京都市上京区の北野商店街が、アーケードを支える鉄柱の根元部の腐食に長年悩まされている。散歩中の犬の尿が原因で、腐食が早まったとみている。全国では同様の理由で鉄柱が倒壊した事例が相次いでおり、「安全のためにも飼い主はマナーを守ってほしい」と訴える。
中立売通と一条通沿いの約400メートルに広がる北野商店街。歩道部分にはアーケードがあり、ベージュ色の鉄柱が約10メートル間隔で支えるが、柱の根元では茶色のさびが目立つ。同商店街振興組合元理事の山田重一さん(73)は「さびがあるのは柱の下の方だけ。いつからなのか分からないほど、昔から続いている」と話す。
商店街がさびの原因とみているのが、犬の尿だ。犬の尿には尿素や塩分など金属を腐食させる成分が含まれている。山田さんによると、アーケードが日よけや雨よけになっていることで、商店街で散歩をさせる飼い主が多いという。
犬の尿と腐食が関連するトラブルは近年相次いでいる。昨年2月、三重県の交差点で鉄製の歩行者用信号が倒れる事故があり、三重県警は犬の尿が腐食を早めた可能性が高いという調査結果をまとめた。埼玉県でも2017年、道路標識の支柱が突然折れ、通行人が軽いけがを負う事故があったが、犬の尿が事故の一因とみられている。
商店街では、さびがひどい柱について、根元部に巻いた鉄板の交換やペンキの塗り替えで補修している。いずれも多額の費用がかかることから、今年1月からは散歩中の糞尿をやめさせるよう伝えるポスターを150枚以上製作、鉄柱の膝丈ほどの高さに貼る対策に乗り出している。排せつをさせる飼い主は減ったが、完全には改善されていないのが現状だという。
京都市は「動物共生マナー条例」で、飼い主の努力義務として、犬を公園や道路で散歩させる際には、あらかじめ自宅で排せつさせるよう求めている。
山田さんは「可能であれば排せつをさせてから商店街に来てほしい」とした上で、「家でトイレをするのが難しい犬でも、鉄柱付近でおしっこをさせないなどできることがあると思う。何気ない行為で大きな危険が生じていることを意識してほしい」と話す。