人工的に交配した「改良メダカ」の人気が高まる中、インターネット販売を巡るトラブルが増えている。購入者に違うメダカの卵を発送したり、画像を加工して新種と偽ったり、する手口があるというが、被害者は「警察に相談しても被害届すら受理されず、取り合ってもらえなかった」と肩を落とす。
日本メダカ協会(広島県廿日市市)の大場貴保さん(34)によると、メダカは違う種類を交配することで、形や色などが変異しやすい。2000年以降にさまざまな愛好家に交配されて種類が増え、今年4月時点で、774種類が認定されているという。ヤフーオークション(ヤフオク)には約8千件の出品があり、1匹平均3千円ほど。希少種ほど値段がつり上がり、2~3匹で30万円を超えることもある。一方、改良メダカの人気が上がるにつれて、珍しい個体を安く購入したいという買い手も多くなる。ネットオークションでは、そんな購買心理を逆手に取った詐欺まがいの被害が年々増えているという。
京都市内の飲食店勤務の男性(39)は2020年夏、ヤフオクで「ドラゴンブルー」と呼ばれる品種の卵25個を500円で落札した。ヒレが上下対称で、光の反射で青色に見える個体で、成体ならペアで2千円するとされる。卵は10日ほどでふ化し、大事に育てたが、個体のヒレは上下非対称のまま。「だまされた」と気付いた時には、2カ月が経っていた。男性は「卵の状態では本物かどうか分からず防ぎようがなかった」と振り返る。
警察に相談したのは、兵庫県内に住む会社員男性(32)だ。店舗で成体を買うより、ネットオークションで卵を購入して育てた方が安価で個数も多いため、普段からよく利用していた。卵を巡る詐欺まがいの事案に2件遭ったという。昨年秋、ヤフオクで「サファイア」と呼ばれる品種の卵50個を8千円で購入した。紺色の鱗を持つのが特徴で、宝石のような青い輝きを放つ品種。だが、2カ月かけて成長したメダカは、ラメの入っていないただの黒いメダカだった。別の出品者から落札した「マリアージュ」という尾びれが長い品種の卵でも偽物とみられる商品を発送されたという。10個1500円で購入して育ったのは、いろんな色が混じった雑種だった。明らかに種類が違った出品者に連絡したが、相手は「正しい商品を発送した」と一点張りだった。
12月、男性が警察を訪れて経緯を話すと、警察官は「最近、メダカの詐欺被害多いんですよね」と話した。しかし被害届は提出できなかった。理由は、メダカという個体から生まれる品種が必ずしも同じとは限らないから。また、卵からふ化してメダカの特徴がはっきりするまでに数か月かかるため証明のしようがないと言われた。男性は「泣き寝入りしかできない」と悔しそうに話す。男性によると、詐欺まがいをした出品者は、今も販売を続けているという。
弁護士、出品者に返品交渉した上で購入を
詐欺に詳しい弁護士法人天音総合法律事務所の正木絢生代表弁護士(31)=東京都=によると、詐欺罪が成立するには、だまそうとしている行為を証明する必要がある。だがメダカの卵の場合、成長するまでに期間が空く上、出品者の仕入れ先などを特定するのが難しいため立証が厳しく、被害届が受理されなかったとみる。「被害防止策としては、事前に担保を取ること。購入する場合は、違う種類だった場合は返品できるように交渉してほしい」と呼び掛ける。
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