「猫に噛まれて(引っ掻かれて)敗血症性ショックになった話。数年前から飼い猫(家猫)に日常的に引っ掻かれてたまに出血していたが、傷が深い時だけ水で流して特に気にしていなかった」とつぶやき、いちのせ(@chichinose)さんがツイッターに投稿した入院手記が話題になりました。9万超のいいねがついた、6日間に渡るICU治療から退院までを綴った一連のツイートについて、投稿者のいちのせさんにお話を聞きました。
救急搬送→診断は「猫の保有する菌に感染」
2022年5月11日の早朝、39.9度の高熱を出したいちのせさん。すぐにコロナ感染を疑い、勤務先から支給されていた2種類の抗原検査キットを使用。いずれも検査の結果は「陰性」で、喉の痛み、咳、吐き気などの症状はありませんでした。その後さらに体調が悪化したため、東京都の「発熱相談センター」に電話しましたが混雑で繋がらず、今度は「救急相談センター」に連絡。PCR検査が可能な病院を4軒紹介され、なんとか3軒目に連絡したクリニックで翌朝の検査予約が取れたそうです。
5月12日、午前10時半。クリニックでのPCR検査の結果を待つ間、猛烈な吐き気に襲われ嘔吐したいちのせさん。診断の結果は「感染症」でした。抗生物質を処方され帰宅しましたが、その後も症状は改善されず、激しい腰痛と共に体温は40度超に。半日が経過した16時頃、いちのせさんの容態を見たご家族が救急に連絡。搬送先の大学病院に着いた時には、「計器が壊れたかも」と看護師さんが疑うほど血圧が低下していたそうです。
検査と問診の結果、「猫の保有する菌に感染した」と診断されたいちのせさんは、すぐにICU(集中治療室)での治療と入院が決定。挿管や薬や治療の副作用による錯乱に備えた「両手の拘束」の同意後、麻酔で意識を喪失します…。
「パスツレラ-ムルトシダ感染」による「敗血症性ショック」
いちのせさんの病名は、「パスツレラ-ムルトシダ感染」による「敗血症性ショック」。「死亡率30~40%」との診断でした。
いちのせさんがツイートした壮絶な入院手記に綴られていたのは、ICU独特の臭い、挿管や排泄の苦痛、薬の副作用による体感温度の激変、幻聴、幻覚、不眠、悪夢、息苦しさなど……。
その赤裸々なツイートの数々に、「日々書いてる看護記録を読むようでした。挿管や吸引、バルーン留置、若い人のおむつ内での排泄、せん妄(入院時に起こる幻覚など認知症に似た症状)などなど、日々見てますがやはり苦痛は本人にしかわかりませんね…」「現在看護学校に通う学生です。看護倫理について深く考えるきっかけとなりました」と、医療関係者からも多くのリプライが寄せられました。
今回の「敗血性ショック」の要因となった「パスツレラ菌」は、犬や猫、ウサギ、牛、豚、鳥などの上気道や消化管に存在し、猫はほぼ100%、犬も15~75%が保菌していると言われています。ペットが原因となる「人獣共通感染症(ズーノーシス)」の中でも最も注意が必要な原因菌であり、動物に咬まれたり引っ掻かれた際の外傷性の経皮感染、ペットへのキスや食べ物の口移しなどの経口感染で感染するそうです。
健康状態や免疫機能に問題がなければ発症しない日和見(ひよりみ)感染症ですが、抵抗力の弱い高齢者や乳幼児、免疫機能が低下している場合は重症化し、髄膜炎や腹膜炎、今回のような敗血症などに進行。死亡例も報告されているそうです。
「カーテンに映る化け物」「背中から漂う異様な臭い」
「挿管を外すときは地獄のような苦しみ」「目をつむってもまぶたの裏が真っ赤で化け物が現れる。目を開けていても、仕切りのビニールカーテンに化け物が映る。24時間邦ロックみたいな音楽が聞こえてくる」「ICU内は独特の臭いがあり、自分の背中からもそれが漂っていた」と、ICU治療から退院までの壮絶なツイートと、「猫ちゃん」との今後の暮らしについて、いちのせさんにお話を伺いました。