「今年が最後かも」奈良赤レンガフェスティバルの仕掛け人に聞いた旧奈良監獄の魅力、今後は星野リゾートへ

脈 脈子 脈 脈子

 ロマネスク様式の建物が印象的な旧奈良監獄(奈良県奈良市)で「奈良赤レンガフェスティバル2022」が始まりました。明治の五大監獄のうち唯一、完全な形で現存する日本最古の刑務所・旧奈良監獄。近年は少年刑務所として使用され、老朽化のため2017年3月に役目を終えました。

 フェスティバルは閉鎖の翌年からはじまり、5回目の今年は9月23日から10月30日までと38日間におよび、過去最大規模です。週末には敷地内での気球体験飛行や、人気カメラマンが同行する撮影ツアー、コスプレ撮影会など、初の試みとなるプログラムが多数。また、期間中は内部見学や謎解きツアーが随時開催され、ラスト2日間には刑務所作業製品の即売会「矯正展」が予定されています。

 11月から星野リゾートによるホテルへの改装工事が始まるため、現在の姿では最後となる奈良赤レンガフェスティバル。そもそも、いったい誰が、どんな想いで開催しているのでしょうか。関係者の間で「旧奈良監獄の番頭さん」と呼ばれている吉野泰司さんにお話を伺いました。

携われることが名誉

 ーー吉野さんが旧奈良監獄に関わるようになったきっかけはなんだったのでしょうか?

 閉鎖後の保存活用が決まって、ホテルになるまでの間にたくさんの人に見てもらえるイベントをやりたいということで、旧奈良監獄保存活用株式会社から以前勤めていた広告会社にご依頼がありました。存在自体は、もちろん認識はしてたんですけど、実際に見たのはその時が初めて。この建物の持つ魅力をすごく感じたし、ここが開発されて新しい施設に生まれ変わるというのもすごく面白い。携われることが名誉だし、楽しいなぁと感じて「大変かもしれないけど、ぜひやりましょう」と言ってスタートしました。

 ーー建築や産業遺産なんかは以前からお好きだったんですか?

 建築物や文化施設の保護とか、それを活用した事業をする部門にもともといて。美術館をつくったり、博物館をプロデュースしたりという仕事もずっと手がけていたので、身近な存在でした。

 ーー保存活用事業の話が動き出したのが2017年春なので丸5年ずっと関わられてるんですね。「以前勤めていた広告会社」ということは、5年の間に転職されたんでしょうか?

 広告会社時代に2年、旧奈良監獄に携わって、独立しました。難しい仕事ですし、思い入れもあるので、独立してからは広告会社から僕が引き継いで今に至ってます。手伝ってくれる人を集めて、チームでやってる感じで。

 ーー今年の春から開催されている元刑務官によるガイドツアーにも関わられてるんですか?

 ガイドツアーはJ-heritageの前畑(洋平)さんが持ってきた企画で、実現に向けた調整をしたり、あとはお客さんの立場で、初めてこの監獄に入った時に何を聞いてどういう風に見て歩くと腑に落ちて満足いただけるかを考えて見学コースを全部設定しました。

 ーーコースの設定も吉野さんがされてたんですね!以前取材させて頂きましたが、その頃からずっと即完売の人気ツアーになっていて、旧奈良監獄ファンの裾野が広がっていると感じます。

 裾野も広がってるし、リピーターも多いです。「元刑務官の話が聞けるというのを見つけてまた来ました」という人もいて、深く知りながら歩くというガイドツアーを企画してやれた、というのはすごくよかったなと思います。

今年で終わりかもしれない

 ーー今年のフェスティバルのタイトルには「またあえる日まで。」と書き添えられていて、胸がキュッとします。想いとしては、例年以上に強いのではないでしょうか?

 例年以上に強いです。これで終わりかもしれないと思いつつも、かたちを変えながら残っていってほしいなぁという思いもあります。こういう名前にしたのも、全国にある赤レンガ施設の中でも有数の施設として残っていってほしいという願いを込めたものなので。

 ーー「奈良赤レンガフェスティバル」の名付け親は吉野さんでしたか!

 名付け親です。旧奈良監獄は、取り壊さずに残してほしいという住民運動もあったくらい、近隣の方々にすごく愛されてるんですね。だから、ご近所の皆さんにも参加していただいて、これからよりよく活用していくためにどうするか?を考える機会にすることも含めた「年に1度のいいお祭り」みたいな感じを出したかったんです。

 ーー今年のフェスティバルが、その集大成になるかもしれませんね。最終的に、ここがどんな風になったらいいなとイメージされていますか?

 最初から変わってないかもしれない。赤レンガという素敵なロケーションに、たくさんの人が触れられる施設がいいよねっていうのが1つ。あと、奈良は宿泊量が京都・大阪と比べて少ないので、宿泊する楽しみの起爆剤になったらいいなと思っています。

 最初の出会いで、旧奈良監獄の魅力に惹き込まれてしまったという吉野さん。以来、その魅力を伝え、触れてもらえる機会を多くつくってきました。その根底には「ここが好きだから」という、極めてシンプルだけど強い動機があるように感じます。

 そんな吉野さんをはじめとする旧奈良監獄を愛するチームが手がける「奈良赤レンガフェスティバル2022」は全プログラムが事前予約制。各特設サイトから予約することができます。

◇ ◇

「奈良赤レンガフェスティバル2022」
場所:旧奈良監獄
期間(今後):2022/10/8(土)・9(日)・10(祝)・14(金)・15(土)・16(日)・21(金)・22(土)・23(日)・27(木)・28(金)・29(土)・30(日)
料金:プログラムにより異なる ※事前予約制

▼旧奈良監獄公式サイト
http://former-nara-prison.com/

▼奈良矯正展特設サイト
https://narakangoku-capic.com/

▼クラブツーリズム特設サイト
https://www.club-t.com/sp/special/japan/narakangoku/

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