自然豊かな観光地でゴミの不法投棄→登校前に子どもたちが片付け ヒグマをおびき寄せる悪マナーに「自分の物は絶対持ち帰るべき」「本当に悲しい」

福尾 こずえ 福尾 こずえ

「知床峠から羅臼町市街地に入る手前。車中泊と思われる人のゴミが散乱していました。僅か10分でこの量。中には子供用の物も含まれています。地元の小学生が登校前に拾いましたが、子供達はゴミが狐に齧られているのを見てヒグマが餌付くことも危惧していました。こんな登校風景は見たくないですね。」

不法投棄されたゴミを、地元の子どもたちが片付けたという悲しい現実に、非難の声が相次ぎました。投稿した「知床羅臼ビジターセンター」に話を聞きました。

「自分の物は絶対持ち帰るべきです。どうして地元の子どもたちに掃除させてるの!」
「本当にゴミポイ捨ては腹立たしいモノです。自分ちの庭に、ゴミ捨てられたら頭に来るし警察沙汰でしょう⁉️ゴミは持ち帰って仕分けして処理するのが、アタリマエ」
「最近、心ない日本人が多くなったように感じます。全く嘆かわしい」
「あんなに素晴らしいとこにゴミを捨てれる神経が理解できません。同じ人間とは思えない下劣さです。本当に悲しい」と悲しみと怒りの声が次々とあがりました。

さらにこの場所はただの観光地ではありません。ゴミが不法投棄された知床は、全域がヒグマの生息地です。投げ捨てられた空き缶に残ったジュースやほんの少し残った食べ物くずでも、その味を覚えたヒグマは、食べ物目当てに人に近づいたり、さらには人を襲うようにもなりかねません。そのようなヒグマは、最終的に駆除せざるを得なくなるという残念な結果を招いてしまいます。ゴミの不法投棄は、捨てた本人ではない無関係の人をも危険にさらす悪質な行為なのです。

不法投棄に注意を促すこちらの投稿を行った「知床羅臼ビジターセンター」の宮腰さんに話を聞きました。

「野生動物の恐ろしさを知っているから、子どもたちがゴミ回収を」

――このような不法投棄はよくありますか?

「残念ながらごみは頻繁に散乱しています。知床を車中泊をしながら長期で巡る方が多いので、ゴミの不法投棄が目立ちますね」

――ゴミが散乱していた場所はどのあたりでしょうか?

「知床峠から羅臼町の市街地に入る手前くらいの場所で、よく車中泊と思われる車が一晩中駐車している場所です。羅臼町は山と隣り合わせの細長い街なので、市街地でもヒグマがやってきます。とりわけゴミが散乱していたこの場所は、山と市街地との境目で、過去に何度もヒグマが目撃されています。ちなみに我が家から徒歩5分程度の距離です」

 ――子どもたちは自らゴミ拾いを?

「はい、そうです。小学生は私の息子たちで、子供たちは通学路で気になったごみを自主的に回収しています。彼らは小さなころから羅臼で暮らしているので、祖父がヒグマを駆除していたり…人間の食べ物の味を覚えた野生動物の末路を知っているのです」

――北海道はゴミを回収してくれるところが少ないとの意見もありました。有料でも回収を行っている場所はありますか?

「はい、あります。観光に訪れた方々のゴミを受け入れるため、羅臼町では『観光客専用ごみ袋』を用意しています。取扱店は羅臼町中心市街地に10カ所、郊外に10カ所あります。取扱店で、「燃やせるごみ」「燃やせないごみ」用袋の販売とゴミの回収を行っています。ぜひ、ゴミ箱がないからという理由でポイ捨てするのではなく、知床・羅臼町の公式サイトをご確認いただきたいと思います」

◇ ◇

 「観光地であるなしに関わらず、不法投棄は許しがたい行為です。これを機会に少しでも不法投棄が減ることを願うばかりです」と宮腰さん。

『観光客専用ごみ袋』は1袋たった100円です。自身の子どもにも地域の子どもにも、大人の悪いマナーを見せずに済むのです。

「自分1人だけだったら大丈夫だろう」「ゴミの捨て場がないからしょうがない」などの安易な考えが、多くに悪い影響を及ぼします。どのような理由があるにせよ、不法投棄やポイ捨ては必ずやめましょう。

実際、ゴミが多すぎて持ち帰られない場合、宅急便で自宅に送り、現地で処理しているという方もいます。北海道を車中泊やキャンプで旅行する際は、ゴミの回収場所やそのエリアでのマナーをしっかり調べてから訪れることが大切です。

手つかずの自然が色濃く残り、野生動物と共生している知床。素晴らしい景観やそこで生きる人々の安全を守るためにも、ゴミは必ず持ち帰りましょう。

■知床羅臼ビジターセンターTwitter  https://twitter.com/ShiretokoNF_R
■知床羅臼ビジターセンター公式HP http://shiretokorausu-vc.env.go.jp/

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