イマドキなワードを取り入れた楽曲の末路がSNS上で話題になっている。
きっかけになったのは「歌詞に『LINEした』とか今時すぎる言葉入ってると『将来、今で言うポケベルになるけど大丈夫?』って余計な心配してしまう」という指猫さん(@cat_fing)の投稿。
「ポケベル」を含む歌詞と言えば、国武万里が歌った「ポケベルが鳴らなくて」(1993年)が懐かしい。同名ドラマの主題歌で秋元康が歌詞を手がけた「ナウい」曲だったが、ポケベルがすっかり廃れてしまった今となっては完全に懐メロだ。そして「LINE」が出てくる歌詞も10年ほど前から存在する。つい最近もロックバンド・KNOCK OUT MONKEYが「Summer Days」という曲で
「容赦のない暑さに トロけてきそうな日々 ならすぐ LINE して 予定を立て直して」
と歌っていたりするが、これもいずれは懐メロ感がただよってしまうのだろうか…。
指猫さんの投稿に対しSNSユーザー達からは
「まぁ、平安の『嬬恋の短歌を詠んだ』みたいな感じも、意味さえ解ってたら結構グッと来るように、ちゃんと良い歌詞なら時代超えて聴かれると思うんですよ。」
「そう考えると指先で送る君へのメッセージってめちゃくちゃ優秀ですねぇ〜」
「『♫ダイヤル 回して 手を止めた〜』全く意味が分からない人、かなり多くなってる様に思います ドラマが35年以上前なら仕方ないけど…当時固定電話、まだ結構ダイヤルも多かった」
「いっそLINEとポケベルを両方歌詞にぶち込んでいつの時代かわからなくするのも一興」
などさまざまな意見、感想が寄せられている。
指猫さんにお話をうかがってみた。
ーーこの類の曲と言うと指猫さんはどんな曲を思い浮かべますか?
指猫:まずは瑛人さんの「香水」が思い浮かびます。他にもリプ欄などでHKT48さんの「既読スルー」などが挙げられていました。あくまで「LINE」というのは身近なツールの代表として挙げたもので、Instagramなどが歌詞に入っている曲も同じカテゴリかと思います。
ーー指猫さんは歌詞に「ポケベルが」などと入っている曲を聴かれた時、どんな想いを持たれますか?
指猫:その単語が聞こえてくると「懐メロ」感が強まる気がしますね。自分に馴染みのある単語であればノスタルジーになり、馴染みのないものであれば良くも悪くも距離を感じるのではないかと思います。
またこれはLINEでもポケベルでも同じなのですが、こういう卑近なアイテムが登場すると、一気に現実感が増す気はします。
ーーこれまでのSNSの反響へのご感想をお聞かせください。
指猫:「わかる」という共感の声や、「むしろそれがいいんじゃないか」という意見があり興味深く眺めています。もちろんどちらが正しいという話ではありません。「その時々で最も新しいものは、振り返ってみると最も古さを感じるな」とぼんやり思ったことをツイートしました。
リプライで、あえてそういった時代性の強い言葉を用いる秋元康さん、阿久悠さんのようなタイプと、極力そういったものを排して普遍的に響くよう気を付けている山下達郎さんのようなタイプが紹介されていて勉強になりました。
「これももう若い人には意味がわからないよね」と宇多田ヒカルさんの「First Love」などの具体的な歌詞を挙げる人もいれば、YUIさんの「CHE.R.RY」などのように時代を経ても通じる表現に感心する人もいて、いずれにしても盛り上がる話題になってよかったなと思います。また、「時代性と普遍性」にもグラデーションがあると思うので、自分も今後曲を聴く際に新しい軸で歌詞を見ることができそうです。
◇ ◇
「歌は世につれ… 」と言うが、時代ごとの身近なツールが歌詞に出てくるのはごく自然な発想。作詞家の思いやテクニック次第で後世でのイメージは変わってくると思うが、読者のみなさんはどのように感じるだろうか。
指猫さん関連情報
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