初めて宇宙に行った猫「フェリセット」を知っていますか 忘れられた悲劇的な最期と、知られざる功績

新田 浩之 新田 浩之

現在も宇宙飛行士や民間人が宇宙に行くとニュースにはなりますが、以前と比較すると注目度は下がったように感じます。つまり、人間にとって宇宙は身近なものになりつつあると考えられます。人間と宇宙の間にはさまざまなドラマが生まれましたが、そこで忘れてはならないのが宇宙に行った動物です。

宇宙に初めて行った猫は?

「宇宙は人間、生物にどのような影響を与えるのか」この問いに答えるために、多くの動植物が宇宙へ飛び立ちました。1957(昭和32)年、ソビエト連邦は犬「ライカ」を宇宙へと送り出し、見事に周回軌道上を飛行。現在では「初めて宇宙旅行をした動物」として知られています。

一方、宇宙に初めて行った猫はフランスのメス猫「フェリセット」です。彼女が宇宙旅行をしたのは「ライカ」から6年後の1963(昭和38)年のこと。フランスの観測ロケットに乗せられ宇宙に到達し、無事に帰還を果たしました。

もともと「フェリセット」はパリに住む野良猫だったようです。ひょんなことでフランス政府により「フェリセット」も含めて14匹の猫が宇宙飛行士の候補生となりました。その後は耐G訓練や神経の働きを調査するために電極を頭に付けさせるなど、過酷なトレーニングをこなしました。

その結果、「フェリセット」が宇宙へ飛び立つ猫として選出されることに。選出された理由としては彼女の落ち着いた性格、他の13匹の体重が重かったといった点が挙げられています。

1963年10月18日、「フェリセット」は観測ロケットに乗せられ、アルジェリアのロケット発射場から宇宙へと旅立ちました。彼女は弾道飛行を体験し、13分間の飛行で高度157kmに達しました。その後、パラシュートにより無事に地球に帰還。「フェリセット」は正真正銘の「宇宙に初めて行った猫」となりました。

しかし「フェリセット」には過酷な運命が待ち受けていました。地球へ帰還した約3カ月後に、脳の解剖調査をするために、彼女は安楽死させられました。無事にミッションは果たしたとはいえ、あまりにも悲劇的な最期。このような犠牲の上に今日の宇宙探求があることを忘れてはなりません。

2019年に実現したクラウドファンディング構想

現在では「フェリセット」がフランスの宇宙開発に大きな貢献を果たしたことは誰もが認めるところです。しかし、長年にわたりフランス社会では彼女の功績が十分に知られていませんでした。

ロンドンに住むマシューさんはクラウドファンディングにより「フェリセット」の銅像の建設を決断しました。マシューさんは職場で「フェリセット」の宇宙到達50周年記念タオルを見かけ、そこから彼女の数奇な運命に興味を持ちました。

クラウドファンディングは無事に成功し、2019年にストラスブールに銅像が建設されました。しかも初めて宇宙に行った人、ユーリー・ガガーリン像の近くです。銅像の建設により「フェリセット」の功績はこれからも人々に伝えられることでしょう。

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▽フランス・国立視聴覚研究所が所有するドキュメンタリー
「最初の宇宙飛行士猫、フェリセット(Félicette, la 1ère chatte astronaute)」
https://www.ina.fr/ina-eclaire-actu/video/caf93019883/felicette-la-1ere-chatte-astronaute

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