元戦場カメラマンの男性が、恵まれない環境で生きる野良猫の姿を写真に収め続けている。現在は大津市の琵琶湖畔で暮らす21匹を精力的に撮影しており「1匹でも2匹でも幸せになって」と願って近日、写真展を行う。
大津市出身のフリーカメラマン太田康介さん(62)=滋賀県草津市。20代のころから東京都に拠点を置き、戦場カメラマンとしてアフガニスタンや旧ユーゴスラビアなどの紛争地におもむいた。
猫との出会いは2002年。自宅の近所にすみ着く野良猫が出産し、子猫2匹を引き取ると、かわいらしさに魅了された。しかし、その頃は自身の飼い猫にしか興味がなかった。「野良猫はまったく別物だと思っていました」
2009年、東京都内の河川敷で生活する野良猫たちを描いたドキュメンタリー番組を見て衝撃を受けた。捨てられ、病気になって死んでいく猫たち。「うちの子たちはこんなに大事にされているのに」と胸が痛んだ。
以来、神奈川県内の河川敷で暮らす野良猫たちを撮影して里親を探したり、自宅周辺にすみ着く野良猫たちに去勢避妊手術を受けさせたりと、捨て置かれる猫がこれ以上増えないように取り組んできた。
東日本大震災後は、福島第1原子力発電所の20キロ圏内に取り残された動物たちの惨状を発信し続けた。「現地は地獄でした。犬も猫も路上で死に、牛は木の柱をかじっていた」。餌や水を車に積み込み、毎週のように通った。
今年1月、猫9匹とともに故郷の滋賀県に戻った。大津市の琵琶湖畔にすみ着く野良猫たちの撮影に足を運ぶようになり、そのうちの1匹を自宅に迎え入れた。現在も太田さんが訪れる場所には4グループ21匹が生活している。
太田さんが撮影する写真は、愛らしい表情やしぐさの中にも、過酷な生活環境が垣間見える。草むらに横たわる「はこちゃん」、口内の炎症でよだれを垂らしている「フガちゃん」、餌をもらおうと釣り人に近づく「ボス」―。
「猫は野生動物でなく、人に守られ、人と暮らす愛玩動物。それなのに、どうして猫だけは『自分で生きていける』と思われるんだろう。この子たちが本当に幸せか、考えてほしいです」と訴える。
野良猫との接し方も知ってほしいという。地面に直接、餌を置いて立ち去る人が多いが、餌が腐敗して臭いを発したり、景観を損ねたりすると、嫌悪感は猫に向く。容器に盛って与え、食べ終えたことを確認して回収するなど、周囲に配慮すべきと呼び掛ける。
動物愛護週間の20~26日、びわ湖大津館(大津市柳が崎)で写真展「びわこねこ物語」を開催する。30点以上の作品を展示する予定で、同時に21匹の里親も募集する。
「困っている猫たちを助けたい。これからの人生は滋賀の猫たちのために動いていきたいです」と太田さんは力を込める。
写真展は午前10時~午後5時(初日は午後1~6時)。無料。