ロース、肩ロース、肩、バラ、モモ、ヒレ……いずれも豚肉の部位として、その味の特徴はなんとなく理解しているものの、具体的に豚のどの部位を指し、どんな特徴があるのかを説明できる人は意外と少ないように思います。筆者もその1人で「当たり前のように各部位の豚肉を買い、口にしているけど、これ一体どこの肉なんだろう」とふと疑問に思いました。
そこで今回は、山口県萩市のブランド豚「萩むつみ豚」を生産し、加工から販売までの一貫経営を行っている「豚のことならなんでも来い!」の小野養豚の担当者に詳しく解説していただきました。
それぞれの部位の特徴と、小野養豚こだわりの各部位のカットとは!?
冒頭でも紹介した、分類される豚肉の部位は小野養豚で扱っている「萩むつみ豚」でも同様の分類がなされているそうです。さっそくそれぞれの部位、特徴を解説していただきました。
■ロース……豚の胸から腰にかけての部分にあたる位置の背中側の部位。淡紅色で外側は厚い脂肪で覆われています。この脂肪の部分が旨味の宝庫。ポークソテー、焼肉、トンカツ、しゃぶしゃぶと使いやすい部位です。
■肩ロース……豚の首から背中にかけての肩の部分の肉で赤身と脂肪が霜降り状になっている筋間脂肪がある部位を指します。赤身の中に程よいバランスで脂が広がり、濃厚な旨味と食感が味わえる部位です。下ごしらえは筋切りがポイント。
■肩……豚の首から肩にかけての部位で、運動量が多く筋肉質でしっかりとした歯ごたえが特徴。脂身がほどよく入っており、味が濃くしっかりとした旨味が楽しめます。煮ものや炒めもの料理など、毎日使えて便利な部位です。
■バラ……お腹の部分の肉のことを言います。安くて豚肉の脂の旨味が楽しめる部位。赤身と脂肪が交互に層に見えることから三枚肉とも呼ばれます。濃厚な赤身と上質な脂身は、煮込み料理でも柔らかくジューシーな味わいです。
■モモ……後ろ足のモモにあたる部位で、筋肉間に脂肪のほとんどない赤身が中心で、あっさりとした味わい。豚肉本来の味を楽しむことができます。
■ヒレ……どの豚の品種とも貴重な部位で、「萩むつみ豚」では約800gしか取れないもの。豚肉の中でも一番きめ細かく、脂肪がほとんどないため、あっさりヘルシーな味わい。油と相性が良く、ソテーやトンカツに最適です。
さらに小野養豚では、「萩むつみ豚」の各部位を食べ比べられるセットを販売していますが、最も美味しくいただけるようにそれぞれの部位を繊細にカットするなどしています。
担当者の方によれば、例えばロースを使ったしゃぶしゃぶ用肉は「温も冷でも脂の甘みをダイレクトに感じられるよう1.3ミリカット」にしてくれています。
また、バラの焼肉用は「厚さ4.5ミリで焼肉屋さんでいただくのと同じ味わいになるよう」にする一方、バラ炒め物用では「火入れの時間をできるだけかけないよう2.0ミリにカット」するなど、コンマ数ミリのカットの差別を図り販売しています。このこだわり、もちろんヒレも同様で「一口カツ用のカット」を施し、消費者にとって絶対に美味しく、そして料理しやすいよう工夫をしているとのこと。
臭みがなく、あっさりとした甘みを感じる「萩むつみ豚」の脂
「令和3年度6次産業化アワード」を受賞するだけあり良質の養豚そのものだけでなく、消費者の口に入るまでのことを配慮してくれている小野養豚。この「『萩むつみ豚』食べ比べセット<小>」が気になった筆者も注文し、それぞれの料理を作ってみることにしました。
ロースしゃぶしゃぶ用と、バラ炒め物用は勝手にアレンジし、それぞれアスパラに巻いたり、もやしと一緒に蒸したりしましたが、いずれの「萩むつみ豚」の部位もかなり品の良い味! 臭みがなく、柔らかく、それでいて噛むほどに奥深い味を楽しむことができました。特に印象的なのが脂身の甘みで、かなり贅沢な味でした。
「萩むつみ豚」のそれぞれの部位をこれだけの調理で楽しむことができ、合計1200gで3018円(税込)はかなりお値打ちだとも思いました。
環境・味・価格ともにパフォーマンスを実現し続ける「萩むつみ豚」
最後に、改めて小野養豚・担当者に、同場の変遷と、「萩むつみ豚」にかける思いを聞きました。
「私どもは山口・萩で養豚を始めて50年以上になります。1990年代に入り、パン屋さんからの製造ロスパンの提供をきっかけに、エコフィード(食品残さ等を利用した飼料)の取組を始めました。エコフィードの自己配合は小売価格にも響く飼料費の削減に繋がり、また、肉質はパン(小麦)の効果で、豚特有の臭みはなく脂はなめらかで甘みを持ち、サシも多く入るようになりました。
2018年に『萩むつみ豚資源循環クラスター協議会』を発足し、エコフィードによる循環型農業に市内外の10法人と協力し合いながら取り組み、2019年には「農林水産省生産局長賞」「中央畜産会長賞」を受賞しました。この循環型農業で生まれた様々なメリット(おいしい)を各法人・地域・消費者のみなさんと仲むつまじく分かち合えることが生産の喜びとなっています。
また、持続可能な養豚業を目指すには、価格設定を自社で行うことが重要と考え、私どもでは生産(1次)だけではなく、加工(2次)、販売(3次)までの一貫経営に努めてきました。加工・販売では昨年『萩むつみ豚』を手軽に食べていただけるよう『萩むつみ豚まん』を発売しました。加工と販売の新たなるチャレンジでしたが、発売1週間で初回生産分が完売となり、また、お肉と合わせてのお取り寄せや贈り物としてもご好評いただきました。
今年は農林水産省の『令和3年度6次産業アワード』の大臣官房長賞も受賞し、持続可能な養豚業を目指し、より一層の努力をしていきたいと思っています。
環境にもやさしく、どの部位も美味しい『萩むつみ豚』、ぜひ一度ご賞味いただければ幸いです」(小野養豚・担当者)
小野養豚の協力で、豚肉の部位の秘密がわかった上、ブランド豚「萩むつみ豚」も美味しくいただくことができました。いろいろと知識を得てから、その味をいただくとまた違った楽しみができます。ぜひ本記事を参考に「萩むつみ豚」の三方ヨシの味、お試しされてみてはいかがでしょうか。