障害があってもなくても、誰でも平等な権利を持っています。そうはわかっていても、無意識のうちにさまざまな偏見を持っているのではないでしょうか? Yさん(30代・男性)とMさん(30代・女性)は、ピアカウンセリングといわれる同じ悩みを抱える人同士のミーティングで知り合い、結婚しました。結婚までの道のりはとても険しく、2人の結婚を祝福してくれる人はいませんでした。しかし、結婚から5年の月日が経ち、いまでは多くの人が2人を応援してくれています。2人の結婚までの道のりと現在の生活について、Mさんにお話を伺いました。
付き合うことはいいが、結婚となると話は別?
「友達がいない」「仕事したくても続かない」「誰も自分のことをわかってくれない」というYさんとMさんは精神障害があり、同じ悩みを抱えていました。つらい状況だったとき、通院先のソーシャルワーカーにミーティングに誘われました。そこでYさんとMさんは意気投合し、お互いによき相談相手となりました。
自分のことを誰も理解してくれない、自分のつらさをわかってもらえないと感じていた2人は、初めて自分を理解し、支えてくれる人に出会ったと感じたそうです。出会ってから1年半が経過し、2人は結婚することを決意し、お互いの両親に話をしました。どちらの両親も付き合うことはいいが、結婚となると話は別だと結婚に猛反対したのです。
反対する理由は「2人とも精神障害者だから」というものでした。Mさんの父親は「結婚してもすぐに離婚するに決まっている!病状がこれ以上悪化するのは目に見えている」といい、それ以来Yさんと会うのを拒否しました。Mさんはこのとき「なんで未来がわかるの?」と何度も父親に訴えましたが、その答えを聞くことはできませんでした。
猛反対を押し切り結婚したものの…
お互いの両親を何度も説得しましたが、結婚に賛成してもらえませんでした。2人はお互いが同じ生きづらさを抱えているから結婚するのだと両親に伝え、反対を押し切り婚姻届を提出しました。
しかし、結婚生活がスタートすると、これまでお互いに見えていなかった部分が見えるようになり、けんかになったりお互いの言動で体調を崩すことが増えてきました。そうした状況を見て2人の家族は「想像できたことだろ」と叱責しました。しかしこうした状況は障害の有無に関係なく、どんな人でも起こり得るのではないかと、2人は何度も両親に説明をしたそうです。
でも、本当は離婚した方がいいのか…2人で話し合っていたとき、Yさんの体調が悪化し、とうとう入院することが決まりました。しかしYさんの入院を機に、お互いの関係を冷静に考えることができたとMさんは話してくれました。
困難はあるかもしれないけれど、乗り越えたい
Yさんの入院前、2人は障害福祉サービスを利用して同じ職場で働いていました。しかし、いつも一緒にいることはお互いに刺激が多く体調に影響をきたしてしまうと主治医からのすすめもあり、Mさんは違う職場で働くようになりました。
日中、それぞれ違う職場で働くことにより2人の体調が安定していくと、両親や近所の人も応援してくれるようになりました。YさんとMさんは「もしかしたらこれから先、もっと耐えられないような困難があって離婚するかもしれないけど、それは障害者でも健常者でも同じです。でも2人で乗り越えたいです」と笑顔で話してくれました。