母親から「甘えている」と責められ悔し涙 強烈な死への恐怖がきっかけになった「パニック障害」

長岡 杏果 長岡 杏果

パニック障害という病気をご存知ですか?現在パニック障害の患者さんが100人に1〜2人の割合で存在するといわれています。芸能界でもパニック障害だと公表している人がたくさんおり、決して珍しい病気ではありません。パニック障害とは、突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作(パニック発作)を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をいいます。パニック障害を発症したYさん(関西在住・40代)にお話を伺いました。

一度は発症から2年くらいで寛解したが…

私は15年前にパニック障害を発症し、いまも寛解、再発を繰り返しています。

15年前に体調不良で救急搬送され、集中治療室に入院したことがありました。

当時お医者さんが旦那に「今日を越えられるかわかりません」と話していました。お医者さんは聞こえないと思ったかもしれませんが、私にもはっきりと聞こえていて、まるで「死の宣告」のように思えました。怖くて「死にたくない、死にたくない」と必死で言っていたことを覚えています。この恐怖体験こそがパニック障害発症の原因となりました。

死への恐怖があまりにも強烈で退院後は、激しい動悸や得体の知れない恐怖に襲われるようになりました。電車の中で突然激しい動悸に襲われてから怖くて外出ができなくなり家に引きこもるようになりました。 

それから1年くらい経って家族や友人と外出する練習をしたり、カイロプラクティックに毎週通院するようになり徐々に症状や恐怖感は改善していきました。発症から2年くらいで寛解し、諦めていた海外旅行にも行けるようになりました。海外旅行が趣味だったので、再び中近東や東南アジアなどに行けるようになったときは本当にうれしかったです。

友人をなくしたことで再発、そしてこの前の夏も…

5年ほど前に大切な友人を事故で亡くしました。大好きだった友人が亡くなった悲しみはとても大きく、一緒に過ごした思い出がよみがえり、会いたくても会えないという現実を受け止められませんでした。そのショックから私は自宅で倒れてしまい、救急搬送されました。もう友人には会えないんだと思うと毎日涙が溢れ、寛解していたパニック発作が再発してしまいました。

毎日、激しい動悸や過呼吸に襲われ、睡眠時パニック発作や頻脈で眠れない日々が続きました。子どもを連れて電車で出かけた際も何度か発作が起き、そのたびに死んでしまうような恐怖を感じていました。発作が起こるたびに慌てて電車を降りるので、子どもにもたくさん心配をかけました。このときもパニック発作がよくなるまでに2年ほどかかりました。

そして、この前の夏、子どもたちとプールに行った帰りに熱中症で道端に倒れてしまい、手足がしびれ自力で起き上がることができなくなりました。一緒にいた友達が救急車を呼んでくれ、近くの病院に搬送されそのまま入院しました。

そのときパニック発作のきっかけとなった死の宣告がよみがえり、再びこのまま死んでしまうのではないかと恐怖でいっぱいになりました。看護師さんに「死なないですか?大丈夫ですか?」と怖くて何度も聞きました。看護師さんはずっと大丈夫、大丈夫と声をかけ続けてくれました。

退院後も倒れた恐怖や救急搬送されたトラウマから毎晩1時間起きくらいにパニック発作が起こるようになりました。頻脈、息苦しさによる過呼吸発作、口から心臓が飛び出そうなほどの激しい動悸、全身のしびれや震えがおさまらず、パニック発作が起こるたびに死の恐怖に支配されてしまいます。

最近は専門医のいる病院に通い、私の場合は薬物を使わない森田療法を受けたり、歩行訓練や自律訓練を受けたりするようになり、少しずつ家族と近所のスーパーや外食に行けるようになりました。しかしまだ一人ではどこにも行くことはできません。友達には外で会えないので自宅に来てもらっています。

   ◇   ◇

「見た目が元気そうなので、怠けてると映るのかも」

Yさんに「パニック障害になってつらかったことはありますか?」と聞くと、「いままで当たり前にできていたことができなくなってしまったことが、本当につらいです」との答えが。「当たり前に一人で外出して、当たり前に友達と外食して、当たり前に旅行ができていたのに全てできなくなってしまって…また外で発作が起きるんじゃないかと思うだけですごく怖いです」

なお、子どもの学校行事にも行けなくなったことで、「私の母から『パニック障害は甘えだ、母親ならしっかりしなさい、馬鹿なこと言ってんじゃないよ』と責められ悔しくて悲しくて一人で泣いたこともありました」とのこと。Yさんは「見た目が元気そうなので、病気を知らない人には怠けてると映るのかもしれません」と語ります。

パニック障害の発作は、つらさ・不安が理解されにくいものだと言われています。周りにいる家族や友人たちは、パニック障害がどういうものかを知ることで、患者さんの不安が理解しやすくなるかもしれません。一方、パニック障害の患者さんは、発作では死なないとわかっていても、発作が起こると強い不安に襲われてしまいます。そばにいる人が「大丈夫」と優しく声をかけて背中をさするなどすること、不安を少しでも軽くするように、手をさしのべて和らげてあげましょう。

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