国際恋愛を装って現金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」による被害が後を絶たない。スマホがあれば、会員制交流サイト(SNS)で遠く離れた人と交流できるようになったことが要因のひとつだ。手口もより巧妙化し、すぐには「詐欺」と気付きにくいケースもある。かつて歌手デビューも果たし、アイドルから弁護士に転身した平松まゆき氏にQ&A方式で解説してもらった。
Q 最近、新手の国際ロマンス詐欺が横行していると聞きました。どんなものでしょうか。
A 全国で被害が急増しているようで、短期間で私のところにも複数のご相談がありました。主な内容は次のとおりです。
大手婚活アプリで男性(または女性。外国人を名乗る場合が多い)と知り合い、LINEを交換する。徐々に仲良くなるにつれ、FX取引や仮想通貨運用を勧めてくる。そして、その人物が指定するURLやアプリに誘導されるが、いずれも実在するFX会社・仮想通貨取引運用会社であることが多い。実際に投資すると、すぐに「利益が出た」として、投資額に1~2万円を加えたお金が、本人の銀行口座に振り込まれてくる。実際、投資サイト上でも金額がどんどん増えていく。そして「もっと投資金額が高いと利益も高くなる」と言って追加投資をさせられる。ところがそこからは連絡が取れなくなるか、連絡はついたとしても、「出金には多額の税金がかかる。」と言って、追加で税金の納付を求めてくる・・・。といったものです。
Q でも実在するFX会社なら、その会社から被害金を取り戻せないでしょうか。
A そこなんですが、誘導されたURLからではなく、実際に検索エンジンからFX会社のホームページを見ると、誘導されたサイトが偽物だったと分かります。いかにもそれらしいつくりのウェブサイトですが、実在するFX会社のウェブサイトとは異なります。
Q 実在するFX会社名をかたった偽サイトというわけですね?
A そのとおりです。ですから、実在するFX会社から被害金を取り戻すことはできません。実際、実在するFX会社も「弊社の偽サイトに誘導されないように」との注意喚起を促しています。ただ、FX取引が初めての方には、そのサイトが本物か偽物かは区別できないでしょう。
Q ほかにはどのような特徴がありますか?
A かつて横行していたロマンス詐欺は「事業に失敗して急にお金が必要になった。」「家族が病気だが手術代が出せない。」といったお涙ちょうだい系のものが多く見受けられました。しかし、昨今のものは、多くの場合、その人物は羽振りが良く、お金に困っている様子はない、という点に特徴があります。コロナ禍で誰しも財布の紐を締め用心している中、リッチで余裕のある相手と恋愛しているという夢を見てしまうのかもしれません。
Q 実際にはどのような会話が交わされるのでしょうか?
A FX取引に導くまで、とにかく甘い言葉で時間をかけて相手を信用させます。外国人だから(と見せかけて)、ストレートに愛情表現するところにも惹かれるのでしょう。そしてとにかくマメ。被害者が交換したLINEのやり取りを全て読みましたが、2人は本当に恋愛していたんじゃないかと思ってしまうほど、連日連夜、トークを重ねていました。
Q 被害に気付いたらどうしたらいいですか?
A 国際ロマンス詐欺に限らずですが、詐欺犯は口座から口座へ、次々に被害金額を移転させていきます。そのため一刻も早い捜査や口座凍結等の被害回復対応が必要です。詐欺に遭った場合は、速やかに警察や弁護士、最寄の消費生活センター、に相談してください。