恐怖…パンクに気づかず運転していた高齢ドライバー 警察が訴える「運転免許返納には家族の協力が必要」

宮前 晶子 宮前 晶子

「【神埼警察署】 タイヤがパンクした状態で運転していた高齢の方を保護しました。「気づかなかった」と説明されたため、今後の運転について御家族を交えて話し合いをしました。 扱い次第で車は凶器となり得ます。 体の異変や更新時期等、機会があれば運転免許返納について考えてみましょう」

高齢ドライバーの免許返納について考えるきっかけとしてツイッターに投稿したのは佐賀県警察本部の公式アカウント(@goroukun_spp)。グニャリとホイールからほぼ取れかけ状態のタイヤの写真をあわせて紹介。停車中とはいえ、この状態で走ってきたことを想像すると…恐ろしくなってしまいます。

そんな注意喚起のツイートに対してついた約4.2万件のいいねが、高齢ドライバーをめぐる問題に関心を寄せる人の多さを物語っています。気をつけたい点や対策を、佐賀県警の広報部に聞きました。

高齢ドライバーによる交通事故が、ニュースで取りあげられるたび、「もしや、実家の父親では?」「今日、車で出かけた母は大丈夫だろうか?」と、高齢の親に運転免許返納を促しても、「70歳過ぎても毎日運転しているから大丈夫」「今まで無事故だから自分には関係ない」「人通りが少ない道路を走るから事故にはならない」と突っぱねられた人や、「バカにするな!」と喧嘩になった人もいるのではないでしょうか?

しかし、何かあったときでは遅いのです。タイヤがパンクした状態でも走行できるとは言いますが、こういった小さな違和感を感じることができるかどうかが大事なのです。

高齢運転者技能教習実施や相談受付もあります

今回の投稿に対して、県警広報部は「この車もタイヤがパンクしたままの車が走っているとの通報を受け、現場へ警察官が臨場。駆けつけた家族にも今後の運転について話し合うように伝えました」と当時の状況を説明してくれました。

一般的には、高齢ドライバーについて心配されている点は、
・視力が低下することにより、周囲の状況に関する情報を得にくくなり、その判断に適切さを欠くようになる
・反射神経が鈍くなることによって、とっさの対応が遅れる
・身体機能の衰えから運転操作が不的確になったり、長時間にわたる運転継続が困難になったりする
と考えられています。

そのため、同県警は「周囲の交通状況を意識的に十分に確認すること、不測の事態に備えるため、また、決して慌てることのないように常に安全速度を遵守して、前車との十分な車間距離を確保すること、体調に異変を感じたり、不安があれば運転を差し控えることについて、注意をお願いしたい」と訴えます。

交通指導取締りを実施することに加え、Twitterでも交通安全に関する投稿を発信し、注意喚起を促している同県警。運転に不安を持つ高齢ドライバーの希望者に対して、運転免許試験場で技能試験官が同乗にしてチェックしてくれる高齢運転者技能教習実施や、各警察署での高齢運転者の安全運転の相談受付も行っています。家族として高齢ドライバーに免許返納を提案する前に、参加を促してみるのも手かもしれません。

免許返納後の移動手段を家族も考えて

社会全体の課題である運転免許証の自主返納 (正しくは申請による運転免許の取り消し申請)ですが、同県警によるときっかけは「高齢者ご自身が身体機能の低下を自覚して返納に至るケースや高齢者の家族からの勧めによって返納するケース」などさまざま。ここ数年、年間3000~4000件の間で推移しています(同県警調べ)。

「当県警では、早い段階(平成29年)で代理人による運転免許の取り消し申請(代理人による自主返納)制度を導入しました。これを受けて県内のいくつかの自治体(基山町、玄海町、江北町、太良町)では、高齢運転者の負担を軽減するため、自治体の職員がその代理人となって手続きをしています。他の自治体に対しても導入を働きかけていきたい」と意欲を示します。

ただ、免許返納後は、電車やバス、タクシーによる移動が求められるため、移動のための代替手段を確保することが必要となってきます。「運転免許の返納に際して、自治体や関係機関が実施しているバスやタクシーなどの割引等の制度を周知するほか、高齢者の家族の支援が重要であることについても呼びかけていきたい」と同県警。

住んでいる場所によっては、車が必須な方も当然いると思います。ただ、本人任せだけでは「調べるのが面倒くさい」「ややこしい」と制度を把握し活用することが難しいことも。そのために家族の手助けが欠かせないのです。

同県警は、「高齢ドライバーにかかわらず、ハンドルを握る全てのドライバーが悲惨な交通事故の加害者にならないということはもとより、被害者にもならないように気をつけてもらいたい、このツイートを考える機会にしてもらいたいです。交通事故は決して他人事ではなく、いつ、どこで起きるものかは分からないことを強く認識し、運転をしていただきたい」と、運転するすべての人へのメッセージを寄せてくれました。

◇  ◇

紹介のツイートのリプライには、「うちの母親も他人に指摘されてパンクに気づいた」「自分もパンクしたまま走行している車を見た事が数回有ります」「家族も同罪」の声や、高齢ドライバーによる事故で家族を亡くした方や高齢者の危険運転に遭遇した方の声も。また、「何か起こる前に対応、ありがとうございます」「警察公式からこのような事例を教えてくれ、注意喚起してくれるのは本当に助かります!」のコメントも。

車を運転する人全体に向けた「ドライバーは常に忘れちゃいけない 車は『走る凶器』」もありました。

交通事故を招いたドライバーは、まさか自分が交通事故を起こすなんて思わずにハンドルを握るもの。秋のシルバーウィーク、実家で両親と顔を合わせる機会や電話で話す折には、自動車運転や運転免許の自主返納について、紹介のツイートやリプライを例に出しながら、話し合ってみるのも良いかもしれません。

■佐賀県警察本部 @goroukun_spp

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