立憲の低調は、「野党共闘」のせい?
今回の野党共闘について、その是非は別として、「選挙戦略としてどうだったか」という点について考えると、
・小選挙区では一定の成果を上げたが、比例区ではプラスには作用しなかった。
・立憲が低調なのは、そもそもの政党への支持が低いためであって、野党共闘のせいにしていては、根本的な問題は解決できない。
といったことになるかと思います。
解散時と比較した場合、小選挙区では、立憲57(9↑)、共産1、れいわ0、社民1(それぞれ増減無し)。比例区では、立憲39(23↓)、共産9(2↓)、れいわ3(2↑)、社民0(増減無し)です。
小選挙区での野党候補者を一本化したから、小選挙区で自民は議席を減らし、立憲は増やしたわけです。自民の小選挙区における得票率は前回衆院選とほぼ同じなのに、議席占有率を10%も下げています(※)。
(※)今回自民は、全289小選挙区の65.4%(議席占有率)に当たる189議席を獲得し、相対得票率(有効投票数に占める当該政党の得票数の割合)は48.4%。前回2017年は、75.4%に当たる218議席を獲得し、得票率は48.2%。
確かに、連合会長の懸念のように、共産との共闘によって、立憲から離れた票もあると推察されます。議席を獲得するためだけに、主義主張の異なる党同士が連携することはおかしい、という疑問も有権者の中にあったと思います。
各党の政党支持率には、大きな差があり(※)、政党支持率の低調さから考えれば、特に比例で立憲の得票が伸びなかったのは、ある意味当然です。共闘云々の戦略のせいにするよりも、そもそもの政党自体への支持が低い、そして、無党派層からも十分取り込めなかった、ということについて真摯に考えるべきだと思います。
政策力や人格のしっかりした議員もちゃんとおられますが、あまり表に出ていないので、その辺りの党運営も課題だろうと思います。
(※)政党支持率 自民:38.6、立憲:8.0、公明:4.3、共産:2.9、維新:3.5、国民:0.8、れいわ:0.8、社民:0.7、N党:0.2、特に支持政党無し:31.4(NHK調査:10月22日〜24日)
2017年の衆院選では、小選挙区での希望の党の得票率が20.6%、立憲が8.8%で、獲得議席数は、ともに18議席でした。今の立憲は、基本的に2017年衆院選時の立憲と希望と無所属の議員から成り立っているわけですが、前回2017年の希望の得票分が、今回立憲に行かなかった、すなわち、当時希望を支持した人が、今の立憲を支持していない、ということがいえると思います。そして、その受け皿が今回は維新でした。
欧州各国を見ても、自由で民主的な国においては、二大政党制というのは、基本的に、中道右派と中道左派の間での政権交代として行われています。急進左派(のように見える場合)は、支持は広がりにくいでしょうし、また、短期間に政党が分裂や統合を繰り返せば、有権者は混乱し、信頼しようとは思いません。
国会論戦や記者会見で、舌鋒鋭く政権を非難する昔ながらのやり方は、今の若者には受けません。(だからといって、己の理念やポリシーを曲げておもねるべき、と言っているわけでもありませんが。)
有権者が知りたいのは、「では、あなた(の党)だったら、具体的にどうやって問題を解決するの?」という、地に足のついた実現可能な政策の提示、実行力と信頼性だと思います。
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国民は賢く冷静に見ています。与野党ともにですが、「『現金配る』と言っておけば、国民は喜んで、こっちに投票してくれるに違いない」といった薄っぺらい思惑は、容易に見透かされます。
それぞれの国の政治のレベルは、その国の民度を反映しているとも言われます。そして、国民は「お客様」ではなく、この国と社会をともに守り、良くしていく責任を持つ同志であると、私は思います。
政治は、真摯に国民の声を聞き、誠実にその負託に応える、そして、国民はともに未来に責任を負い協働して良い国づくりをしていく、めまぐるしく変わっていく社会の山積する課題に対応するには、そういったことが必要だと思います。
―次回は、維新躍進や大物議員落選などについて、考察してみたいと思います。