新型列車が走るほど、隣国ロシアとは関係良好!? 孤立を深めるベラルーシ「交通」の観点からみると

新田 浩之 新田 浩之

東ヨーロッパに位置するベラルーシが国際的に孤立を深めています。一方、隣国ロシアとの間には新型列車が導入されるなど、良好な協力関係が維持されていることを感じさせます。筆者の実体験も踏まえながら「交通」の観点からベラルーシについて紹介しましょう。

「ここまでやるか…」空で起きた大事件

ベラルーシがここまで大きな話題となったのは5月23日の「空の事件」がきっかけです。この日ベラルーシ当局は、爆破予告があったとして、ギリシャからリトアニアに向かっていたライアンエアー4987便をベラルーシ領内で緊急着陸させ、機内にいたロマン・プロタセヴィチ氏と交際相手のロシア人、ソフィア・サぺガ氏を逮捕しました。

ベラルーシは26年にもわたり、ルカシェンコ大統領の支配を受けています。ルカシェンコ大統領は「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれ、様々な手法を用いて反体制運動を弾圧。昨年行われた大統領選挙では野党候補が「勝利宣言」したものの、大統領の座に就いています。

筆者は2018年にベラルーシの首都ミンスクを訪れました。北朝鮮のようにルカシェンコ大統領の肖像画はないものの、野党系指導者のポスターは皆無。本屋に行くとルカシェンコ大統領の著作が山積みになっていました。明らかにEU諸国とは異なった雰囲気が印象に残りました。

逮捕されたプロタセヴィチ氏は反体制派のジャーナリストだったことから、ベラルーシ当局はあらゆる手法を用いて身柄を拘束したかったのでしょう。

昨年の大統領選に引き続き、今回の「空の事件」。欧米諸国は人権侵害などを理由にベラルーシ当局を強く批判しています。このように、一見するとベラルーシは国際的に「孤立」しているように思えます。

新型車両で快適になったモスクワ~ミンスク間

そんなベラルーシですが、強力にサポートしてくれる大国があります。それが隣国のロシアです。ベラルーシは1991(平成3)年にソビエト連邦から独立。時には「兄弟喧嘩」はあるものの、ウクライナとは異なりロシアとの良好な関係は維持しています。それは鉄道の世界を見ても明白です。

4月30日、モスクワとベラルーシの首都ミンスクを結ぶ新型列車「ラースタチカ」の運行が開始されました。同車はロシア鉄道ご自慢のドイツ・シーメンス製の新型車両。最高運転速度は時速160キロで、主にヨーロッパ・ロシアで活躍しています。

モスクワ~ミンスク間を約6時間50分で結び、約30分もの時間短縮となりました。6月10日からは連結車両が増え、同車の人気がわかります。

ところでロシア~ベラルーシ~ヨーロッパルートに関して、ロシア鉄道は以前から新型車両を積極的に投入しています。2016年にはフリーゲージトレインの「ストリージィ」を導入。ヨーロッパ(1435mm)とベラルーシ・ロシア(1520mm)と軌間が異なりますが、同列車は台車交換を必要としません。筆者もドイツ・ベルリンからミンスクまで乗車しましたが、快適な寝台車で、多数のベラルーシ人が利用していました。

一方、ロシア~ウクライナ間は現在(6月8日検索)、直通列車は設定されていません。高速列車は「夢のまた夢」といった感じです。 

日本人はモスクワ~ミンスク間は乗車できない?

モスクワ~ミンスク間の「ラースタチカ」に乗車したいと思うでしょうが、慎重に行動することをおすすめします。

ベラルーシ~ロシア間の陸上国境にはパスポートコントロールがなく、事実上、外国人による陸上での両国間の移動は「違法」とされています。実際に陸上で国境越えを試みた日本人観光客がトラブルに巻き込まれた事案も発生しています。

2018年にロシアはベラルーシ国境に検問所を設けましたが、これはパスポートコントロールではありません。

いずれにせよ情勢が不透明なため、コロナ禍後にベラルーシとロシアをはしごする場合は、情報収集と慎重な行動を心がけましょう。

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