情報セキュリティをアニメで発信…「こうしす!」が活動10周年 テレビ放映目指しクラファン挑戦中

川上 隆宏 川上 隆宏

架空の鉄道会社で起こるITのトラブルをコメディタッチで描き、情報セキュリティの大切さについて発信している自主制作アニメ「こうしす!」をご存知ですか。多数の有償・無償のボランティアが関わり、おおよそ2年ごとに最新作を発表していますが、プロジェクトがまもなく10年を迎えるにあたり、より多くの人たちに見てほしいと、テレビ放映を目指したクラウドファンディングに挑戦しています。

2022年1月には最新作が公開

「こうしす!」とは、「こちら京姫鉄道 広報部システム課」の略称で、京都と姫路の間に路線を持つという設定の中堅私鉄「京姫鉄道株式会社」を舞台に、情報セキュリティ対策に奮闘する社内エンジニアのどたばたを描く作品です。

アニメは「OPAP-JP」という、非営利のプロジェクトによって2013年から制作が始まり、2014年4月に「Windows XP」のサポート期限切れをテーマとした第1話を公開。2016年から現在にかけては「セキュリティの完璧を求めるのは間違っているのだろうか」をテーマにした第3話に取り組んでいます。

そこで描かれているのは、「コンピューターウイルスに感染したら懲戒処分」などと、会社の上層部が言い出した世界です。しかし、厳罰を恐れた社員がトラブルを隠ぺいした結果、深刻な障害が発生する展開に…。情報セキュリティ対策は「被害を受ける前提」で考えておくべきことを4つのパートで紹介する予定で、2022年1月には最新作のパート3が公開。現場の責任者が、いわゆる「完璧主義」の限界に気付き、体制を立て直していくところが描かれています。

2023年秋ごろのテレビ放映目指して

テレビ放映への挑戦は、第1話の制作開始から2023年で10周年を迎えることから生まれた特別企画といいます。続編の第3話パート4を完成させ、2023年秋ごろを目標に、関西圏とそのほか1地域で放映を実現したいといいます。

現在は放送局に見積もりを依頼し、交渉に向けた準備を行っている状況とのこと、その一方で制作などに費用が必要なため、クラウドファンディングを呼びかけているといいます。ひとまず目標金額は256万円ですが、集まった金額によっては放送地域拡大などを検討したいとしています。

次の10年につながるような盛り上がりを

アニメ監督の井二かけるさんに聞きました。

――テレビ放映への挑戦、すごいですね。

できれば30分枠×3回で、これまで作成してきたストーリーを一部ダイジェストにしながら放送できればと考えています。ただ、達成金額と放送局の番組考査の結果次第なので、どうなるかは分かりません。まずは「予算」のハードルを越えることを目的に、今回のクラウドファンディングを始めました。以前から継続的に支援くださっている方などから、期待のメッセージを頂いています。

――まもなく活動10周年とのことですが、作品には多くの有償・無償ボランティアの方が関われていると聞いています。これまでに「継続の危機」のような出来事はありましたか。

まさに今、という感じがしています…。私個人の点でいえば、本業のプログラマーの合間に制作に取り組んでいますが、活動時間を確保できなくなりつつあるのが一番辛いところです。

私だけでなく、ほかの参加者の方も、就職されたり、プロとしての活躍の場を広げたり、逆に活動を辞めてしまわれたりもして、徐々に参加できる方が少なくなっているのが現状です。これまでアニメ1回分を作るのに約2年ほどの時間をかけていますが、2年間もかけている“贅沢”が許されなくなってきているとも感じています。

――なんと…まさに今が転換点だったのですね。

「こうしす!」のストーリーは第3話が完結すると一区切りつくこともあり、現在取り組んでいるパート4が、今のスタイルで作る最後の作品になるだろうと思っています。

そこから先の展開がどうなるかは、今回のクラウドファンディグで挑戦する「テレビ放映」がどこまで話題になるかにかかっているといっても過言ではありません。Netflixのような動画配信サイトから受注できるようになると良いのですが…。

――次の10年につながるような盛り上がりになると良いですね。なお、制作に時間がかかるとのことですが、情報セキュリティという移り変わりが激しそうな分野を取り上げるにあたって、気をつけていることはありますか。

時事ネタを扱うことが難しいのは事実です。しかし新しい攻撃手法が生まれ続けている一方で、昔ながらの攻撃手法も依然として使われ続けています。極端な話、セキュリティ用語の「トロイの木馬」は、古代ギリシア神話を由来とする言葉です。言い換えれば、それほど昔からある発想だということです。そういう意味では、古い作品でも今に通じる部分があるといえると思います。

――ちなみに、2022年1月に公開した最新作・第3話パート3について、一番の見どころはどこだと思われますか。

高圧的な態度では物事を悪化させるだけだということに、統括指令長の万能倉が気付いたということです。怒られるから情報を隠ぺいしよう…というようなことが起きがちですが、情報セキュリティインシデントへの対処は、初動対応が肝心です。

――第3話が完結するのはいつごろを予定していますか。

来年には第3話パート4が完成する予定です。今回のクラウドファンディグで目標額を達成できれば、放送を落とさないようにするためがんばります!

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クラウドファンディングは5月31日まで。リターンなどの情報はサイトをご覧ください。

▽【CAMPFIRE】アニメ こうしす!10周年企画 セキュリティ×鉄道×コメディでTV放映を視野に!
https://camp-fire.jp/projects/view/569161

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