「開かずの踏切」ならぬ、1日中開いたままの「閉まらずの踏切」 線路の高架化後も「現役」で存在し続ける理由とは

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遮断機が下りている時間が長く、交通渋滞を引き起こす「開かずの踏切」は社会問題でもあるが、逆に「閉まらずの踏切」なんて存在するのだろうか?
全国に踏切はざっと3万カ所はあるという。でも、「閉まらずの踏切」なんて、おそらく数えるほどしかあるまい…。

と思いきや、意外にも身近な場所に存在した。ニシキタこと阪急西宮北口駅前(兵庫県西宮市)にある大型商業施設「阪急西宮ガーデンズ」のそば、阪急今津線(南線、西宮北口~今津間)に、その踏切はある。「球場前踏切道」。片側1車線の車道と、両脇に歩道がある立派な踏切である。

阪急西宮ガーデンズが立つ場所には、かつてプロ野球阪急ブレーブスの本拠地・西宮球場(阪急西宮スタジアム)があった。今も踏切にその名が残るのは、この踏切がれっきとした「現役」だからだ。しかし、電車が通ることは滅多にない。

筆者は西宮出身で、神戸に移住した今もたまに里帰りするが、この踏切が閉まっているのを見たことはない。地元の知り合いに尋ねてみても、「そやなぁ、見たことないなぁ」と、関心なさげだ。もしかして出くわした経験のある方、あなたはとてもラッキーな経験をされている!?

久しぶりに現地を訪れてみたが、阪急カラーのマルーンの電車はすぐ東側の高架の上を走っていて、くだんの遮断機が下りる気配は一向にない。なのに、踏切を通る車は、みんな律儀に一旦停止している(当たり前か…交通ルールは守りましょう)。傍らには「危険 横断注意」と呼びかける看板もちゃんと存在する。

調べてみると、1日に2回(つまり1往復)、早朝と深夜にだけ、この踏切は閉まるという。2010年に西宮北口駅付近が高架化されるまでは、ひっきりなしに電車が通っていたこの踏切。高架完成後は、神戸線経由で車庫に出入りする回送電車のためだけに線路は残され、踏切が生き残ったのだった。

すぐ近くにもう1カ所、閉まらずの踏切がある!

実はレアな踏切はもう一つ、存在する(珍しくないってこと!?)。この「球場前踏切道」のさらに北側に、「西宮北口南踏切道」という歩行者だけが通ることができる小さな小さな踏切があるのだ。西宮北口南踏切、駅の北東側と、南側にあるバスターミナルや兵庫県立芸術文化センターなどを短絡する通路として新設された。

鉄道事業者からすれば、事故を防ぎ、交通渋滞を解消するために、本来なら踏切はできるだけ造りたくないシロモノのはず。とはいえ、先述のように1日に2回しか遮断機が下りない、それもほとんど人が通らない早朝深夜だとすれば、「許容範囲」だったのだろう。

西宮北口のレアな踏切たち、ぜひとも動いている姿も見てみたいが、時間が時間だけに…肝試し、いや運試し!

(まいどなニュース・神戸新聞/長沼隆之)

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