哺乳ビンからミルクをグビグビ、口元を真っ白にして満足そう。時々、「クゥクゥ」と鳴き声を上げたり、きょうだいで寄り添ってみたり。なんて可愛らしいワンちゃん!…かと思ったら、こちら、「神戸どうぶつ王国」(神戸市中央区)で生まれた「ブッシュドッグ」の赤ちゃん。飼育スタッフらが親代わりとなり懸命の育児中なのですが、何だか赤ちゃんの割にちょっと、いやかなりと言う声も出そうなほど、渋めのお顔じゃないですか??まさに「カッコ可愛い」の見本のよう。親代わりの一人、飼育スタッフの小村潤さんに、その奮闘やブッシュドッグの魅力を聞きました。
ブッシュドッグは「ヤブイヌ」という名前でも呼ばれ、野生のイヌ科の中で最も原始的な種の一つとされ、国内では6園館15頭(日本動物園水族館協会加盟)で飼育されています。赤ちゃんは8月10日早朝、神戸どうぶつ王国の「カリカ」が出産。1頭目は残念ながら死産でしたが、続けて誕生したオスとメスの2頭が懸命に生きています。
-かわいいですね!なぜ人工哺育に?
「母親のカリカ(1歳)にとって初めての出産でした。出産直後から赤ちゃんにはたまに触る程度で、離れていてもあまり気にする様子が見られなかったため、人工哺育を決断。担当飼育員や獣医が、誕生直後は1 日7回の授乳、最近は5回の授乳を行なっています。湿らせたカット綿で、排泄腔を優しくトントン叩いて、排泄を促したりも。室温は30℃程です」
-特に気をつけていることは?
「清潔な環境を保ち、ミルクを与える際に誤嚥させないこと。小さな変化に気づけるようによく観察しながら行っています」
-手のひらに収まりそうでした。大きさは?
「誕生直後の体重はわずか146~160グラム。生後12日目にはそれぞれ倍以上となり、9月初めにはどちらも600グラムを超え、元気に順調に成長しています」
「目は開いてきましたが、まだ腹這いに進むような感じです。よく動き回るようにはなってきました。ミルクの時間だと察すると大きな声でアピールしてきます」
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ブッシュドッグはパナマから南アメリカ中部に生息。水かき状の皮膚が発達し、泳ぎが上手でなんと潜水も得意。どうぶつ王国では水中の様子も観察できます。名前が表すように、藪の中に生息。短めの手足、長い胴体は藪の中での動きには最適。敵に出くわすと、向きを変えずにダッシュで逃げる…つまり「バック走」が得意。メスが前脚で立ち上がってマーキングするのも特徴。群れで狩りをして、カピバラやバクなど自分よりかなり大きな獲物も捕食。準絶滅危惧種に指定されています。
「クゥクゥ」「キュウキュウ」といった鳴き声を上げ、2頭くっついて眠る時もあれば、離れた場所で休むこともあるという赤ちゃん。名前は、どうぶつ王国が挑戦中のクラウドファンディング「花と動物と人との懸け橋プロジェクト セカンドチャレンジ」で命名する予定。「赤ちゃんなのに既にヤブイヌ特有のキリッとした顔をすることがあります。カッコいいと可愛いを兼ねそろえたとても愛らしい赤ちゃんです。親に代わって大事に育てていきますので、温かく見守っていただけたら」と同園。
ブッシュドッグの赤ちゃんは、17日から公開が始まります。時間は11:00~12:00と、13:30~15:00の2回。混雑等で予定が変更になることもあり、公式HPで確認してくださいね。