カラオケボックス店「ジャンボカラオケ広場(ジャンカラ)」を運営するTOAI(京都市中京区)が、「異質」な新ブランドを立ち上げた。その名も「ジャジャーンカラ」。「一歩足を踏み入れれば、そこは別世界。すべてが"SURPRISE!"な非日常空間」をテーマに、従来のカラオケ店と一線を画す店舗を順次展開するという。記念すべき1号店が10月1日、京都市左京区百万遍地区の京都大近くにオープンしたと知り、さっそく足を運んだ。
地図を頼りに向かうと、京大名物「立て看板」のような、派手な大看板がずらりと並ぶ建物を見つけた。足を止めて見上げると、無機質な灰色の建物に「安心サあビス」「充実POD」というネオンサインがけばけばしく光る。
建物は店名が表示されておらず、どこが入り口かもよく分からない。本当にここがうわさのカラオケ店なのか。怪しげな外観に不安になり始めたそのとき、店の前で待っていたTOAI事業戦略課の中田優作さん(25)が声を掛けてくれた。
中田さんは今春、京大を卒業して入社したばかり。学生時代、たまたま知り合ったTOAIの社長から「カラオケの体験価値を10倍、100倍に高める方法を自由に考えてほしい」と言われ、作りたいカラオケ店の企画書を見せたところ、「僕たちじゃ考えつかない」と社員としてスカウトされたという。4月に入社してすぐに企画担当者に抜てきされ、本格的にプロジェクトを始動した。型破りな発想を生かしつつ、細部を練り直して誕生したのが「ジャジャーンカラ京大BOX店」だ。
「ジャジャーンカラ京大BOX店」のコンセプトは「サイバーパンク」。200年後の架空都市「NEO―KYOTO(ネオキョウト)」を舞台に、人間の理解を超えるほどテクノロジーが発達した世界を表現した。
中田さんに案内され、店内に足を踏み入れると、そこはまさに異世界だった。「繁華街」をイメージしたという1階は、壁が店舗看板のようなデザインで埋めつくされ、電光掲示板に不思議な言語が流れる。予約情報を確認できるという設定の眼鏡「サイバーグラス」を身に付けた店員のほか、パネルに投影された犬や少女といったキャラクター「サイバー店員」もおり、細部まで近未来っぽさにこだわる。
階段を上がって2階へ移動すると、雰囲気ががらりと変わった。「ここはスラムです」と中田さん。廊下の壁に施した落書きや、薄汚れた風合いにしたドリンクスタンドの機械が、荒廃した空気を作り出す。
そして、3階は「超サイバー空間」。廊下の壁は格子模様で、レーザー光線のような青色のライトをところどころにあしらった。室内に光が入るよう、各部屋の扉からの採光も工夫したという。
14室ある「コンセプトルーム」もユニークだ。「京大王クイズルーム」は、タブレット端末や早押しボタンなどを完備し、テレビ番組さながらのクイズゲームを体験できる。現役大学生たちからアイデアを募った「熱烈!集会ルーム」は、学生運動家たちのアジトをモチーフに過激なイラストやメッセージを随所にちりばめた。ビールケースのステージやヘルメットもあり、拡声器で歌うこともできるという。
中田さんのおすすめは「一番サイバーな場所」という「サイバースペースルーム」。特殊な鏡を壁や天井、床に配し、空間が無限に広がっているかのような幻想的な雰囲気を味わえる。
もちろん、いずれのコンセプトルームもカラオケを楽しむことができる。10月1日のオープン以降、コンセプトルームは満室状態が続き、インターネット予約で埋まってしまう日も多いという。
取材に訪れた10月中旬も、高校生から大学生くらいとみられる若者たちが続々と来店していた。担当者は「店名を『京大前店』でなく『京大BOX店』としたのは、この店がサークルの部室のように『もうひとつの居場所』になってほしいと思ったから。新型コロナ禍でなかなか海外旅行に行けず、違う世界に飛び込む刺激が激減していますが、日常から切り離された熱狂空間に身を投じてしがらみを忘れて楽しんでほしいです」と熱く語る。
事前予約が可能なスマートフォンアプリや非対面型の無人受付精算機を導入しているほか、注文したフードメニューを客自身に取りにきてもらうための棚を設置するなど、新型コロナウイルス感染対策にも気を配っている。
営業時間は午前10時~翌午前5時。