「詐欺ではないの?」スシローのおとり広告問題、弁護士に聞いた 「詐欺罪に問う」ことが難しい理由とは

平松 まゆき 平松 まゆき

 回転ずし大手「あきんどスシロー」(大阪府吹田市)が昨年9~12月、店舗にウニやカニのすしの在庫がなく、客に提供できないことが分かっていながらテレビCMやネット上で広告したなどとして、消費者庁が景品表示法違反(おとり広告)で再発防止を求める措置命令を出した。消費者としては「だまされた」との思いがぬぐえず、ネット上には「詐欺ではないのか」との声が散見された。詐欺罪に問われない理由を、かつて歌手デビューも果たした元アイドルの平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

 Q スシローのおとり広告問題で、消費者庁は景品表示法違反にあたるとしてスシローに再発防止を求める措置命令を出しましたが、そもそもどのような法律ですか?

 A 正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」と言います。一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的としています。

 Q 景品表示法違反による措置命令ってよく出されるものなんですか?

 A 消費者庁によれば2020年が全国で33件、2021年が41件のようですね。さほど多くない印象です。よほど悪質な場合に限定されているのではないかと思います。

 Q 個人的にはスシローが詐欺に問われないのが疑問なのですが。

 A みなさんがぱっと思いつくのは「詐欺罪」のことだと思います。法的トラブルは、主に民事ルートでの解決と刑事ルートでの解決がありますが、詐欺罪に問うということは刑事で立件してもらうということですね。しかし、今回のケースに限らずですが、いきなり組織犯罪としての詐欺罪に問うのはハードルが高いと言えます。とりわけ詐欺罪は、犯罪のなかでも立件が難しいと言われています。詐欺の故意の立証は実はとても難しいんですよね。

 Q では民事ルートで詐欺に問えますか?

 A 民事ルートでは、消費者保護を目的とした消費者契約法という法律があります。たしかにこの消費者契約法には「不実告知」(消費者契約法4条1項1号)といって、重要事項について事実と異なることを告げることによって、消費者がその重要事項を誤認した結果、契約を締結してしまった場合には、当該契約を取り消すことができる規定があります。消費者保護の観点から、民法に規定された詐欺(民法96条)よりも、行使しやすく設計されています。

 ただ、厳密に考えると、広告された商品はなかったとしても、他の商品の提供は受けられたわけなので、財産的損害がないということになってしまいそうです。そもそも財産的損害がなければ民事ルートを使うこともできません。だからこそ、消費者庁が動いたということもできそうです。

 Q 目当てものがなかったのならば帰ることもできた、ということでしょうか。

 A いや、法律では詐欺に問いにくいと言っているだけで、個人的には目玉商品がなかったら怒り心頭ですよ。席に通されているのに、目当てのないからといって「じゃあ帰ります。」ということもなかなかできませんよね。財産的損害はないかもしれなくても、失った時間を返してくれとは思います。

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