築170年以上の古民家を改装した「雑貨舎 雨宿りの猫たち」(福岡県北九州市)は、猫関連を中心に1万点以上の雑貨を取り揃えている隠れ家的な店。オーナーの安永亜希さん(40)が飼っている三毛の「まだら」(メス、推定9歳)、白猫の「だんご」(メス、4歳)と、ビジョンフリーゼの「小雪」(メス、6歳)の3匹は、猫好き、犬好き、雑貨好きなお客さんたちの人気者だ。看板猫&看板犬として「店長のまだらは癒し担当、オッドアイを持つだんごはアイドル的存在、小雪は犬好きの輪を広げる役」(亜希さん)を果たしている。「8年前、まだらと巡りあったのは、人生を変える出会いだった」と振り返る亜希さん。何があったのか、話を聞いた。
野良とは思えないほど警戒心がなかった
まだらを初めて見かけたのは2014年秋、この店の開店準備をしていたころでした。当時、店の前では道路工事が行われていて、まだらは作業員さんの後ろをついてまわったり、警備員さんの隣で寝ていたりしていたので、私は工事現場の人が毎日ここに連れてきてるとばっかり思っていたんですよ。ところが工事が終わると、まだらだけぽつんと取り残されたように道路にいて。野良猫やったんやと気づいたんです。
野良とは思えないほど警戒心がなく、人なつこい子でした。なのに、私が店に入ってきてもいいよと促しても、「いいんですかね、入って」みたいな感じで遠慮がちにしているんです。そんな姿がいじらしくて愛らしく、誰も飼い主がいないので、私が保護して店で飼うことにしたんです。
実は当初は、趣味だったガラス細工の工房にしようと思っていたんですよ。そのための機械や道具類も全部揃えていました。なのに、まだらと出会ったことにより、ガラスは火や砂を使うので猫がいるなら危ないし、猫の体にもよくなさそうだからと、ガラス工房はやめて雑貨店をすることにしました。
それまで猫を飼ったこともなかったのに…なんででしょうね。まだらを見かけるようになってから、今日はまだ来てないなとか、今なにしよんやろとか、気になって仕方なくなって…。まるで好きな男の子を追いかけるみたいに(笑)。
それまでは食品会社のウェブデザイナーをしていました。当時、独立することへの不安や悩みなどがあり、癒しを求めていたのかもしれません。一緒に暮らしはじめると、まだらは母親みたいに私に寄り添ってくれて。つらいときとかは、まだらに相談すると、なぜか心が軽くなりました。
まだらはおとなしく、誰にでも好かれる性格なので、しばらくすると、お客さんの間で人気者になりました。最初は雑貨全般を扱っていたのですが、まだら人気もあり、次第に猫雑貨を中心とした品揃えへとシフトしていったんです。オープンしたときは8畳くらいのスペースでの営業だったのに、数年後には古民家の1、2階全部を店舗として広げるまでになりました。
私の人生を変える出会い
独立開業するとき、もしまだらが現れていなければ予定どおりガラス工房をやっていて、こうした雑貨店はしていなかったと思います。絶妙なタイミングで現れ、私を猫雑貨の世界へと導いてくれただけでなく、以来、今日までずっとお客さんを招いてくれています。まだらと巡りあったのは、私の人生を変える出会いだったんです。
一方、小雪は5年前、まだらのご飯を買わなきゃと、たまたま入ったペットショップの奥にいた子です。当時、小雪は生後8カ月。その店では生後半年までで売れないと業者が引き取りにくるそうで、小雪はいわゆる売れ残りでした。店の人から「あと1週間で連れていかれてしまうので、興味あれば飼ってあげてほしい」と頼まれたんです。おとなしくてこんなに可愛い子なのに、連れていかれたらどうなってしまうんだろう…命はあるんだろうか…。そんなことを思うといてもたってもいられなくなり、手続きを経て、私が引き取らせてもらうことにしました。
小雪は心根のやさしい子。まだらは最初こそ警戒していましたが、小雪がやってきて3日ですぐに仲良くなりました。ふだんはおとなしいですが、常連のお客さんが駐車場に車を停めると、姿を見なくてもキャンキャン騒ぎだし、入口で待ち構えます。私よりも記憶力がよく、しっかりと看板犬の役目を果たしてくれています。1カ月に1度、トリマーさんにお願いしてカットしてもらい、身だしなみを整えています。
4年前には、オッドアイのだんごが店のメンバーに加わりました。だんごは後脚がねじれ、下半身が異常な状態で生まれてきた子なんです。獣医師さんいわく「このままだと歩けず、死んでしまうかもしれない」と言われたほど。しかし、後脚をマッサージするなどしてずっと介抱していたら、生後半年くらいで普通に動けるようになりました。まだらはおっぱいをあげたりして面倒見がよく、だんごもまだらが大好きです。
店には猫好き、犬好き、雑貨好きの方々がそれぞれ集まり、お客さん同士、会話が弾むことも少なくありません。自分の愛猫、愛犬の写真を見せあったり、一緒にご飯を食べにいかれたり、SNSで繋がったりということもよくあります。
店を始めたとき、私は自分ができる範囲内のことをやれればいいと考えていました。でも今は、できる範囲内を踏み出して、いろんなことにチャレンジしていけるようになりました。そんな自分に成長できたのも、3匹の子たちがいつもそばで私に元気をくれているおかげなんです。
【店名】「雑貨舎 雨宿りの猫たち」
【住所】福岡県北九州市八幡西区木屋瀬3-18-12
【ホームページ】https://store.shopping.yahoo.co.jp/neco/amayadorinonekotachi.html