メガネの聖地で「レンズ付き2本5000円」は本当か? 東京から片道5時間半、真相を確かめるため福井へ

松田 義人 松田 義人

 

福井県鯖江市。国内で流通するメガネの95%以上がこの地で作られていると言われ、言うまでもなくメガネの聖地と呼ぶに相応しい地域です。ここ鯖江に、「休日前の22〜24時の約2時間のみの営業(時期によって定休または追加営業することがある)」「店舗はコンテナ」「レンズ付きで2本=5000円から作ることができる」というかなり個性的なメガネ店があるという情報を聞きつけました。

営業時間、店舗形態はさておき、「レンズ付きで2本=5000円から」とはいわゆるJINSやZoffといった格安メガネ店よりも安く、しかも地元・鯖江製のメガネなのだとすれば、かなりお得です。

東京から片道5時間半。鯖江までメガネを作りに行ってみた!

もしかして「日本一安く、そしてクオリティの高いメガネを販売する」お店なのではないか……そう考えた筆者はいても立ってもいられなくなり、雪がしんしんと降るなか、東京から北陸新幹線で金沢まで3時間、レンタカーを借り金沢から雪の降る北陸自動車を走り2時間半、合計約5時間半かけて福井県鯖江市のこのお店へと向かいました。お店の様子を確認しつつ、実際にメガネをオーダーすることにしました。

このメガネ店の名は「SABAE・OPTアウトレット」。メガネの聖地・鯖江で、メガネの小売を行う「SABAE・OPT」というお店のアウトレットショップなのだそうです。通常の「SABAE・OPT」での営業を終えた後に、「SABAE・OPTアウトレット」を開店させるため、「休日前の22〜24時の約2時間のみの営業」という限られた営業形態になっているそうです。

一方、アウトレットと言えど、扱われているメガネはいずれも鯖江製。この「SABAE・OPTアウトレット」では検眼などは行わないものの、手持ちのメガネを持参すれば、その場で度数を測ってくれ、購入したフレームに対し同じ度数のレンズをその場で入れてくれるとのこと。フレーム購入後、度数付きレンズを入れてもらうには、混み具合にもよるものの、1〜3時間ほどで終えるほか、仮にレンズの在庫がない場合は、後日郵送(有料)で送ってくれるとも。

いたれり尽せりの「SABAE・OPTアウトレット」、その存在を知ってから筆者は行くタイミングを探っており、やっと行くことができたのが1月上旬。コンテナのお店に入ると、確かにズラリとメガネが並んでおり、各フレームには赤・ピンク・黄色・青・緑といったシールが貼られています。このシールによって価格の差別化を行っているわけですが、いずれもレンズ込みのお値段には変わりません。東京のメガネ小売店では、ブランド化され販売されていることもある「鯖江のメガネ」が、「レンズ付きで2本=5000円から」で購入できると考えれば、複数本のメガネを作ることで仮に交通費を使ってもはるかに元を取れる計算になります。

 

 

6本でレンズ付き19000円(+税)で「鯖江のメガネ」を作ることができた!

ただし、しつこいようですが、「SABAE・OPTアウトレット」の営業時間は約2時間。この無数のメガネフレームから自分の顔に合うものをできるだけ早く選ぶ必要があります。そこで筆者が選んだのは6本。老眼用・パソコン用・普段使い用にそれぞれ2本ずつのフレームを選びました。

 

 

合計で19000円(+税)。いずれも、いかにも安そうな諸外国製のそれではなく、きちんとした鯖江製のメガネです。一般的なメガネ店ではフレーム自体が数万円し、さらにレンズ費用もかかることを考えれば「SABAE・OPTアウトレット」のメガネがかなりの破格値であることがわかっていただけましょう。

この日、筆者に合うメガネレンズの在庫が一部なかったこともあり、数本分は後日郵送していただきましたが、それも数日で届きました。スピーディかつ丁寧な対応と加えて、普通のメガネ屋さんではあり得ない、超画期的なお店だと思いました。

