奈良の春日大社の聖域、初めての一般特別公開 若宮の御本殿・内院を間近で拝観、見どころは?

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世界遺産の春日大社・摂社「若宮」(奈良県奈良市)御本殿と内院が、4月9日から期間限定で初めて一般特別公開。これは歴史的にも注目すべき、貴重な機会となる。

若宮の御本殿(重要文化財)がある内院は、普段、神職でも祭事が無い限りみだりに立ち入ることができない聖域。なぜ、今回初めてとなる一般公開に踏み切ったのか? 御本殿と内院の見どころなどを含めて、春日大社・権禰宜の阿久津利次さんと広報担当の秋田真吾さんに伺った。

――なぜ、今回初めて一般公開されたのでしょうか?

阿久津さん「春日大社では、大神様のお住まいである御本殿をはじめとする社殿を20年に1度造り替え、修復をおこなう『式年造替(しきねんぞうたい)』がおこなわれています。若宮は昨年(令和3年)から御造替が始まり、それに伴い、若宮様は御本殿からが御仮殿にお遷りになられて、今はいらっしゃらないので、今回初めて一般公開に踏み切りました。『春日若宮おん祭』は知っているけれど、若宮のことはよく知らない、というお声を聞くことがありますので、今回を機に広く若宮様の存在を知っていただければ」

――若宮様はどのような神様なのでしょうか? なぜ、若宮の御本殿は、西向きで奈良盆地を向いて建っているのですか?

秋田さん「春日大宮(御本社)には、第一殿から第四殿まで、4柱の神様がおられますが、「春日の御子神(みこがみ)」として知られる若宮様は、第三殿の天児屋根命(あめのこやねのみこと)様と第四殿の比売神(ひめがみ)様の御子神様として、平安時代中期(1003年)にご誕生された神様です。

当初は春日大宮とご一緒におまつりされていましたが、その後、飢饉や疫病が流行したことから、若宮様の御力にすがるため、長承4年(1135年)に現在の地におまつりされました。若宮の御本殿が西を正面にしているのは、背後にある神体山の御蓋山(みかさやま)信仰を基にして、平城京を鎮守しているからです。参拝者は、若宮様と神体山の御蓋山にお参りするのです」

――それで若宮は摂社ですが、御本社(大宮)と同格とされているのですね。

阿久津さん「若宮御本殿の正面の段(きざはし)は、大宮(御本社)の第一殿と同じく7段あります。大宮の第二殿、第三殿、第四殿は6段です。平安時代から大宮と同格とされ、大宮と同格の祭祀をご奉仕しております。大宮とともに御本殿は、神社建築の様式『春日造(かすがづくり)』の代表例として知られています」

――同格とのことですが、御本社と若宮で異なる箇所や今回の特別公開での見どころを教えていただけたら。

阿久津さん「階の両側にある黒い漆塗りの雁字板(がんじいた)の剣と巴の模様が、若宮は緑青(ろくしょう)で塗られています。大宮は胡粉塗の白色をしております。今は御遷座されたので、御簾は外されていますが、若宮は赤の生地でつくられておりまして、大宮は限りなく白に近い薄萌黄色といった違いがございます。また、大宮は四殿並んでいますのでできませんが、若宮はぐるりと(内院を一周して)見ていただけます」

――文久3年(1863年)の式年造替で建てられた御本殿(平成13年・14年の造替で修復)をこんなに間近で拝見できることで、創建当初の様子も体感できる本当に貴重な機会ですね。

秋田さん「御本殿ももちろんですが、内院の太く立派な藤づるもご覧いただけたら。樹齢は分りませんが、野生の藤づるです。春日山(御蓋山)は、841年に入山禁止、狩猟と伐採が禁止されて以来、神域として護られてきたので、この藤づるも切られずに大切に護られてきました。そして藤は藤原氏を象徴するものですので、是非ご一緒にご覧ください」

◇  ◇

今後は、5月頃から本格的な修復作業に入り、若宮様は10月28日に営まれる本殿遷座祭(正遷宮/しょうせんぐう)で御本殿にお戻りになる予定。特別公開は、4月24日(日)まで。先着順(予約不要)で、実施時刻は10時、11時、13時、14時より(所要時間約30分)。若宮御造替奉賛金として1人2000円が必要(特別記念品付)。

春日大社公式サイト:https://www.kasugataisha.or.jp/

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・いずみゆか)

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