12月中旬、Twitterに「10代女子のやさしいババ活」と題された認知症の高齢女性とそのお孫さんが繰り広げる心温まるエピソードが投稿され、注目を集めた。投稿した「しろたぬ@歯の人」(@shirotanu_dds)さんは、高齢者の治療を専門にする歯科医で、患者さんの自宅や施設で治療する「訪問歯科」に取り組んでいるという。患者さん宅で実際に目撃したこの出来事について、ご本人に聞いた。
大きな反響を呼んだツイートの内容は……
「同居する認知症のお婆さんから1日に何度もお小遣いを受けとる10代のお孫さん。毎回500円。何買うの?ときくと『使わないよ。バイトしてるし。内緒でお財布に戻してるの。婆ちゃん私にお金あげると喜ぶんだ』…素敵すぎる」
…というもの。
この投稿には「素晴らしいお孫さんだ!」「いい子すぎる」「泣いた」という声のほか、「自分も似たような経験をした」「祖母を思い出しました」などの体験談も寄せられ、温かな共感が広がった。
――この出来事のもう少し詳しい状況を教えてください。
「私は高齢者の治療を専門にする歯医者で、患者さんの自宅や施設で治療する訪問歯科と呼ばれる往診の仕事をしています」
「今回は患者さんの自宅で、歯の治療をしていました。そのとき、廊下をお孫さんが通ったのを患者さんが目にしました。そこで患者さんが〇〇ちゃんおいでー、と呼んで500円をあげたのです。治療が終わり、部屋の外に出たときにそのお孫さんからお礼を言われたので、『何に使うの?』と聞いたやりとりを紹介した次第です」
――お孫さんは普段どんな人なのでしょうか。
「お孫さんはじめ、そこのご家族の認知症のお婆さんへの対応はステキすぎて、ほっこりします。在宅介護は本当に大変(経験談)なので、いつも癒されています」
しろたぬさんはこの投稿に「(ババ活が)パパ活に見えた人は邪悪な自分をぶっ叩いて下さい」と冗談めかして添えた上で、続けてこうツイートしている。
「日本の高齢者は3,500万人を越え、介護の必要な方は600万人います」
「経験上、自宅での介護は想像以上に壮絶で、お金と精神が追い込まれます。少しでも関心と危機感が広まると嬉しいです。普段は歯科医として、医療情報と介護の経験談を呟いています。介護は遠い世界の出来事のようで、突然やってきます」
――ご自身も在宅介護の大変さをお祖母さんで経験されたそうですが、日々訪問歯科に取り組んでいるお立場から、あらためて伝えたいことはありますか?
「これからの超高齢社会では、誰しもが介護に関わる可能性があるということです。加えて、歯科医としては『認知症と診断されたらまず歯を治療する』という考え方ももっと広まってほしいと思います。歯がボロボロのグラグラで、出血や口臭がひどくても、すごく暴れて触ることすら難しい患者さんをたくさん診てきましたので。早いうちなら“来たるべき将来”に向けた精度の高い治療を施すことが十分可能です」
しろたぬさんはTwitterやブログを中心に、訪問歯科の現場で得た貴重な知見を頻繁に発信しているので、興味のある人はチェックしてみては。
◼️しろたぬさんのブログ「しろたぬの部屋」
https://haitter.hatenablog.com/