アルバイトで食いつないだ2年間 京都・八坂神社に昔懐かしお化け屋敷が復活 興行主「驚いてもらうのがうれしい」

堤 冬樹 堤 冬樹

 花見客らでにぎわい、露店が並ぶ八坂神社(京都市東山区)の境内の一角に、昔ながらのお化け屋敷が登場し、人々の目を引いている。新型コロナウイルス禍で中止となっていたが、3年ぶりの復活となる。客の悲鳴や驚きの声が外まで響き、従業員は「やっと、という感じ。非日常の空間を思い切り楽しんでほしい」と話す。

 おどろおどろしい骸骨やろくろ首などが描かれ、「お化け屋敷」と大書された特設の建物。入り口ではスタッフが「魑魅魍魎(ちみもうりょう)が至る所から出てきます」「ママより怖いお化けはいませんよ」などと軽妙な語り口で入場を呼び掛ける。

 暗い通路を歩いて回り、出口までは5分ほど。親子で入った井手香奈さん(37)=右京区=は「こうしたお化け屋敷は懐かしい感じ。いい体験でした」と振り返り、長男の朝陽さん(8)は「怖かったけど、めっちゃ楽しかった」と笑顔を見せた。

 お化け屋敷を運営するのは兵庫県丹波篠山市の三好興行。かつて存在した見せ物小屋に代わり、20年以上、桜の時期に八坂神社の境内で営業を続けてきた。

 同業者が減っている上、高齢化も進んでおり、京都だけでなく全国を年間40カ所ほど巡るのは今では珍しいという。祭りや催しの場所に合わせ、お化け屋敷の規模や内容を変えられるのが強みだ。

 だが、コロナ禍で昨年、一昨年は夏祭りなどが軒並み中止となり、ほとんど声が掛からなくなった。「人形作りや建物のメンテナンスのほか、アルバイトもして何とか食いつないできた」と苦境の2年間を振り返る。

 今年は八坂神社や隣接する円山公園で、3年ぶりに桜の時期の露店が再開。ただ、同公園では宴会の自粛が求められており、例年のように夜遅くまでの客足は期待できないという。三好興行副代表の細見孝成さん(47)は「海外客も戻ってきておらず打撃だが、来られたお客さんは『久しぶりに遊びたい』という気持ちが強いように感じる」と語る。

 コロナ対策で入り口に消毒液を置き、マスク着用をお願いしている。客を怖がらせる際にも距離を取るよう意識し、求められたら行っていた客との握手もやめてグータッチに。客が入場する間隔も空けるようにしている。

 

 コロナ禍で客の入りの見通しが立ちにくく、人件費も節約せざるを得ない状況だ。いろんなお化けに次々と変装し、さまざまな仕掛けを操作するなど、細見さんは「以前より少人数で何役もこなさなければならないから大変」と苦笑しつつ、「やっぱり驚いてもらったり楽しんでくれたりしたらうれしい」と充実感ものぞかせる。

 ちなみに、筆者も久しぶりにお化け屋敷を体験してみた。中の様子は入ってのお楽しみなので省くが、何度も体がビクッとなり、オォッと声を上げてしまった。アラフォーのおじさんながら、ひとときの間、童心に帰ったようだった。

 高校生以上600円、小中学生500円、小学生未満400円。4月10日(午前11~午後10時ごろ)まで営業予定。

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