「爺ちゃんの棺に入れる読みかけの文藝春秋パラ見したら数独のページがあって、えっ 答えがわからずにモヤらせたら可哀想じゃんということで大慌てで正答を作っている… 火葬が先か、おれたちの解答作成が先か…」
12月2日、Twitterにこんな投稿があった。添付された写真を見ると、確かに喪服らしきものを着た人物の手元に数独の問題が書かれた紙があり、2人(?)で懸命に解いている様子が窺える。この切なくもどこかユーモラスな一幕に「緊迫感が伝わってくる」「親族の愛が強いですね!」「良い孫じゃないか」などと温かな反響が広がり、ついには文藝春秋の編集長から「ご愛読に感謝するとともに、ご冥福をお祈りいたします」とリプライが寄せられる事態に。投稿した伊藤止めさん(@itdm24)に話を聞いた。
伊藤止めさんによると、これは92歳で亡くなった祖父の火葬直前の出来事。90歳近くまで実家の工場で働き続けていた祖父は、新聞や雑誌をはじめ、あらゆる読み物で知識を蓄えるのが大好きな人だったという。
――この度は御愁傷様でございました。ところで、なぜ文藝春秋を棺に?
「亡くなる直前まで読んでいたのがあの文藝春秋だったので、『天国で続きが気になるだろう』と思い、棺に入れることになりました」
――数独を解かなきゃ!となった経緯について教えてください。
「実は祖父が数独を覚えたのは、本当に最近なんです。写真に手が写っている私の弟が教えたのですが、どうにも祖父は数字パズルが苦手なようで、途中であきらめることもしばしばでした」
「生前、残りの空白を私たち兄弟が埋めると大層喜んでいたのを思い出し、天国では手伝ってあげられないので、せめてものエールにと答えを考えました。言い出したのは私です。『おい、爺ちゃんに答えの紙つくるぞ』と呼び掛けたところ、手にペンを持った弟たちがわらわらと集まり、黙々と解き始めました」
――居合わせたご親族の皆さんはどんな様子だったのでしょう。
「両親や親戚は、『がんばれがんばれ』と笑っていました。全てマスが埋まった瞬間は、兄弟皆で ふ―――…っと一息つき、万が一間違いがあってはいけないので数字被りの確認を始めました」
――投稿はたくさんの人に読まれ、文藝春秋の松井一晃編集長からも「パズルの回答、ぜひ『文藝春秋』編集部にお送りください」とリプライが来ていましたね。
「お爺さんは幸せな人生だったんだろうなあ、というお言葉をいただき、大変嬉しかったです。そうだったのならいいな、としみじみ思いました」
「答えの紙と文藝春秋は棺に入れて燃やしてしまいましたが、写真を撮っていたので、『祖父が解き切った』という体で雑誌に応募してみようかなと思います」
――もし天国から孫たちのこの“数独騒ぎ”を見ていたら、お祖父さまはどんな風に思ったでしょうね。
「大変な働き者だった祖父は何でも知っていて、会う度に難読漢字のクイズを出されたのは良い思い出です。私たち兄弟が仲良くしているのを見るといつも嬉しそうにしていたので、数独騒ぎの最中も、もし見ていたのならば愉快な気持ちで笑ってくれていたのではないかな、と思います」