アイリスオーヤマ、7割稼働の経営論が話題 人生もこうすれば…「緊急時に10割出すのね」「気持ちが楽に」と10万人が共感

宮前 晶子 宮前 晶子

「アイリスオーヤマの経営面白い。あらゆる設備の稼働率を7割以下に留めて、需要の急増に瞬時に対応できる体制にしているそうだ。東日本震災後にはLED照明を大量生産してLED電球で国内シェアトップになり、コロナ禍ではマスクの大量生産を行った。7割稼働。良い なんと言うか人生もこんな感じにしたい」

10.2万ものいいねが付いたのは、古今東西のさまざまな書物を読んでは、Twitterでつぶやく読書家の酔っぱらい科学者(@yopparai_chmist)さんの投稿。

コメント欄には、
「ほんと素晴らしい方針。 普段から120%稼働させるから、非常時にパンクする」
「7割の力で働いて緊急時に10割出せる様にしておけってのはよく言われるけど それを会社としてやっとんのねぇ」
「ここぞの場面で力を発揮できる組織は強い」
「うちの会社の経営層に爪の垢を煎じて飲ませたい。 緊急時は休日出勤すればいいと思ってやがる」
など会社経営に関するものから、
「人生7割で生きる、良いですね。気持ちが楽になります」
「家事育児仕事全て頑張るのは無理。どこかで手抜きしてた。人間って、自然とそうできるのではないかな?」
と生き方に思いを馳せるもの、
「余力の大切さ教育とか育児とかでも7割でできれば、余裕を持って対応できると思う」
「平時の余裕は緊急時の力ですね。そこを無駄、余分と考える人が如何に多いことか」
とさまざまな問題に置き換えるものまで、多様な意見があふれました。

138字のつぶやきが招いた波紋、酔っぱらい科学者さんはどう思っているのでしょうか? また、アイリスオーヤマ株式会社にも真実かどうかを聞きました。

7割稼働、人生もこんな感じで生きてみたい

−−今回、投稿された理由は?

「普段から、本や論文を読んで、面白いと思った内容を肩肘張らずにツイートしています。マニアックな本を多く読むので、リアルだと引かれることが多いんですけど、SNSはオタクに優しい文化があって、とても居心地が良いんです。アイリスオーヤマの会長の大山さんの著書『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』を読んで、おもしろいなと思ったのでツイートしました。

非常事態が必ず起こるという前提で経営を考えている点を非常に素晴らしいと感じました」

−−あっという間に拡散されましたね。

「なんとなくこれは拡散されるだろうなという予感がありました。今は、何のために生きるのか?という問いに対して、仕事とプライベートの両方を含めながら答えを出し、多様な生を実現させたい、と考えている人が増えているとの感覚があるので。

世の中が、がむしゃらに仕事に生きるという考え方一辺倒ではなくなっていると思うんです。また、仕事の生産性という観点でも、心理的安全性や健康状態の維持が重要という点が認識されるようになってきています。時代の流れに合致しているつぶやきだったから、やはり共感を得たんだなと思いました」

−−コメントも多種多様でした。

「“7割の人生だったら今はなかった”というコメントが強く心に残っています。 この人は恐らく10割で生きてきて、その成果に強い誇りを持っている人で、私のツイートを見て、自分を批判されたように感じたのかもしれないと思いました」

−−自由に意見を交わせるのがSNSの長所である反面、傷ついたり傷つけたりすることも。

「私のツイートは多数の共感を得ましたが、その反対側にいる人への共感を欠きたくはないと考えています。自分と反対側にいる他者への共感はとても大事にしたい。また、多数派は、少数派の感覚に対して鈍くなり、強い意見を言いがちになります。「10割の人生」でがむしゃらに生きてきた人は、それで良いし、ひとつの立派な生き方。

その一方で、そういう生き方をきついと感じる人々が幸せになるひとつの選択肢として「7割の人生」があると良い。今は、「7割の人生」が共感を得る時代になりつつありますが、両者の生き方が、あたりまえに共存でき、個人が自分の感覚で選べる社会になればいいですよね」

−−つぶやきの最後を「人生もこんな感じにしたい」で締めていらっしゃいますが、この言葉の真意は?

「私は多趣味で、仕事だけの人生では充足を得られないタイプ。やりたいことが多すぎるんです。だから、未知なモノが飛び込んでくる空白として、3割が残されていると良いなと思いました。

空白の3割で、これまで読んでこなかった作家の本に挑戦したり、数時間の散歩(徘徊)に出たりということを行えば、視野がぱっと広がっていくんじゃないかな、と。これまでの蓄積分と予期せぬ化学反応を起こす、そんな経験を人生で味わいたい。そんな気持ちを込めました」

アイリスオーヤマ「7割稼働は事実です」

2020年に始まったコロナ禍では、当初、マスクの品切れが相次ぎました。マスクを求める長蛇の列、転売による高騰など混乱を極める中で、いち早くアイリスオーヤマ株式会社がマスク供給を行ったことは当時大きな話題に。これももしや、7割稼働のなせる技だったのでしょうか?

アイリスオーヤマ株式会社広報室に、今回のツイートについて、ことの真意を尋ねました。

−−酔っぱらい科学者さんがつぶやいた7割稼働、常に行っていることなのですか?

「はい。もともとこの7割稼働率は、弊社がホームセンターを中心にプラスチック製の園芸用品を販売した頃に意識し始めたものです。園芸用品の売上は天候に左右されますので、需要変動に対する体制は整えておかなければならなかったのです。

その経験から、通常時は7割の稼働率とし、残りの3割で新たなチャンス獲得に向けた余裕を持ち、有事の際に瞬発力を発揮できるようなバランスで経営を行うということに至りました」

−−10割稼働になったケースはあるのでしょうか?

「コロナ禍でのマスクや東日本大震災でのLED照明の増産は有名ですが、ほかには2009年の新型インフルエンザ発生時です。この時も、3割の空きを活用してマスクの生産能力を一気に引き上げることができました。世の中のニーズに迅速に対応すべく、トップの経営判断を含め、社内全体がよりスピード感を持った体制となります。

また、大きな事例の他にも、日々様々なカテゴリの商品で需要が高まった際に、この空きスペースは活用されています」

−−今回の反響については?

「工場稼働率70%の経営について反響を頂き、とても有難く存じます。また人生観に重ねていただいたことはとても予想外で、驚いております」

◇  ◇

普段は、「時代に左右されない小説や専門書を読むことが多いものの、時代を反映する最新のビジネス書はとても面白い内容のモノもあります」と話す酔っぱらい科学者さん。読みたい本や知りたいことが多すぎて、時間が常に足りないという感覚を持って日々を過ごしているそうですが、このツイートを読んだ人に及ぼした波紋は、これまでの酔っぱらい科学者さんの読書歴や考えがあってこそ。これもまた、予期せぬ化学反応のひとつではないでしょうか。

さて、マスク着用が当たり前となった現在、市場にはさまさまなマスクが登場しています。アイリスオーヤマ株式会社でも、ピスタチオ、アッシュピンクなど春らしい「カラーマスク」を展開。また必需品であることから、グループ会社であるIRIS OHYAMA FRANCE SASでは、ポーランド共和国内のウクライナ難民キャンプを支援するため約10万枚のマスクを寄贈しています。

■酔っぱらい科学者さんTwitter(@yopparai_chmist) https://twitter.com/yopparai_chmist
■アイリスオーヤマ株式会社【公式】Twitter https://twitter.com/irisohyama_info/
■アイリスオーヤマ https://www.irisohyama.co.jp/

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