「こっそり飼っている人いますよ」仲介業者の言葉を信じて、猫を飼っていましたが…訴えると警告され困惑 弁護士が解説

猫の法律相談

石井 一旭 石井 一旭

「管理規約ではペット禁止ですが、こっそり飼っている人いますし、大丈夫」といった仲介業者からの説明を信じて、分譲マンションを購入したという人から相談がありました。管理組合からはペットの飼育をやめるようにとの警告を受け、どうすればいいか悩んでいるといいます。あさひ法律事務所・代表弁護士の石井一旭氏が解説します。

【相談】私は分譲マンションZで猫を飼っています。Zマンションにはペット飼育禁止という規約があったのですが、マンション購入にあたり、仲介業者から『このマンションでは、実は結構な割合の人がこっそりペットを飼っています。現に前の居住者さんも犬を飼っていましたよ』と聞かされたので、それなら猫を飼っても大丈夫だろうと判断し、猫と同居を始めました。ところがZマンションの管理組合から、猫の飼育をやめないと訴えると警告されてしまいました。私は、どうすればよいのでしょうか。もし訴えられたら、どうなってしまうのでしょうか。

「間違った説明を信じてしまったから」といった理由は、言い訳にはなりません

▽1 マンションの管理規約とは?

多種多様なバックグラウンドや考え方を持つ人が一つの建物に住むことになる分譲マンションでは、建物を共同利用する上でのルール(規約)を、多数決(具体的には、区分所有者及び議決権の各々4分の3以上の多数による決議。建物の区分所有等に関する法律31条1項)で設定・変更することができます。この要件に従って適正に変更された規約には、すべての居住者が従わなければなりません。

▽2 訴えられたらどうなってしまうのか?

相談者は仲介業者の話を信じて、「他の人も飼っているから別にいいだろう」と考えてしまったわけですが、管理組合は猫の飼育をやめないと裁判をするぞ、と言ってきています。もし訴えられたらどうなるのでしょうか。この場合に参考になるのが東京地裁平成13年10月11日判決です。

本件と同じように、仲介業者の「ペット飼育は問題ない」という説明を信じて、管理規約上ペット飼育が禁止されているマンションに犬を伴って入居した人物が、管理組合に飼育の禁止を求められて訴えられたケースです。

裁判所は、飼い主に対し『犬を飼ってはならない』という判決を下しました。マンションの規約は、マンションの管理又は使用に関して区分所有者相互間で定められた、入居者が守らなければいけないルールです。裁判所は、適正に定められたルールであれば守らなければならない、として、そのルールどおりの判決を下したのです。

では、仲介業者に誤った説明をされてしまったことは問題ではないのでしょうか。

この点に関して裁判所は、「飼い主と仲介業者との間で解決されるべき問題で、マンションの規約の効力には関係しない」と示しています。また、仮に他の入居者もペットを飼っているとしても、「そのことから直ちに被告のペット飼育が正当化されるものではない」とも示しています。

簡単に言えば、「間違った説明を信じてしまったから」とか「みんながやっているから」といった理由で、みんなで決めたルールを破ってもいいことにはなりません、ということです。こう書くと、当たり前の話ですよね。

▽3 どうすればいいのか?

それでは、猫はどうしたらいいのでしょうか? Zマンションの集会に掛け合って、ペット禁止の規約の変更をお願いすることを考えるべきでしょう。

既に述べたとおり、規約は、区分所有者の頭数及び議決権の4分の3以上の多数決をもって変更することができます。他にもこっそりとペットを飼っている人たちにも「堂々と飼えるようにしていきましょう」と協力を呼びかけ、今飼われているペットたちはしつけが行き届いていて、他の居住者にも迷惑をかけたりしていないことを、ペットを飼っていない他の居住者たちにわかってもらい、多数派からの理解を得て規約変更を認めてもらうのです。

しかし、ペット飼育全面禁止の規約があるところで、いきなり全面解禁に変更させることは実際問題難しいでしょう。ペット禁止マンションですから、居住者の中にはペット嫌いの人もいるはずです。

ですので、「今現在飼われているペットだけは例外的・個別的に一代限りの飼育を認める」という改正を目指すことが、現実的な解決法になると思われます。

多数派の説得に失敗して、規約が変更できなかった場合、相談者としては、他にペット飼育可能な家を探して引っ越すか、Zマンションに住み続けるのであれば猫を手放さなくてはいけなくなります。

いずれにしても、ペット禁止マンションでペットを飼ってしまうと、ペットも、飼い主も、極めて不安定な立場に置かれてしまうことには変わりありません。

ペットを連れてマンションなど共同住宅に入居される際は、ペット飼育が可能かどうか、業者さんや前の持ち主等の説明を鵜呑みにすることなく、きちんと規約にあたって内容を確認するようにしましょう。

▽4 あいまいな規約の問題

なおこれとは別の話ですが、時折、「近隣に迷惑をかけるおそれのある動物の飼育は禁止(ただし小動物は除く)」といったあいまいな管理規約をみかけることがあります。

このようなあいまいな規約は、置くことに意味がないばかりか、定めることによって余計に混乱と争いを生じる種となってしまうため、感心できません。

規約・法律・校則など、世の中のどんな決まりごとも、誰でも明確に基準が読み取れることが必須の条件です。ルールは、誰でもルールとして理解できるから、ルールたりうるのです。それに、基準があいまいなルールは、誰かが自分の思いどおりに捻じ曲げて解釈適用してしまう危険もあります。

もし、お住まいの分譲マンションの管理規約がこのようなあいまいな定めになっているようでしたら、マンションの集会で、規約を明確にすること、それと同時に、今飼われている動物については飼育を認める方向での改正に向けた話し合いをされてみてはいかがでしょうか。

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