通算17回の災害現場に出動した救助犬、実は殺処分される元野犬だった 引退後は保護団体のアンバサダーに 

松田 義人 松田 義人

 

殺処分されるところを救い出され、人の命を救う災害救助犬として活躍した元野犬の夢之丞(ゆめのすけ)。そのストーリーと、愛くるしいルックスから複数の本が刊行されるほどの注目を集めた一方、この夢之丞との出会いは、行き場のない犬の保護・譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパンの本格的な活動のきっかけにもなりました。同団体がこれまでにつないできた命は7000頭以上。これも夢之丞との出会いがなかったら実現できなかったことと言って良いでしょう。

そんな夢之丞ですが、2021年に11歳になったことで災害救助犬を引退しました。以降は「日本のワンコの殺処分ゼロ」を目指す「ワンドリーム・プロジェクト」アンバサダーに就任し、新しい目標に向かって進み始めています。

殺処分直前で保護され、災害救助犬として活躍するように

2010年、広島の動物愛護センターで殺処分されるところを引き取られた元野犬の夢之丞。当時、推定では生後3ヶ月で愛護センターで他のワンコが処分されていくなか、保護された際にスタッフに抱き上げられると、おもらしをしてしまうほど恐怖に怯えていました。

以降も警戒心が強く、人が近づくだけで震えるという怖がりのワンコで、散歩に連れ出すのも1年がかり。災害救助犬としてはおろか、飼い犬として生きていくのも難しいと思われたワンコでした。

しかし、そんな状況でもスタッフが諦めずに夢之丞に愛情を持って接していくと、徐々に心を開き始め、気がつけば訓練も次々とこなすようになりました。

後にピースワンコ・ジャパンのレスキューチームの一員として本格的な訓練を重ね、これまでに国内外17回の災害現場に出動することになりました。

中でも初出動となった2014年の地元における広島土砂災害では夢之丞が行方不明者を1名を発見。この時期も日常での臆病ぶりは相変わらずだった一方、災害現場では、泥だらけになりながらも果敢に救助活動を行いました。

 

 

11歳を迎えたことで災害救助犬を引退

夢之丞の人命救助犬としての挑戦は、当初こそ「無謀」と言われましたが、結果的に「人間に救われた命が、人間の命をつなぐ災害救助犬」となり活躍したことで、多くの人に感動を与えました。

そんな夢之丞ですが、11歳を迎えたことで8年間に及んだ災害救助犬を引退することになりました。今年5月17日にはYouTubeを介し、夢之丞の引退式もオンラインイベントとして実施されました。多くの人々が見守るなか、和やかに引退することになりました。

このオンラインイベントでは、夢之丞に以下の感謝状が送られました。

「感謝状 夢之丞殿

あなたは2010年に殺処分目前から救われたのち、2014年の広島土砂災害からこれまで17回に渡り、災害現場に出動し、職務を全うされました。あなたの行動は多くの人とワンコたちに、夢と希望、勇気を与えてくれました。

今日、ピースワンコ・ジャパンがあるのもあなたの活躍のおかげです。よってここに、その功労を称え、記念品を贈り、感謝いたします。2022年5月17日 ピースワンコ・ジャパン一同」

いつもと違う様子のスタッフから感謝状の「紙」を渡されると、一瞬怯える夢之丞でしたが、拍手を迎えられた途端いつもの笑顔を取り戻し、嬉しそうにしていました。

夢之丞は「ワンドリームプロジェクト」のアンバサダーに就任

夢之丞の引退式の一部は、今もYouTubeで見ることができます。また、災害救助犬として引退した夢之丞は現在、「殺処分ゼロモデルを全国に広める」ための「ワンドリームプロジェクト」のアンバサダーに就任。これからも同団体の代表的ワンコとして元気に活動を行っていきます。

夢之丞との出会いから始まった同団体の活動により、以降7000頭以上の命が救われました。同団体では「ドリームボックス」という犬の殺処分機の稼働を止め、日本全国の犬の「殺処分ゼロ」の実現を目指しています。今後も夢之丞、そして同団体の活動に注目していってくださいね。

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