ネットオークション、売買成立していないのに手数料41万円!?

どなどな探検隊(パートナー記事)

西日本新聞社 西日本新聞社
投稿者がヤフオクに出品したブランド品
投稿者がヤフオクに出品したブランド品

 ヤフーが運営するオークションサイト「ヤフオク!」について、「出品したブランド品の取引が成立しなかったのに、40万円を超える手数料を請求された」と、西日本新聞「あなたの特命取材班」に男性から投稿があった。商品はいったん落札処理されたが、最終的な決済まで至らなかった。購入意思のない「いたずら入札」とみられるが、男性は取り消しの操作をせずに多額の手数料を請求された。「ひどい話だ」と憤っている。

  福岡県内に暮らす男性は「ルイ・ヴィトンのバッグセット」をヤフオクに出品。なかなか買い手がつかず、再出品の操作を繰り返してきた。

  希望販売額は400万円超。2月上旬に落札者が現れた。だが「身内に不幸があった」などと落札者からメッセージがあり、手続きは進まず。いたずらだと考えた男性はしばらくして再出品した。

  クレジットカード会社から3月末に届いた請求書を見て驚いた。相手先は「ヤフージャパン 東京港区 インフォメーションサービス」。2月28日付で41万4108円とあった。

  すぐにヤフー側にメールで問い合わせた。「商品や代金の受け渡しなど実際の取引状況にかかわらず、『出品したオークションが落札され、落札者がいること』をもって出品者に課金いたしております」「この仕組みはガイドラインにも記載しており、ヤフオクを利用する際に確認と同意を頂いています」。カスタマーサービスの担当者から回答があった。

  「課金」とは、落札価格の8・8~10%が手数料として運営のヤフー側から請求される仕組みだ。いたずらの恐れがある場合は、一定の期限内に出品者は「落札者の削除」操作を行う必要があるという。やむを得ず登録しているカードで決済した。

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  納得できない男性はカード会社や消費生活センター、消費者団体と思い当たるところに相談、弁護士の助言が活路を開いた。ヤフーの仕組みとして「いたずら入札トラブルの申告制度がある」と教えてもらったのだ。

  ヤフー側は当初、落札者削除のタイミングを含め、オークションの管理は出品者の責任と判断であり、期限までに操作がなかったため、通常通りに請求したと告げていた。あくまで「取引の機会を提供するサービス」という位置付けだ。

  制度の存在を知った男性が改めて連絡したところ、一転して「今回に限り特別に返金措置を検討します」と返信があった。4月末に「諸事情を考慮の上、慎重に検討した結果、『課金免除』の措置が決定した」と連絡があり、ようやく7月10日に返金手続きが終わった。

  男性は「今回は金額が大きかったので、関係機関に相談したが、少額だったなら、面倒な返金手続きまでやっていなかった。同じような経験をした人がいるのでは」と訴える。

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 取材班がいたずら入札トラブルの「申告制度」の利用状況をヤフーの広報担当者に取材したところ、「お答えは差し控えたい」との回答。男性と同じようなトラブルがどの程度、広がっているのかは不明だ。

  担当者によると、対策は取っているとのことで「購入する意図なく入札したり、落札したりする行為をガイドラインで禁止し、確認できた場合には利用制限している」と説明した。サイト上の「評価数」が一定レベルに達していない入札者に参加を制限する制度があるほか、嫌がらせの質問などがある場合には、出品者が特定利用者を「ブラックリスト」として登録できる仕組みもあるという。

  ヤフーが提供するフリーマーケットアプリ「ペイペイ(PayPay)フリマ」では、購入者が商品を買い取る意思を示した段階で、ヤフーに入金。その後、商品が届いたことが確認できれば、ヤフーが手数料を差し引いて出品者に支払っている。商品発送前だと取引をキャンセルでき、手数料はかからない。

  ヤフーは「ヤフオクでも手数料をかけるタイミングを検討していく」としている。(竹次稔)

見直しが必要  ITジャーナリストの三上洋さん

 ヤフオクの成り立ちを振り返ると、元々は出品者の口座に購入者が振り込む「直接取引」が行われていた。その場合、実際に売買があっても「成立していない」こととし、(関係者間で金銭のやりとりを行い)落札システムだけが利用される懸念があったはずだ。だから、決済までいかなくても手数料を徴収する仕組みが残っているのだろう。ただ現在は、仲介するヤフー側に代金が支払われた後に出品者に入金するシステムも確立され、確実に手数料を徴収できる。今のやり方は見直した方がいいだろう。

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