学校や企業で用いられる1年の区切りである「年度」。日本で年度といえば一般的に4月1日から3月31日までを指し、入学式や入社式も4月1日におこなわれることが多いですよね。
記者が疑問に思っていたこと、それは「4月1日生まれの人、学年どうなるの?」。3月31日が年度の最終日だから、4月1日生まれの子は4月2日以降に生まれた子たちと同じ学年なんでしょうか。例えば、2016年4月1日生まれの子は、2015年4月~2016年3月31日生まれの学年、2016年4月2日~2017年3月31日生まれの学年、どっち。選べるなんて噂も聞いたことがありますが。
文部科学省のサイトには「学校教育法第17条第1項では『保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、…これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。』とあり」と記載されています。
うーん、難しい。まず満年齢はどう数えるのでしょう。「最初の学年の初めから」とは。京都市内に事務所を構える「あさひ法律事務所」の代表弁護士・石井一旭さんに解説していただきました。
満年齢の数え方を弁護士に聞いた
ーーまず、満年齢とはどんな計算方法なんでしょう?
「法律で人の年齢をどのように計算するかについては、「年齢計算ニ関スル法律」(正式名称は「明治三十五年法律第五十号」)に定められています。古い法律なので意訳しますが、1条は「年齢は出生日から起算する」と定めています。2条は「年齢の計算方法は民法143条の考え方で行う」としています」
「そこで民法143条を見ると、2項で、『週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。』と定められています(但書は省略)」
ーーこの場合の応当する日とは毎年迎える誕生日のことですね。
「その通りです。『年齢~歳』とは、言い換えると『その人の出生日から~年後の出生応当日(誕生日)までの期間が経過すること』ということになります。出生日が起算日なので、『週、月又は年の初めから期間を起算しない』場合にあたります。そこでその期間は、民法143条2項で『その起算日(「出生日」)に応当する日(年が異なる同じ日付の日)の前日に満了』します」
ーー4月1日生まれの人は3月31日に満了するということですか?
「はい。文科省のページに則して具体的に説明しますと、2022年4月1日に6歳の誕生日を迎える、とは、出生日である2016年4月1日から6年経過する、という意味です。『6年間』という期間は、その起算日(このケースだと出生日の2016年4月1日)に応当する日である2022年4月1日の前日である2022年3月31日の経過をもって満了することになります。
これが文科省HPで『人は誕生日の前日が終了する時(午後12時)に年を一つとる(満年齢に達する)、とされています。』ということの意味です」
「そしてこの考え方を、学校教育法第17条第1項の『保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め(4月1日・学校教育法施行規則59条)から、…これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。』にあてはめますと、2016年4月1日生まれの子は法律上満6歳に達する日が2022年3月31日なので、その翌日である『2022年4月1日以後における最初の学年の初め』から就学することになります。
『以後』という言葉はその当日を含みますので、2022年4月1日を初めとする学年からの就学義務を負うことになります」
ーー翌日(この場合4月1日)以降における最初の学年の初めも4月1日だから、3月31日までの子たちと同じということか。では、4月2日生まれの子は?
「2016年4月2日生まれの子の場合、法律上満6歳に達する日が『2022年4月1日』なので、その翌日である『2022年4月2日以後における最初の学年の初め』、つまり2023年4月1日を初めとする学年からの就学になります。なので4月2日生まれの子は、次の学年まで待たなければならないのです」
ーーありがとうございました!
なるほど。満年齢の数え方、前日の午後12時に満了するというのがネックですね。
ちなみに、4月1日生まれの著名人は、元プロ野球選手で読売ジャイアンツ1軍投手チーフコーチの桑田真澄さん、作家・林真理子さん、Hey! Say! JUMPの元メンバーで俳優の岡本圭人さんなど。
4月1日生まれの人はみんなこの決まりを知っているか気になります。まいどなニュースの編集部にも4月1日生まれの記者がいるので、話を聞きました。
4月1日生まれの人に聞いた
ーー学年はどちらでしたか?
「3月31日までに生まれた人たちと同じ学年でした」
ーーやはり!親御さんはそう決まっているのを知っていましたか?
「はい、知っていました。生まれたのが学年で1番遅いということになるので『体が小さくて不利かも』と考える親御さんもいるようです。私の両親の場合は、ともに身長が高く『他の子と1年違っても体格差はそこまでないと思って』とポジティブでしたね。その通り、私は早生まれでも背は高い方でした。でも同じ誕生日で体が小さい同級生もいたので、個人差がありますね」
ーーそこは早生まれの人に限ったものでないですしね。4月1日生まれで得したこと、または損したことはありますか。
「得したことは、誕生日を覚えてもらいやすい。あと、年を重ねるのが学年で1番最後なので同級生と集まった時、常に1歳若かったとかですかね。損したことはない気がしますが、しいて言うならエイプリルフールなので『今日、誕生日なんだ』と言っても信じてもらえません。子どもの頃、体が小さくて苦労した、悔しい思いをしたということは私はなかったです」
◇ ◇
とはいえ、体の大きさなど発育面で心配になる親心ももちろんあるはず。親御さんが抱えるそんな心配を踏まえてか、都内の私立小学校では同じ1年生でも月齢順にクラス分けしているところもあるそうです。
そして「学年を選べる」という噂はあくまで噂で、選ぶことはできませんでした。学生だった頃、学年に4月1日生まれの人はいましたか?