政治家はニュータウンを見捨てるつもり? 寂れゆく街に「参院選でも争点に」住民の訴え

どなどな探検隊(パートナー記事)

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 「あなたたち政治家が都市計画の一環として造り上げた、このニュータウンをこのまま無責任に見捨てるおつもりですか」。京都新聞社が双方向型報道「読者に応える」のLINEで、参議院議員選挙で候補者に質問したいことを募ったところ、このような厳しい意見が寄せられた。投稿者に詳しく話を聞いた。

 投稿したのは京都市西京区の洛西ニュータウン在住の牧貴道さん(38)。牧さんは6歳から洛西ニュータウンに住んでるといい、現在は妻(37)とニュータウン内の市営住宅に2人暮らしだ。

 「洛西ニュータウンはどんどん活気を失っているように思います。市バスに乗っていても高齢者が若者より多いです」。近くの小学校も児童数減少により、統合が決まっている。

 地域を走る唯一の公共交通はバスだ。地下鉄を延伸する計画もある。しかし「地下鉄はなんとかならないかとは思いますが、難しいでしょうね」とあきらめ気味だ。

 洛西ニュータウンは1969年に事業が開始された。エリアの面積は約260ヘクタールと、東京の多摩ニュータウン(約2800ヘクタール)や大阪の千里ニュータウン(約1160ヘクタール)と比べても小規模。洛西ニュータウンを含む西京区洛西支所管内の人口は4万9200人(住民基本台帳人口、4月1日現在)。65歳以上が占める高齢化率は京都市全体では28・5%に対し、洛西支所管内は35・9%と高く、高齢化が課題となっている。

 ニュータウンの高齢化に伴い、牧さんは懸念していることがある。その一つがスーパーマーケットの存続だ。「高齢者が多いので(商環境の変化で)スーパーが撤退してしまったら、買い物場所がなくなったら、ということを想像します」

 牧さんは2020年に脳出血を患い、左半身が不自由だ。そのため、あまり遠くに買い物に行くことができない。ニュータウンの中心部にはデパート併設のショッピングセンターがあるが、つえをついて歩く牧さんには不便だ。

 洛西ニュータウンの住民の利用が多く、約3キロ離れた阪急京都線の駅近くの変化も牧さんには気がかりだ。「最近、阪急桂駅周辺でドラッグストアやファミリーレストランが閉店しているんです。洛西ニュータウンだけでなく、桂駅周辺でも閉店が相次ぐと、街が寂れていると実感しますし、気持ちがめいります」

 一方、こうした動きとは対照的に、京都市中心部はホテルやマンションなどが新たに建ち、再開発の波が押し寄せる。

 「洛西ニュータウンは西京区という京都市の西の端っこです。見捨てられるのではないかと思うと残念な気持ちになります」

 7月10日の参院選の投開票日を前に思うことはある。「衆院選の際は、候補者が近くの施設で演説をして、交流する機会もありました」。衆院選は京都府が六つの小選挙区に分かれていた。一方、今回の参院選は京都府全体が選挙区だ。候補者は遠い存在に感じるという。「候補者がニュータウンの問題にどこまで関心を持っているか見えてこない」と語る。

 少子高齢化に伴って空き家が増え、コミュニテイー維持が困難になるといったニュータウンの課題は全国で共通している。

 牧さんは訴える。「40年以上前に政治家がニュータウンを開発したからには最後まで責任を果たしてほしい。お金がないから対策ができません、というのは無責任。少子高齢化というが、効果的な対策を考える時間はいくらでもあったはず。政治家の方には真剣に考えてくださいと言いたいです」

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