“脱水症”といえば夏のイメージがありますが、“隠れ脱水”と呼ばれる冬の脱水症状があることをご存知でしょうか? “隠れ脱水”が起こる原因とその対策方法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――“隠れ脱水”とは、どのようなものなのでしょうか?
一般的に、脱水症状は汗をダラダラとかいて、喉の渇きを感じるため症状に気づくことができるのですが、“隠れ脱水”はわかりづらい脱水症状のことを指します。たとえば、冬場は汗をかくことが少ないですが、屋内では暖房器具を使うことでさらに空気が乾燥しやすくなり、知らないうちに脱水になってしまうんです。さらに、年齢を重ねると喉の乾きに気づきづらくなってしまうため、「水分を摂ろう」と意識しておかないと、気づいた時には脱水症状になってしまっているんです。
――冬でも、脱水症状になってしまうほど水分はなくなってしまっているものなんですか?
そうですね。皮膚から蒸発していく分や、吐く息に含まれる蒸気など、1日に約900mlの水分が失われていくため、その分の水分は補給しておかなければなりません。つまり、冬場であっても水分補給は必要なんです。
――“隠れ脱水”になった場合、どのような症状が出るのですか?
軽度の場合は、倦怠感を覚えたり、立ちくらみや頭痛、頭がボーッとする、などの曖昧な症状が主です。もしもこういった症状がみられた場合は、水分を摂るように心がけていただきたいですね。さらに悪化した場合は、意識が朦朧としたり、皮膚がカサカサと乾燥するなどの症状がみられ、最終的に意識が薄れてしまうことがあります。症状としては、夏の脱水症状と違いはありません。ただ、汗をかいていないということもあり、本人や周囲の人も脱水症状に陥っているとは気づきづらく、他の病気を疑ってしまう可能性もありますね。
――ただ、冬場に冷たい水を飲むというのは難しいかもしれないですよね。
冷たい水ではなくても、お茶などの水分であれば問題ありませんが、お茶には利尿作用がありますので水よりも多めに摂っていただく必要があります。ほかにも、白湯や常温に近い水、ホットレモンなどでも構いません。ただし、ホットレモンを飲む場合は、お砂糖を入れすぎると糖尿病の危険性が高まってしまいますので、その点だけ気をつけていただければと思います。
――夏のように何リットルも飲まなければいけないわけではないですよね?
1日約1200mlほどで十分といわれています。
――夏の脱水症対策には塩分摂取も必要といわれていますが、冬はどうなのでしょうか?
冬場はそんなに塩分を摂取する必要はありません。特に高血圧をお持ちの方は食事で十分な塩分を摂取できていますので、水分のみで問題ありません。
――対策としては、部屋の乾燥もやっかいですよね。
そうですね。部屋の乾燥については、加湿器で部屋の湿度を50%ほどに上げておくことが大切です。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科