衆院選が終わりました。
結果についていろいろなことが言われますが、数字・データを基に分析し、「今回の衆院選から、どういった民意を読み取ることができるか」「結果を受け、それぞれの政党が、今後考えていくべき課題は何か」等を、考察してみたいと思います。
目次
#1 自民は本当に“勝利した“といえる?
#2 立憲の低調は、「野党共闘」のせい?
#3 維新“躍進”の理由と今後
#4 「大物議員落選」を考える
#5 国民が政治に求めるもの、政治がなすべきこと
自民は本当に“勝利した“といえる?
今回の衆院選結果について、当初予想されたよりも自民の議席の減少が少なく(15減)、単独で絶対安定多数(261議席)を獲得したこともあり、「勝利」と評されることがありますが、私はそう単純ではないと考えています。
確かに、獲得議席数や得票率(※)を見ると“勝った”わけなのですが、「これまでの自公の政権運営や政策が評価され、国民から強固で積極的な信頼を得た」というよりも、「今の政権に不満もあるが、かといって、自公に替わる受け皿もないし・・」という消極的な支持も多かったと思います。新型コロナ対策や、長年停滞している経済、緊迫する安全保障環境、といった山積する課題への国民の不信を、きちんと感じ、汲み取った上で、実効性のある国の舵取りをしていくことが求められると思います。
(※)今回の自民党の小選挙区候補の得票総数は2781万票余りで、前回2017年よりも約110万票増加した。絶対得票率(投票を棄権した人も含めた有権者全体のうち、その党の候補に投票した割合)は、前回比1.2%増の26.4%で、過去3回のいずれの衆院選も上回っている。(毎日新聞、11月2日)
そして選挙は、「勝ち方」も重要です。
同じ「衆議院議員」であっても、①小選挙区で勝つか、それとも、②小選挙区で負けて、比例で復活するか、というのは、実は、議員本人にとっても、選挙区や党での位置付けや扱いについても、極めて大きな差があります。(①小選挙区で勝った議員、②小選挙区で負けて、比例復活した議員、③比例単独(選挙区を持たない)議員、という順番です。)
その意味では、今回自民は、小選挙区での獲得議席を減らし(21↓)、小選挙区で勝利したところでも、野党との差が僅差のケースが増えており(※)、野党共闘の効果が見られます。ただ自民は、政党への支持が他党よりも大幅に高く、多くの候補者が比例復活したため、結果として、トータルでは議席の減少が抑えられた、ということになります。
(※)今回、小選挙区で自民候補が勝利し、次点候補の惜敗率が90%以上の選挙区は、189のうち34選挙区(18%)。前回2017年の衆院選は29選挙区(13%)、2014年は19選挙区(9%)。(日本経済新聞、11月3日)
実際、「今回の選挙戦はとても厳しい」という声は方々から聞こえましたし、小選挙区での辛勝・競り負けや、ベテラン勢の落選等もあり、今回の結果を楽観的に捉えている人はほとんどいないのではないかと思います。