繰り返される銃犯罪 事件現場の米バッファローにゆかりのある”歯科医芸人”が明かす恐怖体験

山本 智行 山本 智行

 アメリカで繰り返される銃乱射事件。同種の事件が起こるたびに銃規制が叫ばれますが、根本的な解決にはいたりません。つい最近もニューヨーク州バッファローで人種差別に起因する痛ましい事件が発生しました。場所は歯科医芸人の”パンヂー陳”こと陳明裕さんが毎年、ニューヨーク州立大での講義に訪れているところ。実際に日本人には理解できないような恐怖の体験をしたことがあるようです。(聞き手・山本 智行)

事件現場は毎年、講義に訪れている場所

――アメリカのスーパーマーケットで14日、18歳の男が銃を乱射し、10人が犠牲になった事件。現場はニューヨーク州バッファローと報道されてましたが、毎年、陳さんが教えに行ってはるあたりじゃないですか?

陳明裕(以下、陳):あたりどころか、まさしく僕が毎年行ってるところです。その後、カリフォルニア州オレンジカウンティ―の教会で、銃乱射事件がありましたから、やっぱり銃社会は怖いですね。かつて僕は、このすぐ近くのアパートを1年間借りていたことがあったので、この事件は、ものすごく身近に感じました。

――陳センセイが住むってことは高級住宅街だったのでは?

陳:いえいえ、真逆です。借りていたのはもう20年近く前の話ですが、アメリカのアパートは古くなるとそれだけ修繕などの維持費が増えるので、更新の度に値上げされます。その物件は当時、日本人が多く住んでる地域の半額の家賃だったので、引っ越したんですが、それはもう大変で。不動産の仕事をしていた父が「家賃は部屋だけじゃなく、近所に住む人や環境も含めた金額だ」って言ってましたが、まさにその通りでした。

――と、いいますと?

陳:向かいの部屋の男性は働きにも行かず、昼間は大音響でロックを流しっぱなし。お酒なのか他のいけない薬なのか分かりませんが、いつ会っても目がトロンとして酔ってるみたいな人でした。エレベーターを一緒に乗ると臭くて、息を1回も吸わずに全部吐かなきゃいけない住人も居ました。

――想像しただけで息苦しくなりそう。

陳:当時、ダウンタウンは治安が悪くて、ダウンタウンに近いサウスキャンパス内でも発砲事件が起こったりしてました。でも、最近はプロアイスホッケーチーム「セーバース」の本拠地周辺のハーバーが再開発されて高級マンションが建てられたりして、治安は大分良くなっていたんですけどね。

――よう、そんなとこ住んでましたね。歯医者やねんからもっとエエとこ、住みなはれ。

陳:いえ、若手芸人の住む部屋はみんなこんな感じです。ちなみにこの時の表札は、どうせ外人には分からないと思い、カタカナで「トム・クルーズ」って書いて貼ってました。

――そこは売れない芸人らしさが出てますね。でも、若手芸人はあんまりニューヨークに教えに行きませんけどね。事件のあったスーパーに買い物も行ってはったんですか?

陳:このスーパー「Tops」はバッファローに何店舗もある大手チェーン。実はアメリカに住んで最初に会員割引カードを作ったのもそこです。

――ニュースで見るとのどかな街といった印象ですが。

陳:ニューヨークというと都会のイメージが湧くかもですが、マンハッタン周辺以外は結構自然が多く、野良リスがゴミ箱をあさってるのを見かけます。ナイアガラの滝への最寄りの空港のある町で、道が空いてたら車で15分くらいで滝まで行けちゃいます。バッファローは一応、ニューヨーク州第2の都市なんですが、マンハッタンまでは車で6~7時間かかりますし、日本で例えれば、東京都第2の都市みたいなもんですので、八王子か町田みたいなイメージですかね。

さえないオジサンさんの家に重機関銃

――なんかよう分からん説明ですけど、全米のいたるところで銃が普及してるんですね。

陳:はい、所謂、修正第2条で「自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有・携行する権利を侵してはならない」と定められていますので、ニューヨーク州は拳銃所持については厳しい方なのですが、精神病、薬物、重罪など経歴に問題がなければ許可は下ります。

――日本人には想像もつきません。

陳:僕も好奇心で近所のガンショップがやっている銃購入許可申請のための講習会に参加したことがありますが、1回講習を受けたら証明書がもらえて、それを持って申請すれば、OKとの事でした。結局、そのガンショップでは記念に拳銃メーカーのTシャツを買っただけでしたが、ウォールマートなどのスーパーにも銃の売り場がありますし、買いたい人には割と簡単に買えちゃいます。

――銃が身近すぎますね。ハードルが低すぎ。

陳:銃は自衛目的以外に鹿狩りをする人も所持しています。狩猟シーズンに車を運転していると、ハンターから逃げて道路に飛び出し、車にはねられた鹿を必ず見かけるほどです。以前、銃マニアで何丁も銃を持っている学生がいて、いつも休憩時間に銃の雑誌を見ていました。その学生は銃把の彫刻にこだわりがあるようでしたが、銃も日本刀みたいにコレクターがいて、アンティークや美術品的な価値やニーズがあるそうです。

――いろんな目的で銃を所持してるんですね。

陳:ホント、いろんな銃を持ってる人がいて、以前、eBayという日本で言うメルカリみたいなサイトで購入した商品を車で取りに行ったら家に重機関銃を置いていてビビりました。しかも普通のさえないオヤジが持ってるんですからね。思わず「お前はランボーか!?」って心の中で突っ込んじゃいました。

――こういう痛ましい事件が起こるたびに銃規制が叫ばれるのに、なかなか実現しません。

陳:そうなんです。毎年全米で、年間2000万丁くらい銃が販売されて2万人近くが銃の犠牲になって、その2万人のご家族みんなの笑顔も奪っているのに、一向に改善されないんですよねぇ。確かに僕も学生の頃、テストで悪い点を取ったら、その日は反省して勉強するんですけど、次の試験の頃にはもう忘れていて同じことを繰り返しちゃうんですよね。

――何ちゅう例え!今回こそは、真剣に銃規制の機運が高まって実現してほしいものです。

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