「キズは唾を塗っておけば治る」なんてホント?…専門家が解説する令和版「夏の応急処置の正しい知識」

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ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社コンシューマーカンパニーは、夏によく起きがちなケガのシーンごとに、よくある誤った対応と正しい対応をまとめた「夏の応急処置の正しい知識」の令和版を発表しました。

全国の20~70 代の男女180人を対象に「夏の応急処置の正しい知識」を聞いたところ、夏によくあるケガの応急処置を正しくできた人はわずか14%に留まったそうです。夏によく起きがちなケガのシーンごとの「応急処置の正しい知識」について埼玉医科大学病院副院長で同大学医学部形成外科の市岡滋教授は、以下のように解説しています。

【水遊びやアスレチックで転んだ/BBQの準備中に包丁で指を切った】

<よくある処置>
赤チンで消毒してガーゼを貼り、乾かしてかさぶたを作る。唾を塗っておけば治るという人も。
<効果的な処置>
キズができたらまず水道水の流水でしっかり丁寧に洗い、キズ口から砂など異物を取り除き清潔にしましょう。その後、かさぶたになる前に、医療の現場でも使われるモイストヒーリングの絆創膏を貼ることで、体液の力を活用し痛みを和らげ早くきれいに治すことができます。
消毒は、実は細胞の治ろうとする働きを弱めてしまうため、モイストヒーリングの絆創膏を使う場合は不要。また、唾液には細菌がたくさんおり、キズに唾液を付けることは清潔でないので、おすすめしません。水道水でしっかり洗いましょう。
<解説>
キズを洗浄する際には、石鹸を付けてもいいですがキズの中に残ると悪さをしてしまうのでしっかり洗い流すことを忘れずに。ガーゼは貼り換えの際に治りかけた皮膚を剥がす力が強いため、そういう点でもモイストヒーリングの絆創膏はおすすめです。
ただ、モイストヒーリングの絆創膏は、動物に噛まれたキズや感染や化膿が見られるキズには使えないなどルールがありますので、使用方法をしっかり守って最大の効果を得ましょう。また、どんなキズケアをした場合でも、キズの様子をよく観察し、熱を持っていたり痛みが続いたりするなど感染の傾向がみられる場合はすぐに病院へ行きましょう。

【虫に刺された】

<よくある処置>
爪で刺された箇所にバッテンをつける。
<効果的な処置>
バッテンを付けることで、痛みでかゆみがマシに感じるのかもしれませんが、むやみに触ると化膿の恐れがあるのでNG。水道水でしっかりと洗い流した上で、刺された部分を冷やすと痒みが軽くなります。その後痒み止めの軟膏を塗布しましょう。

【プールで転んだ/浜辺に落ちたガラスなどで足を切った】

<よくある処置>
キズができたが、遊び続けたいのでそのまま海に入る。海水やプールの塩素がしみて痛む。
<効果的な処置>
夏のキズは水に入るシーンが多く、「とにかくしみて痛い」もの。キズの痛みは、乾燥や末端の神経が外部の刺激にさらされるなどして起こるため、できるだけ外部からの刺激を防ぐことが重要です。完全防水仕様のモイストヒーリングの絆創膏はしっかりキズに密着し、刺激を防ぎ、痛みを和らげることができます。
また、海辺の空きビンなどには細菌がいる場合があるので、キズができたらすぐに水道水でキズをしっかり洗い流しましょう。浜辺の砂が入っていると治りも遅くなるため、しっかりと洗浄します。キズ口があるままプールや海に入ると、海中の細菌がキズ口から感染し化膿する可能性も。キズがある場合はできれば海で泳ぐことは避けた方がよいですが、入らなければならない場合は完全防水仕様の絆創膏を貼りましょう。
<解説>
プールや温泉に入る際には、自分がキズ口から感染するリスクもありますが、実はキズ口から細菌を他の人に広げてしまうリスクもあります。料理人の方も、キズ口から細菌を広げ食中毒を起こすことがあると言われています。キズがある場合は、完全防水仕様の絆創膏を使うことが自分にとっても他人にとってもよいですね。

