何者かに壊されたレトロ自販機が奇跡の復活 「ウチなら直せる」名古屋の加工業者が無償協力

黒川 裕生 黒川 裕生

“レトロ自販機の聖地”で何者かにボタンを壊されたハンバーガーの自販機が、自動車の試作型などを手掛ける名古屋市のプラスチック加工会社「エッチアイ技研」によって見事に蘇った。「ニュースで映像を見て、『あれ?あの程度ならウチで直せるぞ』と思ったんですよ」と社長の原隆二さん。無償での修理を申し出、無事だったボタンを見本にしながら、経年劣化による色褪せまで忠実に再現してみせた。

被害に遭ったのは、神奈川県相模原市にある「中古タイヤ市場相模原店」。今年9月上旬、深夜に訪れた若いカップルの男性が、ハンバーガーの自販機のボタンを何度も叩いて破損させた。この一部始終は防犯カメラに記録されており、テレビの情報番組などでも流されたことで大きな反響を呼んだ。

35年ほど前に製造された機械ということもあり、元通りに直すのは難しいかと思われたが、この“事件”を知った原さんは「お役に立てると思う」と同店に連絡。そもそもこのエッチアイ技研、金型がもう存在しない昔の車の部品も作ることができるといい、この手の作業はお手のものなのだという。

幸い破損を免れたボタン1個を同店から取り寄せ、レーザー測定してCADデータを作成。経年劣化のせいでオリジナルの素材は不明だったが、「どうせなら最強のボタンを!」と強度のあるポリカーボネートを採用し、「ポリカ無垢の削り出し」で加工に臨んだ。

当然、仕上がりカラーは綺麗なクリアだが、何よりも大切な「レトロ感」を出すため、飴色に。耐久性が劣る着色ではなく、あえて染色にしたのがプロの密かなこだわりだ。

それにしても、なぜ無償でそこまでできるのか。50歳の原さんは「僕が子供の頃に親しんだ懐かしい自販機なんです。今もまだ稼働していたということに驚いて、ぜひ力になりたいと思いました」と語る。

壊れたボタンは3個のうち1個だったが、原さんは“予備”として3個作り、10月19日、同店に直接届けた。店の関係者は大喜びで、お礼に大量のハンバーガーとラムネを贈られたという。

今回の顛末はTwitterで公開され、称賛と喜びの声が殺到している。しかし原さんは「普段はニッチな仕事をしてるんで、たくさんの人に注目されてもあんまり関係ないかも」と苦笑。それでも「いつもお世話になっているお客さんが、ニュースとかで見て喜んでくれたらいいかな」と控えめに語った。

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