地元メガネメーカーが抱える「廃棄問題」を解消すべく立ち上がった「OPT アウトレット」

どうしてこの値段、サービスが実現できるのか。「SABAE・OPTアウトレット」」および「SABAE・OPT」の代表・荒谷直嗣さんに聞いてみました。

 

「メガネは工業製品でもあるわけで、地元のメガネメーカーではたとえば100個の注文が入った場合、100個キッカリ作るわけではなくて、不良品が出た際の対策で数パーセント多めに作ることがあります。著しい不良品でなくても、ほんの少し『スレた傷がある』とかでも返品されるのがメガネの特性で、こういう経緯で返品されたメガネをメーカーはその都度廃棄処分していました。一時期、大きいメガネメーカーだと『月の廃棄処分量が2万本』みたいなこともあったそうです。

また、例えばメガネメーカーがあるブランドに『メガネ製品』をプレゼンする際には、同じフレームで何色も作ることがあります。そこで採用された色以外のものはやはり処分対象となります。ブランドでは数万円で売られるフレームも、採用されなかった色違いは廃棄処分になる……こういったことは地元のメガネメーカーではよくあることです。

私はこういった現状を『なんとかできないか』と考えるようになりました。そこで、こういった廃棄処分となるはずだったメガネを格安で販売する『SABAE・OPT アウトレット』を10数年前に始めました。始めた当初は在庫保管用の建物でやっていましたが、後に建築屋さんの友人に頼み安い予算でコンテナでお店を作り、そのコンテナを置く場所もやはり友人の会社の敷地に安く置かせてもらうようにしました。

お店としてやっているつもりはなく、『とにかく安くメガネを作ってあげたい』という思いでやっているため、本業のお店が終わった時間、週に一度だけ『SABAE・OPT アウトレット』のほうをやるようにしています。ですので、一般的なメガネ屋さんと同じサービスはできないことだけはご理解いただきたいです」(荒谷さん)

その安さから筆者と同じように県外から「SABAE・OPT アウトレット」までメガネを買い求めに来る客も多いそうですが、この点にもまた荒谷さんは複雑な思いがあるようです。

「『SABAE・OPT アウトレット』では営業時間の前から県外から来てくださったお客さんが待っていてくださったりして、本当にありがたい限りです。ただし、ちょっと複雑に思うところもあります。

メガネは生活用品であり、医療用具です。この点で言うと、本来は生活圏内のメガネ屋さんで買うのが基本で、地元以外のところで買うのはタブーと言って良いと思います。自動車や自転車を、普段行けないようなところで買って壊れたりしたら大変なことになりますよね。それと同じで、メガネもご自身の生活圏内で購入し、何かの際にはすぐに見てもらえないといけないと考えているからです。

また、『SABAE・OPT アウトレット』ではお手持ちのレンズに合わせたものを測って、同じものを新しいフレームにもお入れしていますが、これも厳密に言うと良くないんです。メガネというものは、フレームの形状によって見え方が微妙に異なってくるからです。

そういった点から言うと、『SABAE・OPT アウトレット』では必ず満足いただけるメガネをご提供できているわけではありません。この点、特に遠方からお越しいただく方にはどうかご理解いただきたいと思っています。その上で、福井界隈においでの際は、是非お立ち寄りいただければ嬉しいです」(荒谷さん)

 

「あくまでもアウトレットであり、一般的なメガネ屋さんのサービスはできないことを理解してほしい」という荒谷さんの思いから、かえって誠実な思いが伝わってきました。この「SABAE・OPT アウトレット」、おそらく日本一お得なメガネ屋さんであろうと思いますが、今回ご紹介した荒谷さんのお話を十分理解して利用するようにしてください。営業日・時間などの最新情報は下記サイトの事前チェックも忘れずに!

SABAE・OPT アウトレット https://sabaeoptoutlet.com/

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