「綺麗じゃん、父!」遺骨がスイスで宝石に変身 ダイヤモンド葬にSNS「目頭が熱くなった」

門倉 早希 門倉 早希

「『墓は要らん!』と言っていた父。遺骨をダイヤモンドにする為に昨年の夏からスイスに行っていましたが、最近帰って来たようです!強迫性障害が酷く、旅をしたくても出られなかった父だけど。スイスの空気は旨かったか?飛行機楽しんだか?うちに来るのを楽しみにしているよ!綺麗じゃん、父!」

エッセイ漫画家・みっぽんぽん(@MitsuPongPong)さんのツイートに添えられているのは、淡いブルーを帯びたダイヤモンドの写真。みっぽんぽんさんが利用したのは、故人の遺骨から抽出した炭素をもとにダイヤモンドを合成するという方法で、ツイートには17万いいねがつくほど話題となっています。

みっぽんぽんさんのお父さんは、「還暦を過ぎてから芸術に目覚め、美術大学に進学するような父でした。孫想いのおじいちゃんでもあり、持てる愛情をすべて3人の孫に注ぎ込むように過ごしていました」と、とてもパワフルな方だったそう。そのお父さんを「ダイヤモンド葬」で見送ったときのエピソードを、みっぽんぽんさんに伺いました。

おくる側・おくられる側ともに納得がいく供養を

ーーとてもきれいなダイヤですね。このようなサービスがあることを初めて知りました。

「お墓に入れる以外にどんな供養の方法があるのかわからず、調べているうちに手元供養という方法にたどり着きました。その中にダイヤモンド葬を見つけ、アクセサリーに仕立てればいつも一緒にいられるようでいいなと。孫思いの父でしたので、アクセサリーになってわたしと一緒に過ごせば、いつも孫の姿を感じることができ、喜ぶと思いました。父子家庭の親1人子1人なので、誰にも相談せず自分で決めました」

ーー大きな決断だったと思います。決め手はありましたか?

「私がお願いした会社は、遺骨以外に混ぜ物をしないとのことでしたので、出来上がったダイヤモンドを父そのものと感じられると思ったんです。スイスで半年程度かけてダイヤモンドに生成すると聞き、ひとり旅に出て、ふらりと帰ってくるようなイメージでいいなとも。

持病の悪化でほとんど体が動かせなかった分、羽を伸ばして気分転換しておいで、という気持ちでしたね。外国に行って、風景を油絵で描いてみたいと言っていたことも思い出しました」

ーーダイヤモンド葬を決めた後はどういった流れになりましたか?

「お願いした会社の方が自宅まで来て、丁寧に説明してくださいました。納得したのでお願いすることとし、遺骨をそのまま託しました。スイスへの輸送や依頼など全てお任せで、今スイスから戻ったダイヤモンドは会社の方に戻ってきていて。これからアクセサリーに仕立てる相談をしています。期間としては、9月に旅立ち2月に日本に戻りましたので半年弱ですね。人によって期間は変わるそうです」

ーーダイヤを見たとき、みっぽんぽんさんの気持ちはいかがでしたか?

「『おかえり!』という気持ちでした。ブルーの濃さは人それぞれと聞いていたので、楽しみにしていました。父の凜とした姿を思い出せる色合いで良かったです。子どもたちは『じじすげー!』と目を輝かせていました」

ーーツイッターでも「きれい!」と話題です。みっぽんぽんさんの今のお気持ちはいかがですか?

