「子供と遊ぶ時間」が名バイプレイヤー・津田寛治(56)を癒す憩いの時間だという。大学2年生の長男は寮生活で親元を離れており、もっぱら中学2年生の長女が今の遊び相手。津田は映画にドラマに引っ張りだこで、10月8日には第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニングを飾った主演映画『ONODA 一万夜を越えて』が公開される。俳優としてもパパとしても順風満帆に見えるのだが、当の津田の自己評価は「ダメなパパ」と意外なことに辛口。その真意とは?
中学2年生の長女は津田の仕事に理解があるというか、興味津々のようだ。「友達と映画を撮るからと、脚本を読ませてくれました。人はどんどん殺されるし、刑事も出てくる。まるで僕が普段から親しんでいる刑事モノのような内容でした」と笑いつつ「幼稚園の頃は『大きくなったら悪い顔をする女優になりたい』とも言っていました。理由を尋ねると『私が悪い顔をする女優にならないと誰がパパの後を継ぐの?』と。それを言われたときは、もの凄く嬉しかったですね」としみじみ。
■18禁作品出演で「引くわ…」と言われる
しかし仕事柄、休みも不規則で満足に子供とコミュニケーションをとる時間が少なかったという反省もある。それに愛息子とは思春期ならではの複雑な時期もあった。「僕の場合は一般的に言うところの“汚れ役”も多いですから、小学校低学年の頃の息子に『パパが違う仕事だったらな…』と言われたこともあります。中学の頃には『パパって18禁にも出ているの?』と聞かれました。きっと友達からからかわれたのでしょう。そこでウソをついてもしょうがないので、正直に答えました。そうしたら『引くわ…』と言われたりして」と苦笑い。
自身に対する息子の評価が変化したのかどうか、改まって聞く機会もないのでわからないが「しかし息子の言っている評価も間違っているわけでは決してありません。息子には息子なりの捉え方がありますから。『この作品は18禁じゃないぞ!これを見ればパパの評価も変わるぞ!』などと無理強いする気もありません。彼がこれからの人生でどんな人と出会い、何を経験するかによって僕の仕事に対する評価も変わってくるでしょうからね」と遠くから見守るスタンスでいる。
■子供たちのためにお金を稼ぐのみ
子供のことよりも仕事を優先したこともある。だから自分をダメな父親だと痛感することの方が多いという。「でも“ダメでもいいじゃないか!”と思います。いい父親になろうとも思いません。愛おしく大好きな子供たちですが、僕がしゃしゃり出て変に導こうとすると逆にマイナスになることもある。じゃあどうすればいいのか?唯一僕が子供たちにできること、それは働いてお金を稼ぐことです。子供たちは僕に日々沢山のプレゼントをくれます。それに対して恩返しをしなければと思うものの、僕はずっともらう一方。ならば僕は子供たちのためにお金を稼ぐのみです」。
そんな信念が仕事のモチベーションになり、俳優・津田寛治を奮い立たせ、貪欲さを与える。恩返しはまだまだ続きそうだ。「ありがたいことに僕と子供たちは良好な関係にあり、助けられることばかり。彼らは僕の人生になくてはならない存在です。子供たちと出会わなかったら今の自分はないだろうし、この子たちと会うために俺自身も生まれてきたのか!?と思う時すらあるくらいです」と愛しさは止まらない。
愛娘はもちろんのこと、「引くわ…」と言われた愛息子の話をする時も津田の目尻は下がるばかり。「ダメなパパ」と謙遜する良きパパがそこにいた。