ピンク色のシャツを着た飼育員さんの膝の上でお昼寝をしているアシカさんの写真に癒される人が続出しています。注目はその表情!うっとりと目を閉じ、口元も緩んでいてなんとも幸せそうです。投稿したのは、今年で創業91年目を迎えた高知県にある「桂浜水族館」です。詳しい話を聞きました。
リプ欄には癒されコメントがたくさん寄せられています。
「こっちまで幸せな気持ちになれます😃可愛い」
「安心だねぇ~♡」
「天使の微笑みや……💕」
「めっちゃ癒される❣️」
「なに😍😍😍この天使の寝顔は😍😍😍とろけてまぅぅう~😍」
「( ˘ω˘)スヤァにも程がある」
「幸せって、多分こういうこと。」
また、同水族館が6月にショータイム廃止を発表したことから、「この顔見たら、ショーをやめて正解だと思いました。よかったね」という声もありました。アシカさんとショーについても、桂浜水族館に話をうかがいました。
母親に育児放棄されてしまった赤ちゃんアシカだった
――このアシカさんについて教えてください。
「カリフォルニアアシカで名前はコエル、昨年6月に桂浜水族館で生まれた1歳の女の子です。通常アシカの出産にかかる時間は、だいたい30分~40分といわれていますが、コエルの母親であるエルは初産ということもあり、出産に7時間かかりました。
母親は長時間のお産に疲弊し、育児を放棄してしまいました。母乳を一滴も飲む機会もなく人工哺育となり、いつ死んでしまってもおかしくない状況が続きましたが、飼育員たちが必死で子育てに励んだ甲斐あってすくすくと育ち、先日無事1歳のお誕生日を迎えました。コロナ禍で生まれたいのち。この世に生まれる瞬間から「死」を乗り越えたコエル。苦境や苦難を「乗り”越える”」という意味を込めて「コエル」と名付けました」
――この寝顔になったシチュエーションを教えてください。
「コエルは館内を大冒険したあと、飼育員の膝枕で日向ぼっこしています。時々ちらっと目を開けますが、すぐにまた気持ちよさそうにすやすやと。ミルクを飲んだ後やお母さんアシカのトレーニング中など、コエルはよく館内を大冒険したり、飼育員の膝枕で日向ぼっこしたり、飼育員のあごをちゅっちゅちゅっちゅ吸ったりしています」
――このような表情になることはよくあるのでしょうか。
「日常茶飯事です(笑)。飼育員を押し倒して身体の上で眠ったり、今回のように膝枕でうとうとしたりしています。コエルは自由奔放で好奇心旺盛、人間の、特に男の人が大好きです。タイミングが合えばお客さんもこのようなシーンに立ち会うことができますよ」
「ショーのメリットを活かしきれていなかった」
桂浜水族館の飼育員とスイゾクとの関係は「親子であり友人であり恋人であり家族であり仲間」と言います。強い絆で結ばれていることがわかります。そんな魅力たっぷりの桂浜水族館は、今年ショーの廃止を決定し話題になりました。
――ショーを廃止された経緯は?
「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、毎日開催していたショーイベントを2020年に一旦中止したことが始まりでした。ショー自体は10分程度のものですが、台本を作ったり、音楽や道具を用意したり、人前に出る心の準備をしたりと、ショーのためにいろいろな時間を費やしていました。
その時間を、飼育員たちはその時間を生きものと向き合う時間にあてることができるようになり、どうすれば生きものたちが健康的で幸せにいのちを全うすることができるか考える余裕が生まれました。遊びの種類を増やしたり運動内容を工夫したり、生きものと濃密な時間を過ごすことでさらに信頼関係が深まり、同時に、飼育員たちの観察力やトレーニング力が向上しました」
――ショーを廃止することで飼育員の働き方が変わったんですね。
「そうです。当館の「ショータイム廃止」は、動物擁護の観点より“働き方改革”に重きを置いています。時代が変われば、人々の生き方や世論も変わります。ここで働くスタッフが変われば、当然働き方も変わります。これは、コロナ禍において令和時代に新しい働き方として見出した“今の桂浜水族館”の在り方です。私たちが選んだ答えであって、すべてではありません。
私たちの場合は、ショータイムというしばりがなくなったことで心や時間の余裕ができた飼育員たちは、働き甲斐を見つけ、自ら仕事を見つけ、積極的に新しいことに挑戦するようになり、ひとりひとりがより強く個性を発揮しだしました。飼育員が生き生きしていると、その表情やしぐさから、生きものたちは人の心を敏感に読み取って、もっともっと心を開いてくれるようになりました」
――でも本来であればショーは、水族館にとっての目玉ですよね?
「「ショー」は、集客が見込めれば一度に多くの人に向けて生態解説を行うことができます。しかしながら当館は田舎の小さな施設であり、「日本一フォロワー数と来館者数が比例しない水族館」とはよくいったもので、普段の来館者数は他の施設と比べて極めて少ないのです。そう考えると、当水族館では、「一度に多くの人に向けて生きものついて知ってもらう」というショーのメリットを活かしきれていないと感じました」
――ショーのかわりにお客さまにとってのお楽しみが減ったのでは?
「これまではショータイムやイベントタイムとして決まった時間に行っていましたが、その日いつなにが起こるかわからない「宝さがし」のような状況になりました。また、お客さまから話しかけられることが増え、いろいろとお伝えできるようになって、コミュニケーションを楽しんでもらえるようになったと思います。
館内を巡っていて偶然の出会いを楽しんでいただき、動物たちの生き生きとした姿を見ていただければと思います」
――今後の展望を教えてください。
「私たちはなににおいても“水族館”という枠にはまらないことを心がけています。職種や業界の垣根を越えて、さまざまなカテゴリーの方々と積極的に出会い、繋がりを広げ、桂浜水族館を更新していきたいと思っています」
◇ ◇
桂浜水族館は太平洋を一望できるロケーションにあり、土佐湾に生息する魚を中心に、約220種4000点の生きものを飼育。手書きのお魚解説版や思わずツッコミを入れたくなるような館内の面白POPが随所にあり、ウミガメ、ヒレアシ、ペンギン、カピバラなど館内ほぼすべての生きものにエサやり体験ができ、トドやアシカのトレーニングタイムが楽しめます。
「手を伸ばせば触れられるほど近い距離にいる生きものたちのリアルな声や匂い、呼吸を感じられます。個性豊かなスタッフとスイゾクたちの愛が溢れるまったり空間に、ハートフルな気持ちになること間違いなしです。水槽の前で大きく手を振ると整列する桂浜水族館名物の怪魚「アカメ」の群泳など、ここでしか手に入れられない素敵な思い出づくりができます」と担当者は語ってくれました。
「桂浜水族館」
住所: 高知県高知市浦戸778 桂浜公園内
電話:088-841-2437
公式ホームページ:https://katurahama-aq.jp/
Twitter:https://twitter.com/katurahama_aq