そのほか、身の回りでよく起こるキズや体調不良へのケアについても、小児救急看護認定看護師の野村さちいさんが解説しています。一般の人がどのように対処しているかの調査結果とあわせて紹介します。
◇ ◇
【あかぎれへの対処法】
「ひどいあかぎれで、指先がぱっくり割れてしまったとき、どのような処置を行いがちですか」と聞いたところ、「絆創膏など他のアイテムを使ってケアを行う」(56.7%)、「ハンドクリームを塗るなどこれまで通りの処置を継続する」(43.3%)という結果でした。
<昔>
ハンドクリームを入念に塗布することで予防&ケアをする。
<今>
痛みを和らげながらキズを「治す」ケアを。日ごろの予防にハンドクリームなどの使用は重要だが、あかぎれはすでにキズになっている。その場合は、すり傷などと同様に、水道水で洗い、湿潤療法(モイストヒーリング)できる絆創膏を貼る。
<解説>
手指消毒や手洗いが頻回になるので、水気をしっかり拭き取るだけで、あかぎれになるリスクは軽減することができます。
◇ ◇
【虫刺されへの対処法】
「虫に刺された際にどのような処置を行いがちですか」と聞いたところ、「できるだけ触らないようにする」(73.3%)、「刺されたところに爪でバッテンを付ける」(26.7%)という結果になりました。
<昔>
噛まれたところを爪で×印をつけかゆみを抑える。ハチ刺されには尿をかける。
<今>
触るのはNG。むやみに触ると化膿の恐れが。石鹸などを使用して洗い流した上で、刺された部分を冷やすと痒みが軽くなる。痒み止めの軟膏(ステロイド入り軟膏や抗ヒスタミン薬軟膏)を塗布する。アンモニアでハチの毒は中和できない。
<解説>
虫刺されの特徴として、子どもは大人よりも症状が強く出て、腫れやすく、長引きやすいです。ハチは、以前に刺されたことがある人はアレルギーが 出ることがあるので、皮疹や呼吸困難感などアナフィラキシーの症状などが出た場合は救急車を呼んでください。また、ミツバチは刺し口をよく観て針が残っていれば取り除いてください。マダニは取り除かず、そのまま病院へ。暑い時期は虫刺されからトビヒになることもあり、ジクジクした掻きキズが広がってくる場合は小児科へ。
◇ ◇
【靴擦れへの対処法】
「靴擦れができたときの処置」については、「痛みを感じたら外出先でもすぐに処置をする」(63.3%)、「とりあえず耐えて帰宅してから処置をする」(36.7%)という結果になりました。
<昔>
帰宅するまで痛みに耐え、すぐに処置せず、自宅に帰ってから消毒し絆創膏を貼る。
<今>
痛みを感じてすぐケアすることが早い治りに繋がるため、外出先でも処置を。靴ずれを保護し、痛みをやわらげながら治す、モイストヒーリング(湿潤療法)ができる絆創膏を靴擦れに気づいたら早めに使用するとよい。
<解説>
ティッシュはクッションにはなるが、傷口にくっついてしまい取る際に傷を悪化させる場合もあります。靴擦れで起きやすい水ぶくれが傷つき、開いてしまった場合は、(1)石鹸とお湯で 25秒間手を洗い、清潔にする、(2)水ぶくれの部位の皮がめくれている場合は、引っ張って取らず、患部の上を覆うようにする。靴ずれが治りかけているときに、また靴ずれを起こすと、生まれ変わりかけていた肌が傷つけられ、色素沈着によって黒ずみも悪化していきます。一度靴ずれができてしまったら、完全にキズが治るまではなるべく新しい靴は履かないようにしたり、パッドやインソールで足と靴の摩擦が起きない環境を作ったりするなどの心がけも大切です。
◇ ◇
【打撲への対処法】
「打撲の処置」については、「湿布を貼る」(44.4%)、「氷で冷却する」(28.9%)、「コールドスプレーを使用する」(26.7%)という結果になりました。
<昔>
コールドスプレーや冷湿布で冷却する。
<今>
スプレーでは冷却が足りない場合があるため、アイスパックや氷で患部をしっかり冷却する。さらに痛みが強い場合には、鎮痛効果のある湿布を貼ると効果的。
<解説>
打撲であっても骨折していることもあるので、 腫れが強い場合や痛みが持続する場合は整形外科などの医療機関を受診しましょう。また小児は若木骨折といって、大人のようにボキッとではなく、竹がしなるように骨折している場合があります。そのため、腫脹がなくても痛みが軽減してこない時は受診しましょう。
◇ ◇
【やけどへの対処法】
「やけどの処置」については、「とにかく冷やす」(82.8%)、「アロエを塗る」(12.8%)、「耳たぶを触る」(4.4%)という結果になりました。
<昔>
アロエを塗る。耳たぶを触る。
<今>
流水を使い、20 分を目安に冷やしましょう。アロエの皮の成分(シュウ酸カルシウム)が、やけどを刺激し治りが悪くなることも。赤くなる程度の浅いやけどは、モイストヒーリングの絆創膏で処置ができる。
<解説>
顔や頭にやけどを負った場合は、濡れたタオルや、タオルで巻いた保冷剤や氷を当てるようにしましょう。子供は大人と比べて体表面積が小さく、冷やし続けると体温低下を引き起こしやすいため、クーリングは15分以内とし、冷やし過ぎないよう注意が必要です。熱傷は程度が重要なので広さと深さで受診を判断しましょう。
◇ ◇
【捻挫への対処法】
「捻挫の処置」については、「湿布を貼る」(55.6%)、「氷水で冷却する」(25.0%)、「コールドスプレーを使用する」(19.4%)という結果になりました。
<昔>
湿布を貼り、包帯やテーピングで固定する。
<今>
湿布では冷却不足の場合も。氷でしっかりアイシングをし、添え木などで固定し、安静にする。
<解説>
骨折が疑われる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。テーピングは腫脹してくることがあり、あまりキツく固定してしまうと循環障害のリスクがあるため、テーピング固定よりも添え木などで固定が望ましいです。
◇ ◇
【熱中症への対処法】
「熱中症の処置」については、「倒れる前にこまめに水を飲む」(90.6%)、「倒れるまでになったら処置する」(9.4%)という結果になりました。
<昔>
倒れるまで特に処置しない。倒れた場合、脇や首筋など血管が集まる一部のみを冷やす。
<今>
何よりも予防が大切。水分補給は頻繁に行う。太い血管のある部位だけでなく、露出させた皮膚に冷水をかけ、うちわであおぐなど、全身を冷やすように。熱中症予防として飲む場合、水やお茶でなく塩分や糖分のバランスの良い経口補水液が効果的。
<解説>
熱中症指数などもうまく活用しながら早めの対策をとりましょう。めまいや吐き気、頭痛、食欲不振などが起きた時点で軽い熱中症になっているため、対処しましょう。熱中症が疑われる環境下で発熱した場合は、救急要請も考えましょう。熱中症も重症化すると生命に影響をきたすことがあり、早め早めの対策と熱中症の進行を防ぐことが重要。
◇ ◇
【突き指への対処法】
「突き指の処置」については、「特に触らない」(71.1%)、「指を引っ張る」(28.9%)という結果になりました。
<昔>
指を引っ張る。
<今>
触らず、洗面器などに氷水をいれ、直接指を入れて冷やす。患部を動かさず添え木などで安静にする。
<解説>
入れ物がないときは、ビニール袋に氷を入れて指を挟むように冷やしましょう。テーピング固定は腫脹してくることも予測され、循環障害などのリスクがあるので添え木固定が望ましいです。