「『どんなふうに人生終えたいのか』と言う事を父本人と話したことがありませんでした。なんとなく本人を目の前にして話しにくかったのと、まだ時間があると思っていたからです。

自宅で看取ったことも、ダイヤモンド葬のこともわたしが良かれと思って決めたのですが、父が『本当はどうしてほしかったのか?』は分かりません。本当は、おくる側・おくられる側ともに納得がいく供養ができることが一番望ましいと思います。どんな人生を送りたいか、どんな風に人生を終えたいかを家族やパートナーとざっくばらんに話し、共有してみてほしいなと思いました」

みっぽんぽんさんのツイートには、「私も母のときにダイヤモンド葬にしました」「その時がきたら私もダイヤモンドになりたい」「目頭が熱くなった」など、大きな反響とさまざまな声があがっています。

正直、ダイヤモンド葬ってどれくらいお金がかかるのか、ご遺骨は何グラム必要なのか気になる人もいるのではないでしょうか。そこで、依頼の仕方や日本法人を立ち上げたきっかけなど、スイスに本社を置く「アルゴダンザ・ジャパン」の代表・法月雅喜(のりづき・まさき)さんにお話を聞きました。

費用はいくらかかるの?業者に聞いた

ーー日本法人を立ち上げたきっかけを教えてください。

「まず、私自身は無宗教の考え方で、特にお墓などに興味がないという事もあり、メモリアル・ダイヤモンドに『ピンと来た』んです。スイスのアルゴダンザの存在を知った時は私が結婚する1年ほど前。妻と婚約しているような状況で、自分亡き後に(誰かが、ではなく)『この人が』ずっと大切にしてくれる姿がイメージできたのが良かったのかなと。

そこで『いくらくらいするのかな』と本社のホームページを見に行きました。それが2004年の事で、当時スイスの本社も創業半年くらいで『世界中にパートナー募集中』と書いてありました。自分がダイヤになりたい、といってもすぐの事ではないだろうし、自分が魅力を感じたように他の人も良いと思ってもらえるのではないかと思い、日本での取り扱いをお願いしたのがきっかけです。その後いろいろ相談し、2005年にアルゴダンザの日本支社として弊社を立ち上げました」

ーーどのような段取りで進みますか。

「まず、資料請求をしていただき、疑問点、心配なことなどをいろいろ納得するまで電話やメールで相談していただきたいです。製作の意思が固まりましたらご一報いただきます。ご依頼は対面を基本としているので、ご自宅にお伺いして詳しい説明、お申し込み、ご遺骨のお預かりをしています。コロナ等で非対面をご希望の場合には個別のオンラインの説明、郵送でも対応可能です」

ーーなるほど…。ご遺骨はどれくらい必要ですか?

「ご遺骨の成分のみで製作する場合、400g以上のご遺骨をお預かりしています。量で言うと400gは、成人男性のご遺骨全部の1/4から1/3程度に相当します。ご遺骨が足りないときはその他の炭素成分を追加する方法で製作が可能になります」

ーー価格や期間はどれくらいかかるものなんでしょうか。

「価格は一般的なタイプのもので、52万8000円から272万8000円です。期間は大まかにいうとダイヤの完成まで平均6か月程度かかりますが、ダイヤの大きさ、スイス本社への(世界中からの)依頼の量、個別のケースでかなりばらつきがあります。また、ジュエリー等の製作には別途お時間を頂いています」

ーー反響を受けて、御社への問い合わせも増えましたか?

「問い合わせは大幅に増えました。通販ではないのですぐ依頼に結びつくわけではありませんが、中には強い興味を持っていただいている方もいます。素晴らしいサービスと思っていますが、なかなか必要な方の耳に入らないので、これを機会に多くの方に知っていただき嬉しく思っています」

◇ ◇

現在、年間200件ほどの依頼があり、数年前と比べて大幅に増えているそうです。もし依頼を考えるのあれば、「月に1回、東京と大阪で説明会を行っており、そちらにご参加いただけると実際制作したダイヤを見たり、詳しい説明を対面で聞いていただく事も可能です。また、それとは別に月に1回オンラインで説明会を行っています」と、法月さん。

世界で一番硬い石とも言われるダイヤモンドには「固い絆を結ぶ」という意味があります。大切な人をいつも身近に感じられるダイヤモンド葬。今後の新たな見送り方の一つとなりそうです。

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