商品だけど「いいかげん」ーー。いいかげんを売りにしたノートが話題です。罫線や方眼罫は全てフリーハンドで書いた「ふにゃふにゃした線」。幅は「だいたい7mm」「だいたい5mm」というから驚きます。
「いいかげん」は2通りの意味
注目を集めるのは総合企画印刷会社「ナガハシ印刷」(本社、静岡市駿河区)が2020年8月7日に発売した「いいかげんノート」。年間売上数は非公開だそうですが、発売から約1年でシリーズ計16種類を展開する好調な滑り出しです。
発案者は同社入社4年目の田中里佳さん。田中さんの主な業務はポスターやチラシなどのデザインです。
「デザインなどのアイデア出しでノートを使っている時、ノートの罫線に窮屈感を感じていました。一方で、白紙だと自由に書けすぎてアイデアがまとまらないことがありました。そんな時に白紙と罫線の『ちょうどいいかげん』の線があったら使いやすいのではないかと思ったのがきっかけです」
さらに田中さんの「ある性格」も商品化の実現を後押ししました。
「新しいノートの1ページ目は『うまく書こう』とか『きれいに使おう』などと考えて緊張してしまい、うまく書けないとそのノートを使い続けるのが嫌になってしまう性格でした。『いいかげんな線』ならうまくいかなくても目立たないかもしれないと思いました」
4人の女子企画チーム、驚異のスピードで商品化
田中さんを含めた社内の女子4人が企画チームを作り、商品化に向け企画会議を重ねました。「同世代の4人だから自由に意見を出し合えた」結果、約2カ月という驚きのスピードで商品化が実現。田中さんは「アイデアを温めていた期間の方が長いです」と笑います。
商品は全て、田中さんが手書きした線を印刷。「実寸の白紙の紙に目安のしるしをつけて1本1本線を引きました」。
しかし、商品の1番のポイントに苦労させられたといいます。
「印刷の際、ふにゃふにゃの線に思ったように色がのらなかったため、現場と相談してインクの度合いやデータを調整して仕上げました。普段から色の出方や刷り上がりなど話し合いながら制作しているのですが、そのときは内心『こんなふにゃふにゃな線で手間をかけて申し訳ない…』と思ってしまいました」
「インク沼」から意外な反響
発売後、万年筆用インクの収集家「インク沼」と呼ばれる人たちから思いがけない反響もありました。
「インクを好きな方が、方眼罫の線がインクをはじくというところに注目してくださって、インク帳として使っていただけたことは驚いたと同時にうれしかったです。インクの種類によっては乾いた時に、ゆるい罫線が浮き上がって見えるので新鮮に感じていただけたようです。はじくことは一見デメリットのように思えるのですが、そこを面白いと反応してくださったのは安心しましたし、シリーズの強みにもなりました」
文具店バイトの経験生きる
文具店でアルバイト経験のある田中さん。品出しの苦労を思い出し、売り場担当者への気遣いも込めました。
「商品に封入されているタグ(商品名入りPOP)はどこが上になっても気にならないデザインにしました。封入や陳列の際、タグの位置に気を使わなくていいような仕様になっています。それぞれの立場にやさしい『わたし的にはだいたい完璧』になれるような商品です」
田中さんは「世の中にあるたくさんのきまりやルールの中で生活していると、ふいに息苦しく感じることがあります。そんな時でもこのシリーズは、いいかげんに使えてほっとできます」とアピールします。
自分のノートくらいは自由に、伸び伸びと、いいかげんに、使いたいものですね。
「いいかげんシリーズ」は全国の取り扱い文具店やナガハシ印刷通販サイトで販売中。
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▽いいかげんシリーズ全16種類
・「いいかげんノート」A5判64ページ、だいたい7mmよこ罫線、だいたい5mm方眼罫(税込各330円)
・「いいかげんリフィル」micro5サイズ:だいたい7mmよこ罫線、だいたい5mm方眼罫、だいたい7mmたて罫線(税込各330円)
・「いいかげんリフィル」バイブルサイズ:だいたい7mmよこ罫線、だいたい5mm方眼罫(税込各440円)
※ノートとリフィルはそれぞれ「なつみかん」色バージョンもあり
・「すごくしっかりしたカバー」くろ、きいろ(ナガハシ印刷通販サイト限定商品、税込各1650円)