事故物件住みます芸人、松原タニシによるラジオ番組『松原タニシの生きる』に、認知症の医療を専門とする「しおかぜメモリークリニック」の南辰也医師が出演。認知症医療の観点から、幽霊や怪談について語った。
松原タニシによると、怪談のなかで「あんたの後ろに幽霊がいるよ」、「部屋に幽霊が出る」などと話す老人が登場するのはよくあるという。南医師は、認知症の患者の「見えないものが見える」症状は「幻視」といい、薬を処方するなどして「その幽霊を退治するのが僕の仕事です」と明かす。
また、認知症の祖母がいたというタニシには、かつて印象深いできごとがあった。ある日、家で「あんた、また変な友だちを連れてきて!」と、いないはずの“友だち”について祖母が話したというのだ。南院長は、これも幻視だと推測。「小さい子どもが見える」幻視はよくあるそう。そして、続けて「見た人には幸運が訪れる」と言われる妖怪“座敷わらし”についての興味深い説を紹介する。
「精神科医的には、『座敷わらし』は認知症のひとつの症状である『幻視』である……とよく言われています。昔は、ご高齢の方は、(認知症になるほど長生きせずに)すぐにお亡くなりになっていました。だから『幻視』が出るのは長生きした証拠で、『座敷わらし』が見えるぐらい、おじいちゃんやおばあちゃんに手厚くいろんなことをしてあげられている家庭で、裕福だといえます。その話が転じて、『座敷わらしが見えると裕福になる』と言われるようになったという説があるんです」
今は長生きする人が増えているため、「座敷わらし」のように、存在しないものが「見える」と訴える老人が多くなっているという。タニシも、「幽霊が見える」と話す高齢者について、霊能者に相談したところ、「うちに相談する前に、その方(高齢の方)が何の薬を飲んでいるか確認して」とアドバイスを受けたこともあったそうだ。
もし身近なお年寄りが幽霊や座敷わらしを見たというなら、まずは認知症について疑ってみたほうがよいのかもしれない。
◆南 辰也 医療法人社団澪標会 理事長/しおかぜメモリークリニック 診療部長。同院を19年に開院。認知症診療を中心にからだとこころの総合的な治療をおこなっている。診療科は精神科、心療内科、内科、リハビリテーション科