鈴木亮平が、天海祐希扮する強い女ガンマンに「翻弄されたい」と楽しそうに話す舞台「COCOON PRODUCTION 2022『広島ジャンゴ 2022』」が、4月~5月に東京と大阪で上演される。
広島の牡蠣工場から、突然西部劇の世界へと変化する異色のエンタテインメント作品で、天海は工場のパートタイマーの山本と、西部の町「ヒロシマ」の凄腕ガンマン・ジャンゴ役を。鈴木は周囲に合わせようとしない山本に手を焼く工場のシフト担当・木村と、ジャンゴの愛馬ディカプリオを演じる。
これまでも20kg減量して作品に臨むなど様々な役を演じてきた鈴木とあって、初の「馬」役にも、「馬と思われているだけで実際は(中身は)木村という男」と驚きはない様子。それよりも歌がある設定に戸惑い、天海に相談すると「鈴木さんが歌うわけではなく、役の人物が歌うので、気持ちが伝わればいいよ!」とアドバイスをもらったという。
「鈴木(亮平)さんは何でもできるので大丈夫! かたわらにいつも『木村ディカプリオ』がいてくれるので私は安心」と笑顔を見せるのは天海。二人の共演は映画『カイジ 人生逆転ゲーム』以来13年ぶりで、天海は「人間としても役者さんとしても、体形的にもすごくスケールの大きな方で、頼りにしています!」と大きな信頼を寄せる。
「私が演じるのは山本というシングルマザーの女性で、西部劇の世界にいくとお尋ね者の凄腕ガンマン、ジャンゴになっている。どちらもわりと寡黙な女性で、自分の状況や気持ちを話さない。それも後々理由がわかるのですが…。牡蠣工場と西部劇、ひっくるめて一人の人間を表現できるのがとても面白いです」(天海)
かなり奇想天外な物語にも見えるが、数々の演劇賞を受賞してきた蓬莱竜太の作・演出とあって、現代に通じる不条理をあぶり出す深い作品。2017年に蓬莱と広島の演劇人とで創り上げた舞台が、今回脚本をリニューアル、演出・美術・音楽を一新して届けられる。
これまで蓬莱作品を何作か観劇し、いつか出演したいと望んでいた天海。「ちょっとした幸せや安らぎ、鋭い何かで切られるような思いも感じつつ、最後にはどこかに希望がある。そんな蓬莱さんの世界観の一員になれるのがすごく楽しみです」と、期待を膨らませている。
鈴木は2019年に蓬莱作品『渦が森団地の眠れない子たち』に出演し、藤原竜也とのダブル主演で小学生役を演じたことも。2021年公開の映画『孤狼の血 LEVEL2』のように、アグレッシブな役や歴史上のヒーローなどを数多く演じてきた彼にとって、「蓬莱さんが気弱で普通の、色のない役を与えて下さるのがすごくうれしい」という。「自分も人間なので、弱い面、繊細だなと思うところもあるので(笑)、今回のような役はやりがいがあるし、燃えます」と微笑む。
2年以上続くコロナ禍で、ライブエンタテインメントの貴重さをかみしめている二人。天海は「数カ月、人と直に触れ合えないステイホームの期間が(2年前に)ありましたよね。生で会えることって当たり前じゃないんだと思いましたし、みんなと同じ空間でひとつのものを観て笑い、感動し泣けることの幸せ、貴重さを、今ひしひしと感じます。色々なことを経て劇場に足を運んで下さるお客様の前で、『今日ここで人生が終わっても構わない』ぐらいの熱量をもって演じることができる、それが可能な環境がとてもありがたく、幸せに思います」と、しみじみと言葉を重ねた。
鈴木は取材前日にも舞台を観に行ったと言い、「終わった後に拍手をして、『良かったね!』と知らない人とその場で共有できるのは舞台ならでは。どんどんエンタメが『今』でなくても観られるようになり、テレビも見逃し視聴ができるなか、会場に行かないと体験できない、しかも一回限りというライブのエンタメは貴重で、その魅力が際立つ時代になっていると思います」と、力強く語る。
コロナ禍での様々な想いが溢れ出す天海と鈴木。「観に来て下さる方もやる側も出来うる限りの対策をして、ひとつの作品をみんなで完成させましょう、という気持ちが高まっている気がします。ぜひ最後まで完走させなければ」という天海の言葉が、心に深く響いた。
『広島ジャンゴ 2022』は、他に野村周平、中村ゆり、宮下今日子、池津祥子、藤井隆、仲村トオルらが出演。2022年4月5日(火)~30日(土)に「Bunkamuraシアターコクーン」にて、5月6日(金)~16日(月)に「森ノ宮ピロティホール」にて上演される。チケットは東京公演が2月20日(日)から、大阪公演が4月3日(日)から発売開始。