「アイメイクおしゃれすぎ」小鳥の可愛い写真が話題 北海道で力強く生きる野生動物の魅力を伝える撮影者に聞いた

太田 浩子 太田 浩子

 北海道に生息する全長14センチほどの小さなシマエナガを捉えた写真が話題です。枝にとまった毛玉みたいなふわふわのシマエナガが、つぶらな瞳で首を傾げてこちらを見ている写真をよく見ると、目の上に黄色いアイシャドウをつけているみたい。約5年前に高校の社会の教員として道東に赴任してから、発見と驚きの毎日を写真に収める撮影者さんにお話を聞きました。

 「自分が可愛いと分かってるシマエナガさん」と写真をツイートしたのはアカウント名「NG(@nagi0467)」こと柳楽航平(なぎらこうへい)さん(27歳)です。「雪の妖精」とも言われる可愛らしいシマエナガの鮮明な写真に「あざといですね~😁でも可愛いからOKです🙆」「イエローシャドウとかアイメイクおしゃれすぎじゃない…?🥺💛」「わぁー!かわいいですね! これは完全に確信犯ですね🥺 心臓つかまれました💗🥺」などとコメントが寄せられて、いいねは3.2万を超えています。

 柳楽さんは、シマエナガだけでなく、エゾシカやキタキツネ、エゾフクロウなどの道東の厳しい自然環境で力強く生きる野生動物をメインに撮影しています。どの写真も、生き物の息遣いが感じられるような距離感。思わず引き込まれてしまう写真は、何度もツイッターで話題になりました。

 柳楽さんは島根県出身で愛媛大学に4年間通ったあと、卒業と同時に赴任地の北海道標津郡標津町(しべつ町)に移住しました。そんな北海道初心者だからこそ感じる町の魅力を写真に収める柳楽さんに聞きました。

──シマエナガの写真に大きな反響がありました。

 たくさんの方に可愛いと言ってもらえてとても嬉しいです。シマエナガは可愛いだけでなく、小さな体で懸命に飛んでいる姿は逞しく、羽の透け感が非常に美しい鳥でもあると思います。今後は可愛い姿ももちろん、美しく逞しい姿もおさめて、たくさんの方々にシマエナガの魅力を知ってもらえたらなと思っています。

──このあと投稿されたシマエナガが飛んでいる写真は、力強く広がった羽が美しくてびっくりしました。小さな鳥ですが、撮る時のコツなどあるのですか?

 シマエナガの好む木を見つけ、来そうなポイントを予測することです。シマエナガはイタヤカエデという木の樹液が大好きです。樹液の出ているイタヤカエデの木を見つけたら、濡れた枝や氷柱になっているポイントを探し、そこに来るのをひたすら待ちます。シマエナガは日本で2番目に小さい鳥なので、撮影する際はファインダーを覗きながら、シマエナガを見失わないように両目を開けて撮影しています。

──難しそうです…。北海道ならシマエナガに会えるのでしょうか?

 冬の北海道でしたら公園や森で結構会えます! ただ、木々や野鳥の声を意識していなかったら会えません。日常生活の中でもシマエナガのことを考えていたら会えるかもしれません。

──意識していないと、何も見えないということですね。北海道に住むようになってから本格的に写真を始められたということですが、北海道で写真を撮る魅力は?

 自分が人間社会にだけ所属しているわけでない事に気付かされる点かと思います。動植物や山野河海、湿原、空、雲。意識の外にあった自然との繋がりを生々しく感じられ、良い意味で自分の無力感を知れるという気がします。「試される大地」と呼ばれるのも納得です。

──なるほど。相手が自然だからこそ、写真を撮ることも厳しそうです。

 行けば必ず、簡単に撮れるようなロケーションや動物も多々あります。ですが、自分の納得のいくような写真を撮ろうと思うと毎日同じ場所に通ったり、1日中、川や森にいたりということが多いです。こちらの注文を聞いてくれるわけでもないので思い通りにいかないことも多いです。ただ、毎日ひたすら夢中で撮っていたので、大変という気持ちにはなりません。

──大変と思わないくらい魅力を感じられているのですね。動物相手だと怖いこともあるのかな?と単純に思ったのですが…?

 人間社会で鍛えられていますので、特にありません。

──野生動物の方が怖くないかもしれませんね。今後はどんな写真を撮りたいと思われていますか?

 自分の住んでいる地域で、地域の人に響くような写真が撮りたいです。初めて住んだ道東は毎日が発見や驚きの連続なので、ジャンル問わず魅力が伝わるような写真になればと思っていす。地元の人ほど実は気付いていない魅力があったりするので、可視化していければと思います。

──学校の生徒さんたちは、柳楽さんの写真にどんな反応を?

 写真展も見にきてくれますし、学校生活の中でも見たいと言ってくれます。印刷して校内に貼ったり画像処理の授業で使ったりもしてくれています。やはり可愛い写真や煌びやかな写真は人気です。エゾシカやキツネ、ヒグマなどは彼らにとって見慣れた存在ですが、一瞬一瞬を切り取ったものを見ると目を輝かせてくれます。中にはカメラを買って、動物や風景を撮るようになった子もいます。

──当たり前に見ていたものに、こんな素敵な瞬間があるのかという発見がありそうです。ツイッターで話題になっていることは知っているのでしょうか?

 自分からSNSをやっていることは言ってはいませんが、ツイートが話題になるごとにバレて「見ましたよ」と言われる回数が増えています。

 初めは「なんでこんなの撮ってるの?普通じゃん。」「何もない町だよ。先生田舎に来てかわいそうだね。」という感じでしたが、次第に「よその人からしたらこう見えるんだ!」と、自分の地元の魅力に気付いてくれました。私というフィルターを通して地元を客観視してくれている気がします。

 北海道初心者の私に、野生動物のことや文化産業のことを生徒が教えてくれることも多々あります。生徒が教える立場に立つと自己有用感も育ちますし、自ら丁寧に調べて学んでくれます。イクラ給食の写真が話題になった時は自分達がいかに恵まれた食事をしているかを実感したようです。

──給食にイクラが出た時の写真や、ホタテが無料で配られた時の写真も話題になっていましたね。正直、羨ましいです! 柳楽さんが一番印象に残っている写真はどれですか?

 「交剣知愛」という闘うエゾシカを捉えた作品です。2頭のバランスや雪の背景が思い通りに決まり、第38回日本の自然写真コンテストで最優秀賞をとることができました。大好きなエゾシカ、毎日通っている野付半島という場所での撮影というのも理由の一つです。

 ◇ ◇

 自然とのつながりを強く感じることができる柳楽さんの写真は、3月9日から始まる「知床ねむろ観光資源パネル展」で見ることができます。

■「知床ねむろ観光資源パネル展」
開催期間:令和4年3月9日(水)~18日(金)
開催場所:北海道根室振興局1階・道民ホール
主催:北海道根室振興局
※柳楽さんのほか3名の作品が展示されます

■Kohei Nagira(柳楽 航平)Instagram https://www.instagram.com/k_ng46/

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