【BBQの鉄板やキャンプファイヤーでやけど】

<よくある処置>
1分ほど冷やすと冷たくなってきたので、そこで冷やすのをやめる。
<効果的な処置>
すぐに流水で幹部を冷やしましょう。冷やすことによりやけどが深くなるのを防ぎ、痛みを和らげることができます。部位や範囲にもよりますが、水道水で5分から30分ほどを目安に冷やしましょう。案外冷やす時間が足りない人が多いので注意です。流水が難しい場合は氷を入れた袋などでもOKです。

【クラゲに刺された】

<よくある処置>
ピリッと痛みを感じたが、遊び続けたいので海から上がらない。刺されたところにお酢をかける。
<効果的な処置>
刺されて数分後にアナフィラキシーになる可能性もあるので必ず陸に上がりましょう。また、お酢はアンドンクラゲなどのハブクラゲ類には刺胞が不活性化されて効果はありますが、カツオノエボシやアカクラゲの応急処置に使うと逆に刺胞を活性化する可能性もあるといわれているため、刺されたクラゲの種類がわからない場合はお酢の使用はNG。優しく海水で洗い流し、ピンセットなど、針が抜ける道具を持っていれば、そっと刺された部分から針を抜きます。道具がなければ手袋をして針を抜き、患部を冷やしながら病院へ。

【熱中症】

<よくある処置>
少し頭が痛い・気分が悪い気がするが、すぐに休まない。
<効果的な処置>
何よりも予防が大切。子供に気を配るあまり大人が自分の熱中症に気づかない場合があるため注意。ちょっとしんどい、ちょっと頭が痛いといった症状を放置しないようにしましょう。
水分補給はこまめに、喉が渇いていなくてもしましょう。太い血管のある部位だけでなく、露出させた皮膚に冷水をかけ、うちわであおぐなど、全身を冷やすようにします。熱中症予防として飲む場合、水やお茶でなく塩分や糖分のバランスの良い経口補水液が効果的です。

   ◇  ◇

コロナの制限が収束に向かっている今夏だからこそ…

また、市岡教授が夏に患者さんからよく相談される質問と、その回答は以下の通りです。

Q:キズがあるときにお風呂でお湯や水につけてもいいの?感染するのでは?

A:たまにご年配の方で、「水道水でキズが感染するのでは?」と仰る人がいますが、水道水は飲めるほどきれいなため、キズを洗って全く問題ありません。また、お風呂のシャワーから出たばかりの水も、水道水と同じできれいですのでこちらも問題ありません。ただ、浴槽にはった水は家族が何人も入って細菌がいる場合もあるので、上がる前にシャワーでキズを流すことをおすすめします。

Q:塩を塗ると絆創膏を貼るよりキズが早く治るという情報をネットで見ましたが本当でしょうか?

A:これは根拠がないためやめてください。塩を塗ると非常に痛みも強いと思います。

Q:指先の血が止まらないので、止血のために指の付け根を圧迫することは正しいでしょうか?

A:非常に危険ですので絶対にやめてください。以前対応した患者さんで、止血しようと足の指の付け根を輪ゴムで圧迫した結果、壊死してしまった方がいました。血を止めるためにはガーゼ等をキズ口にあてて止血するようにしましょう。

   ◇  ◇

同調査を監修した市岡教授は、「コロナの制限が収束に向かっている今夏、外出やレジャー・スポーツが盛んになり、思いがけないケガが増えることは確実です」と説明。「病院で行う高度な医療技術だけでなく、日常で遭遇するキズに関する知見や製品は日進月歩の進化を遂げています。今回キズケアを中心に夏応急処置について知識をアップデートして頂ければ幸いです」と述べています。

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