難病で寝たきりのピアニスト、星野さんの音楽活動 「何度も死を考え、音楽に心を救われて生きている」

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 交通事故をきっかけに発症した難病により、24時間寝たきり生活を送りながら、ピアニストとして活動する星野希望(のぞみ)さんがSNSで話題です。作曲家・シンガーソングライター・ピアニストとして、これまでに6枚のCDアルバムをデジタルリリースし、YouTubeやSNS、17LIVEでの生配信など、精力的に活動しています。セカンドアルバム『夏の鳥』は、iTunesインストゥルメンタルトップアルバムランキング1位にチャートインしました。

 星野さんが作詞作曲した『ひかり』は、「たくさんの方々の心に『ひかり』が灯りますようにと思いを込めて作曲しました。今世界が大変な時ですが、この曲のようにもう一度ひかり輝く明るい世界が戻ることを祈っています」という星野さんの思いが込められています。コメント欄では、「音楽を聴いて初めて泣いた」「天使の歌声に心が洗われます」「優しくて魂が震える」「勇気をもらいました」「心に染みて、涙が止まりません」「私も夢を叶えるように頑張りたいと思いました」と、大きな反響を呼びました。

 星野さんが抱える“脳脊髄液減少症”という病気は、外傷性で起こることも多い疾患です。星野さんの症状としては、横になって寝ているときも常に、頭痛、めまい、聴覚過敏、耳鳴り、光過敏、吐き気、全身の凝りや痛みなど、星野さんいわく「地獄な毎日」に耐えている状態です。食事も困難で、毎日のように何時間も点滴を打つ生活が続いています。

 幼いころからピアノを弾くことが大好きだった星野さんは、病気を発症する前までは看護師・保健師として働いていました。発病当初は、「入院・手術治療を終えて、治ってからピアノを弾こう」と考えていました。しかし入院、手術を繰り返し、長引く闘病生活の中で、あるとき、「〇〇できるようになったら〇〇しよう」という考えが自分を苦しめていることに気づき、今できる最大限の夢を叶えていくという考え方に変えたといいます。そのうちの一つがピアノを弾くことでした。

 寝たきり生活の中で、最初はただ音楽を聴いているだけでしたが、次第に自分でも音楽を作りたいと思うようになり、寝たままでも作曲できるDTMアプリを見つけたのがきっかけで作曲を始めた星野さん。作曲を進めるうちに、自分の作曲した曲を自分の手で弾きたいと思うようになり、家族の協力のもと、今の寝たきり状態でもピアノが弾けるように試行錯誤してきました。

 体調と寝たきり演奏の姿勢維持のために、1回の演奏配信はたったの10分間の即興演奏。ピアノを斜めに置くことができる台は、お父さんが試行錯誤しながら作ってくれたもの。手術により腰にボルトが埋め込まれているため、腰にクッションを敷き、腱鞘炎のためにサポーターで手首を固定して、ベッド上でペタルを踏みます。

「ライブ配信やSNSでの活動を通して、一昔前までは考えられなかった夢をたくさん叶えることができました。困難が多すぎて、何度も苦し紛れに死を考えましたが、音楽に心を救われて今も生きています。音楽にはそれぐらい大きな力があると私は信じています。そんな音楽の力に魅了されて、音楽家の道を志しました。健康な私が死んだ日は、ピアニストとしての私が新しく生まれた日です。私は起き上がって歩くことができないので、指を使って鍵盤の上を歩きます。そして私は寝たきりで外に出ることができないので、曲に乗って外の世界に出ることができるのです。音楽は目には見えませんが、こんなに明るく楽しい世界があるのですから、私はまた前を向いて歩いていけるのです」と星野さんは語ります。

 以下、星野さんのnote(エッセイブログ)より抜粋します。

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死ぬ気になればなんでもできるという意味、死ぬ直前まで追い込まれてやっと理解したから、『死ぬ気』が私には必要だった。私の場合、事故で難病を発症したことをきっかけに、「これまで通り普通に生きること」ができなくなってしまったのです。生き地獄の状況まで追い込まれ、今まで通り生きることができなくなった場合、人は2つの考え方をします。

1つは命を断つこと
2つは現状を「何とかして生きられる状況にすること」

初めは、命を断つ事を考えました。
「苦しさから逃れるには死ぬしかない」そういった考え方です。

本当は死んだほうが楽になれるのはわかっていたけれど、いざ死ぬ準備をした時、未練がたくさんあって私には死ぬことができませんでした。もう一歩というところまで(未遂)を何回か繰り返して、結局諦めて今に至ります。

さて、命を断つことができなかった場合、もう一つの選択肢として、「何とかして今を生きられる状態にすること」、これが選択肢として残っていました。

ここから私はたくさんのことを考えます。
「今を生きられる状態にすると言うことは、ただものでない力じゃなきゃ生きることができないな。」
……そのただものでない力、原動力を出してくれた言葉が、「死ぬ気になれば何でもできる」でした。

私にとって『死ぬ気になればなんでもできる』という言葉は、『あの時死んでいたと思えばなんでもできる』って意味として自分の中で大切に温めています。

今を踏ん張りたい時、今を投げ出したい時、勇敢に立ち向かおうとする心も、正反対に自暴自棄な心も。

全てを「死ぬ気になれば何でもできる」に委ねることで、難病寝たきり、生き地獄の症状の中でも、生きることができるようになりました。

「どうせ死ぬんだからやりたかったことやっておこう。」……これらの考えによって、今できる範囲内の夢のほとんどが叶うこととなります。
夢がひとつひとつ叶っていって、そうなっていくと、不思議と生きる希望が湧いてくるのです。
やりたいことができていくことが生きる希望を形創っていくのです。

何も先の事は考えず、今だけを考えて死ぬ前にやりたくてもできなかった未練を一つ一つクリアしていき、気がつけばたくさんの音楽作品や文章作品ができていきました。

……これが私の生きる道です。

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 星野さんに、今の夢を聞きました。

「私の令和4年夏、現在の夢はこの5つです。
私は、書の個展を開いてもらいたい。
私は、エッセイを書籍化してもらいたい。
私は、作った曲をCD化してもらいたい。
私は、作った曲の楽譜を出版してもらいたい。
私は、『ひかり』の曲を夏川りみさんに歌ってもらいたい。世界中の人にも歌ってもらいたい。」

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 書道家としても活動する星野さんのYouTubeチャンネル『星野希望』、Twitter(@hoshinonozomimi)、TikTok(@hoshinonozomimi)では、星野さんの演奏動画をたくさん聴くことができます。note『寝たきりのピアニスト星野希望(のぞみ)』では、星野さんが日々の思いをエッセイとして投稿しています。星野さんが語る言葉、演奏、歌声、曲のひとつひとつに、生きる希望と勇気が込められています。

「難病寝たきりになって気づいたこと。死んでもいいと思えるほどの苦しみや哀しみはいくらでも転がっているのに、生きる意味は誰も教えてくれない。それを捜し求める旅に出かけること。……それが人生だと思う。生きるって難しいけれど、そこから見つけ出した光はどんな時も美しく輝いている。」
——星野さんのツイート(@hoshinonozomimi)より―—

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