日本の酪農が存続の危機――。牛乳消費低迷による収入減に加えて、コロナ禍やウクライナ情勢、円安などの外的要因により、日本の酪農が危機を迎えているといいます。国内の現役酪農家197人に酪農経営について聞いたところ、9割の人が「経営難」を感じていることがわかりました。また、現在の環境が続いた場合、半数以上の人が「酪農の経営を続けられない」と回答したそうです。
一般社団法人中央酪農会議が2022年6月に「日本の酪農経営 実態調査」として実施した調査です。
はじめに、「経営環境」について聞いたところ、過去1年間に「経営を困難に感じた」と答えた酪農家は全体の92.4%。また、現在「経営の悪化」を感じている酪農家は97.0%となり、酪農家のほとんどが経営難を痛感しているといいます。さらに、経営する牧場の直近1カ月の経営状況を聞くと65.5%が「赤字」と回答したそうです。
また、現在の環境が続いた場合、「今後も酪農の経営を続けられると思いますか」と聞いたところ、55.8%が「続けられない」と回答、「続けられる」と回答した人は18.3%に留まり、日本の酪農業は、まさに存続の危機に直面しているといいます。
次に、「経営悪化の要因」を聞いたところ、最も多かったのが「円安」(89.8%)でした。次いで、「ウクライナ情勢」(85.3%)、「原油高」(84.3%)、「コロナ禍」(70.6%)といった回答が挙げられました。
また、現在、酪農の経営を営む上で「減少していると感じる収入」については、「牛販売の収入の減少」(67.0%)と「生乳販売の収入の減少」(61.9%)が2大要因となっており、国際情勢やウイルスによる世界的パンデミックなど、経営努力では如何ともし難い外的要因が酪農家の経営を大きく圧迫しているといいます。
最後に、「経営悪化による具体的な影響」を聞いたところ、「将来に向けた牧場の投資の減少」(67.0%)、「貯金の切り崩し」(66.5%)、「家族の生活費の切り下げ」(47.7%)、「借入金の増加」(45.2%)などが挙げられ、酪農家の実生活にも大きな影響が出ているほか、将来への不安も感じられるといい、日本の酪農家の多くが将来の見通しが立たない状況に追い込まれており、生活費を切り詰めたり、貯金を切り崩しながら耐え忍んでいることが伺えたそうです。