宝塚退団後は芸能界から足を“洗い”、皿“洗い”から始めようと真剣に考えていた。そんな人が気づいたら芸能生活20周年を超えているのだから、人生とはわからないものだ。元宝塚歌劇団宙組トップスターで女優の凰稀かなめ(39)が今だからこそ明かす、宝塚退団直後の心境と超インドアな素顔。
2000年に宝塚歌劇団86期生として入団し、2012年に宙組6代目トップスターに就任。退団する2015年まで男役として駆け抜けた。凰稀は「宝塚は大好きでしたが、自分の中でやり切ったという気持ちしかなくて。退団への悔いや芸能界への未練はありませんでした」と完全燃焼を自負し、退団後は芸能界引退を真剣に考えていたという。
「周囲から驚かれるくらいのインドアな性格もあって、しばらくは家に籠ろうかと本気で思っていました。15歳で宝塚音楽学校に入学しているので、アルバイト経験もゼロ。ほとぼりが冷めたら、知り合いの方が経営する飲食店でお皿洗いのアルバイトから社会人経験をスタートさせるつもりでいました」と打ち明ける。
その「知り合いの方」というのが、凰稀が退団後から所属することになる芸能事務所の女性社長。芸能界引退の意向を打ち明けた際に「もったいない!続けなきゃダメよ!」と引き留めてくれた恩人でもある。
宝塚時代、凰稀はトップスターとして煌びやかな舞台でスポットライトを浴びていた。さすがに「インドア」発言は謙遜かと思いきや「ひたすら同じことを黙々とこなす作業が好きで、細かい手作業も性に合う。最近のブームは食品サンプルキットを組み立てること。今はカレーとパフェの食品サンプル作りに夢中です。お皿洗いも好きで、お箸をまとめて洗う時のシャカシャカする音は耳障りも手触りも素晴らしく、ずっとやっていられる」。本当だった。
トップ現役時代は「煌びやかな場所は向いていない」という自己否定も多かったというが、不思議なことに演じている最中は居心地の良さを感じてもいたという。「上手くはないけれどお芝居は昔から好き。もしかしたら現実逃避に近いのかもしれません。役柄を演じている方が、普段のインドアで消極的な自分よりも楽というか。気づいたら20年超、昨年から映像のお仕事も増えて、ありがたいという言葉しかありません」と凰稀自身も芸歴20年超という継続に驚いている。
演技への愛着と同様に変わらないのは、宝塚時代から自分を支えてくれているファンへの思いだ。SNSもその一つ。「SNSは苦手ではありますが、ファンの方々に対する私の生存確認のためにやっています。宝塚時代はファンクラブもあるし、ある程度行動範囲も決まっているので会おうと思えば会える状態でした。でも宝塚を辞めたら連絡手段がまったくなくなります。それでなくても私は超インドア派なので、SNSを通じて『私、生きています!』という報告を発信するイメージ」と照れながらも教えてくれた。
昨年は映画『マスカレード・ナイト』やテレビ朝日系ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』など映像作品への出演も増えた。1月20日からスタートするサウンドアトラクションVoi Cine Walk『よろずや探偵BOSS 〜K夫人の謎〜』ではスナックのママ・友里恵を演じる。
凰稀は「体験者の方に語り掛けるような演出なので、撮影ではずっとカメラに向かって演技するという、ちょっとシュールな体験をさせていただきました。映像経験も多くはないので、どうしたらいいものかと悩みましたが、表情を工夫したりして体験者の方々の反応を想像しながら演じさせていただきました。ぜひご体験ください」とアピールしている。