」のほかに、「御書印」がじわじわと本好きやまち歩き好きの間で広まっています。

ほかの「印」シリーズと比べると、目的地として設定していなくても、自由に入れて、何も買わずに帰ってもいいのが本屋さん。その書店目当てに訪れることもあれば、偶然通りがかって…ということもあるでしょう。そんな出会いを記憶に刻めるのが「御書印」なのです。

人と書店を結ぶ御書印店めぐり

『御書印店めぐり』のプロジェクトがスタートした2020年3月時点では参加書店46店舗でしたが、現在は北海道から沖縄まで全国381店舗が参加。ネット通販や電子書籍の広がりなどで、リアル書店には逆風が吹いていおり、町の書店が減少する一方の昨今。そんな書店に来店するきっかけともなるため、書店業界からも注目度が上昇しています。

システムはシンプル。「御書印ください」と書店員にお願いすると、御書印帖に書店オリジナルを含む3つの印が押され、訪問した日付、書店員が選んだ本の一節やタイトルなどが記入されるというもの。押印される3つの印のうちのひとつは、書店オリジナル。その地域の名所・名物やロゴ、昔の店舗の写真などから発想を得たデザインを眺めるだけでも、ワクワクとした気持ちになります。

書店員が書く一節「一筆」は自由裁量で、常時複数のバリエーションを用意してお客さんに選んでもらう書店、毎月やシーズンで変えている書店、受けたスタッフごとに違う書店、来られたお客さんの顔をみて決める書店などさまざま。

「一筆マニア」もおり、その方の調査結果によると、「文学作品からの引用で一番多く書かれている作家は宮沢賢治」(同プロジェクト事務局)だそうです。

御書印帖は、参加書店にて無料配布されていますが、数量限定のため、なくなり次第有料に。市販の御朱印帳やノートなど好きな冊子に貯めることができます。御書印発行手数料(200円)が必要ですが、「1000円相当の本の売上利益に相当するので、発行手数料の設定はありがたいです」と参加書店。本を買わずとも自然な形でお金を支払い、リアル書店という“場”を金銭面でも応援できる仕組みになっているのです。

50店巡った巡了者や一筆マニアも登場

同プロジェクト事務局には「旅に御書印帖をもっていくのが習慣になった」「いきつけの本屋さん以外に行くきっかけになり、本屋さんごとにこんなに個性があるのかと驚いた」「老後の生きがいです」「推し芸人さんがやっているというので始めましたが、すっかりハマってしまいました」「御書印でお店を回ったら、必ず1冊本を買う」といった声が到着。

その結果、「50書店以上(=ちょうど御書印帖1冊分)の異なる御書印を集めた方=巡了者」(同プロジェクト事務局定義)はこれまでに81人(延べ人数)にも。意識せずに約2年で50店舗もの違う書店に訪れることがあるかどうか…と考えると良いきっかけづくりですよね。

「単に印を集めるだけという“スタンプラリー”には絶対にしたくないと思っています。本棚をみて本を手に取り、店員と言葉を交わすなど文化を発信する、また共有できるというリアルな書店の“場”としての魅力を来店者に味わってもらいたいですし、参加書店さんにとってもそのような魅力に磨きをかけるきっかけになれば」と同事務局の担当者は語ります。

本屋さんへの応援とともに、街歩きの楽しみや地域応援にも

御書印プロジェクトに参加する書店は「ふだんと違うお客さんが来るようになった」「お客様との交流が深まった」「お店を知っていただくきっかけになっている」と実感しています。また、「遠方からの方には町のおすすめ観光スポットも案内するようにしています」「印が名所を参考にしているため、名所のご案内や近隣の見所などを案内している」という書店も。

同事務局は、「本屋さんが行政からの予算も得て、観光案内所のような役割も担ってくだされば、さらに面白くなるのではないか」と行政からのバックアップに期待を寄せています。

昨年は、本好き・書店好きが集う『御書印ナイト』をオンラインで開催しましたが、今年は「御書印新聞」を刊行。7月に1号目を出し、11月と2023年3月に2号・3号を刊行予定。参加店で店頭配布し、「新聞」を通じて御書印に関心を持つすべての方と、御書印に関するさまざまな話題を共有していく予定とのことです。

「お店に入って印をもらってすぐ次の店へと移動するのでなく、まずはお店を一巡して、どんな本があるのだろうと見てください」。ぜひキーワード検索などでは出会えない本との偶然の出会いを…。

■御書印プロジェクト(公式)Twitter https://twitter.com/goshoinclub
■御書印プロジェクト(公式) https://note.com/goshoin

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