アフガニスタンだけではない「テロの温床化」の危険性 各地で活動続ける武装勢力、イスラム国系組織

治安 太郎 治安 太郎

アフガニスタンで反政府勢力タリバンが首都カブールを掌握し、実権を握ることになった。バイデン大統領は4月、アフガニスタン在留米軍を9月11日までに完全撤退させることを表明したが、それ以降、タリバンは北部や南部の国境地帯などを次から次に政府軍から奪還し、あっという間にカブールまでを掌握してしまった。バイデン大統領もそのスピードには驚いたという。では今後、タリバン政権が20年ぶりに復活するとみられるなか、同国は再びテロの温床に逆戻りしてしまうのだろうか。

これについて、現在のところ、タリバンはテロの温床を作らせない方針を発表している。2001年12月に崩壊した旧タリバン政権では、アルカイダとの癒着が対テロ戦争を招き自らの崩壊に繋がったので、タリバンとしては同じ過ちを繰り返さないという立場を堅持している。女性の権利向上にも意欲を示すなど、諸外国との関係構築・強化を強く意識しているように映る。

しかし、タリバンといっても、米国との和平会議を進める穏健派もいれば、アルカイダなどのイスラム過激派と関係を密にする強硬派も存在し、その中には多様な意見、多様な人々がいる。よって、タリバン幹部がテロ組織との関係断絶を強調したとしても、実際それが進まない可能性が十分にあり、タリバン政権の長期化がアルカイダなどの活動拡大に繋がる恐れがある。国連安全保障理事会は、アフガニスタンにアルカイダのメンバーが400人から600人存在すると近年発表している。

しかし、我々が理解しなければならないのは、テロの温床は何もアフガニスタンだけに限定される話ではないことだ。アルカイダがこの20年間で幹部の殺害や拘束により組織的に弱体化したのは間違いない。しかし、「インド亜大陸のアルカイダ(AQIS)」、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」、北アフリカで活動する「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」、ソマリアの「アルシャバブ(Al Shabaab)」、マリを中心にサハラ地域を拠点とする「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」、シリアの「フッラース・アル・ディーン(Hurras al-Deen)」…など、アルカイダを支持する武装勢力は依然として各地で活動しているのだ。

また、イスラム国というと中東のシリアやイラクで活動していたイメージがあるが、現在でも彼らは引き続きテロ活動を続けるだけでなく、アフガニスタンで活動する「イスラム国のホラサン州」のように、フィリピンやインドネシア、バングラデシュやパキスタン、イエメンやエジプト、モザンビークやナイジェリアなど各地でイスラム国系組織が活動している。

要は、こういった国々が次のテロの温床となる可能性は十分にあり、国際社会は広い視野を持ってテロ情勢を観ていく必要があるのだ。たとえば、東アフリカの突先にあるソマリア、アラビア半島南部にあるイエメンはアフガニスタンと同じように政府のコントロールが全土に及んでおらず、勢力間での戦闘が絶えない。そのような土地はアルカイダなどのテロ組織にとっては魅力的な隠れ蓑となる。現在はアフガニスタン情勢に世界の注目が集まっているが、他の国々への関与も決して忘れてはならない。

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